[小説]歌う山 - The Singing Mountain -(9)

小説/本文

その後…周りの人間から、浪路に降りかかった災難と、
彼女の蘇生までの経緯を聞いた久我と満、そして浪路本人は。
「は…ははは……俺、死んでたのか……」
浪路はさすがに動揺を隠せない。
「でも、ピーターさんが生きかえらせてくれたんだよ!」
浪路の腕にしがみついているみはるが、ピーターを指差す。
「素晴らしい……蘇生能力も兼ね備えているのか……
素晴らしいよ、ピーター君!!」

新発見の連続に、久我は子供のように(今は子供の姿だが・笑)はしゃぐ。
「ですが……東堂さんを生き返らせるために、
宇宙船のエネルギーを使ってしまったんですよね。
また、充填するまでここで暮らして行くのですか?」

そうですねぇ。蘇生に400年分のエネルギー全てを使ってしまったので、
また400年くらいここで暮らす事になりますかね。

400年という年数に、全く怯みが無いピーター。
恐らくピーターの人種は、とてつもなく寿命が長いのだろう。
しかし、その言葉に浪路は少々青くなる。
「……おい、ちょっと待て…?
俺に400年分のエネルギー使ったって…
…まさか、この先400年生きたりしねぇだろな?俺…」

さぁ、どうでしょうねぇ。
「……………………(汗)」

数多くの謎と不思議を残し、体験した一同は…
ピーターに見送られ、地上に戻る事になった。
それでは皆さん、また是非遊びに来て下さい。
ピーターがヒラヒラと手を振る。
「別にここに遊びに来てたわけじゃないわよ!」
相変わらずツッコミが厳しい眞妃。
400年間ここで暮らしていましたが、
皆さんのような愉快な方々にお会いできたのは初めてです。

「別に愉快なことをした記憶も無いですけどね…」
苦笑いをしつつ溜息をつくのは、上総。
今度お会いする時は、この国の有名な曲でも教えてください。
「ああ、何だ。そんなことならこいつに聞けよ。
こいつ、この国の歌手だぞ。」

そう言って浪路を指差すのは満。
歌手とは無論、稲葉奈浪のことである。
「ほれほれ、これがこいつの出してるCD。これやるから覚えてみれば?」
「ってお前、何で俺のCDなんて携帯してんだよ!?」

ピーターは、稲葉奈浪のシングルCDを受け取ると、
軽く礼を言い、頭を下げると、皆を地上へと転送した。

またいつか、お会いしましょう。

一瞬にして地上に辿りついた社員一同。
「あ――っ!やっぱシャバの空気はサイコウッスね――!!!」
「シャバって……沙織さん(汗)」
「とりあえず……宿に入りますか……」
一騒動を終え、宿に戻ろうとする社員達。
その時。

 ”バリバリバリバリバリバリバリバリ……

「……この音、ヘリコプター…?」
「あっ、見て!あれってもしかして…」
人工太陽に照らされ、3人の頭上にその姿をあらわした一機のヘリ。
少なくとも橘とみはる、眞妃、満は、そのヘリに見覚えがあった。
「『☆ WE(ラブ)CHI・YU・KI・号 ☆ 』だぁ!」
(出典→小説『愛と青春のボンソワール』
「ああ…そうだ…いつ聞いても恥ずかしい名前だね……」
ヘリはある程度地上に近づくと、はしごが下ろされた。
ヘリのドアが開く。そこには……
ミニスカート姿で、自らが誇る美しい足を惜しげも無くあらわにし、
ゴージャスなミンクのコートを羽織った美女が現れた。
「ホーッホッホッホッホホ!皆さん、ごきげんよう!」
「キャ――――――!!!!!千雪ちゃぁん!カッコイイ――――♥♥♥
「あ…あはは……鳥居さん、こんばんは…」
颯爽と現れた千雪は、妙に慣れた様子でヘリのはしごを伝って降りる。
「ホホホホホホ!今行きますわ!」
その姿もまた美麗且つ優雅。
だが……
「千雪ちゃん!パンツまる見えだよぉ!」
ミニスカ姿が仇になり、皆にパンチラを披露してしまった。
みはるが指差して照れる。
橘も気づいていたが、みはるが指摘したため視線を逸らす。
「えっ……!? ホ、ホホホホホ!サービスよサービス!」
千雪は少々焦りつつも、ここで取り乱したら負けと思い、
開き直ってはしごを降り、地上へと着陸した。

「何か事件があった様ね。
この鳥居千雪が来たからにはもう大丈夫ですわ!さあ、敵はどこかしら!?」

どうやらこの山の所有者である千雪は、何かしらの連絡を受けて駆け付けたらしい。
しかし、事件は既に解決してしまっている。

千雪の活躍は、パンチラを披露しただけで終わってしまった。

元々は二泊三日であったこの旅行。
事件は旅行の初日に起こった。
社員一同は、残った日程で旅行を楽しんでいく事になった。
あんな大事件が起きた後だというのに、この開き直りの素晴らしさは
やはりねぎ秘密結社の社員ならではだろう。

「はい、今回の請求書。きっちり払って頂きますわよ?」
相変わらず子供化したままの久我に、1枚の請求書を手渡すのは、
後からこの山に駆けつけて来たこの山の所有者、鳥居千雪である。
突然、鳥居家のガードマンを大量に派遣させられた千雪は、
ガードマンの人件費を久我に請求したのである。
「フフフフフ……千雪君、相変わらず手厳しいね……」
請求書を片手に、久我が苦笑する。
「それにしても、千雪君。元々君はこの旅行には参加する予定では無かったのでは…?」
「この山全体の土地の権利は私が持ってるのよ。
だから何か異変があったら、駆け付けるのは当然ですわ。
突然、うちのガードマンを数百人派遣しろ、
なんて指示してくるから…ただ事じゃないと思いましたもの。」

普段の仕事でもそのくらい責任感があれば良いのだが(笑)

「それに、お母様が…心配してらしたから。」
久我に背を向け、ポツリと呟く千雪。
「……姉さんは、元気かね?」
「相変わらずですわ。」
短く言葉を交わす。お互いそれだけで十分だった。

「私は貴方がどうなろうと構いませんけど、
お母様だけには心配は掛けさせないで下さいます?……叔父様。」

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