(会社の社員通用口。始業時間はとっくに過ぎているものの、急ぐ様子もなく
悠々と、それでいてすごく機嫌が悪そうに出社してきたのは…リーザ閣下である。)
閣下:……おのれ……何なんだと言うのだ……今日に限ってあいつめ……
「今日は閣下が会社行ってみてください~」などと、
我輩に命令するなど、生意気な…しかも今日は土曜日ではないか……
我輩の別人格でなかったらなぶり殺してくれてやるところだぞ……
………そういえば昨日、中原の奴があいつに対して、
我輩を出せとか何とか、言っておったな……(ぶつぶつ)
(国際部)
幹雄:(国際部備え付けの監視カメラを見ながら)
…あ、来ましたね。間違いありません。この不機嫌そうな表情で、
なおかつ髪を後ろに束ねてれば、100%閣下のほうですよ。
リーザさん、ちゃんと呼んでおいてくれたんですね。
閣下が素直に従ってくれてよかった…。
夜半:まぁ君が誘ったからだろうねぇ。これで俺が
「ちょっと倉庫にでも来てくれないかな」とか言ったら
間違いなく来ないんだろうなぁ。
幹雄:白鳥部長が相手なら、閣下はもちろん、僕だって怖いです。
椎子:それにしても、リーザ様がツンデレ王子様の二重人格になったなんてねっv
夜半:あぁ、椎子ちゃん。まだ産休なのに出てきてもらって悪かったね。
しかも土曜日なのに。
椎子:いえいえ、どうせヒマですし♪というかこぉんな面白いこと、
なんで早く教えてくれなかったんですかぁ~!
夜半:そんなことわざわざ産休の君に教えるほどのことでもないだろう。
椎子:いいえっ!リーザ様のような清楚可憐な美少年が、表は優しく儚げ、
裏はツンデレの、一人で二度美味しい美少年に進化してたなんて、
会社に来ないわけいかないじゃないですか~!
幹雄:(小声)…部長、リーザさんが23歳じゃなくて本当は35歳だったって、
椎子さんに教えましたか……?
夜半:(小声)別に。
幹雄:(小声)い、いいんですかね…美少年とか言ってますけど…
(23も少年とは言い難いけど)
夜半:(小声)彼女、年上の男にはものすごく素っ気無くなるから、
リーザ君の機嫌を損ねないためにも黙ってた方がいいんじゃないの。
椎子:それにしてもぉ、なんで急に
「リーザ様の新しい人格を、国際部の新しい仲間として迎える歓迎会をやろう」
なんて言い出したのぉ?
夜半:企画したのは中原君なんだけどね。
幹雄:ええ…この間、リーザさん…いえ、閣下が、
今までどういった境遇で育ってきたかという話を
リーザさんから聞かせてもらって…
リーザさんから、閣下はああ見えても根は悪い人じゃないから、
仲良くしてやってくれ、って言われまして。
椎子:あら♪そんなことならあたしも手取り足取り写真撮り、仲良くしちゃうわよv
夜半:仲良くするというのは別にストーキングしてくれって言ってる訳じゃないよ。
幹雄:そこで、リーザさんも閣下も、どちらも居心地が良くなるように、
親睦会というか…ほんと今更かもしれないですけど、
閣下の歓迎会なんかやってみたらどうかなぁと。
彼と仲良くなるためには、もっともっと彼とお話しして、
彼を知っていくことが大事かと。
夜半:…まぁ俺もあっちのリーザ君のことはもっと知っておきたいんだけどね。
とりあえず俺の前だと絶対に顔出してくれない現状だけは何とかしたいかなぁ。
幹雄:(;´Д`)それは白鳥部長が閣下をボコボコにするからでしょう!?
椎子:あっ、そろそろ来るんじゃなぁい?
幹雄:そうですね。あ、部長。閣下がドアを開けたら、それお願いしますよ。
閣下:…………(無言でドアを開ける)
”パ――――――ン!! ”
幹雄・椎子:リーザ閣下!国際部へようこそ♪
閣下:!!?? ぶ、無礼者!! な、なんのマネだっ!?
幹雄:あはは、クラッカー見事に命中しちゃいましたね。
部長、コントロールいいですね。びっくりさせてすいません。
椎子:うふふ、初めまして閣下♥ あたしは大島椎子♥ 今は産休で会社休んでるけど、
これからよ・ろ・し・く・ね♥♥(閣下の右手を両手でにぎにぎ)
閣下:なっ、馴れ馴れしく触れるな!無礼な女め!
椎子:きゃぁぁぁぁああ♥
このツンっぷり、リーザ様じゃないみたぁい♥ 萌えちゃうわぁ~♥
(手だけじゃ足りず腕もにぎにぎし始める)
閣下:我輩は怒ってるんだぞ!? 何故喜ぶ!? この女、変態か!?
うあぁぁっそれ以上触るなぁ!!
椎子:嫌がられると余計に燃えちゃうのよね~~~うふふふふふふふvv
夜半:椎子ちゃんはある意味、国際部最強だから気をつけたほうがいいよ。
幹雄:し、椎子さん、閣下嫌がってるじゃないですか…その辺にして。
え、ええと、リーザ閣下。だいぶ遅くなりましたけど……
……今日は、リーザ閣下がこの国際部に来たお祝いをしたいんです。
閣下:祝いだと……?
幹雄:僕らはまだ、前のリーザさんしか、よく知らないわけじゃないですか。
でもリーザさんと閣下は、同じ人だけど違う。
だから、リーザさんとは別に、リーザ閣下を新しい仲間として歓迎したいんです。
閣下:歓迎……仲間だと?我輩は別に貴様らの仲間になったつもりなど
夜半:(幹雄の背後でいいから黙って聞けと言わんばかりにやや威圧感のある視線を送る)
閣下:(ぞくっ)……ふ、ふん、中原のくせに生意気な。何が歓迎だ。
貴様らにとっては、我輩よりもあいつの方が犬みたいに
何でも言うことを聞くし、扱いやすいに決まっておろうが。
幹雄:それは僕らがまだ閣下のことを良く知らないから、
どう接していいかわからないんですよ。
僕達はうまくやっていけると思うんです。
今日は怒らないで、用意したごちそう、食べてください。
閣下:ほう…ご馳走?
幹雄:ちゃんと閣下の好みはチェックしましたよ!
まずこれ、泉くんの実家のお母さんが漬けた梅酒。
前にリーザさんが、泉くんから飲ませてもらって、
その時に閣下がすごく喜んでる感じがしたって聞いて。
閣下:(瓶を手に取る)……おお、これだこれだ!
この、見た事もない果実が瓶の底に詰まっている酒!
これは忘れられないほど美味であったな!
椎子:じゃあ閣下♥ あたしからは、こ~れ♥
閣下:(1m後ずさり)……な、何だ?
椎子:じゃ~~~ん☆ 福岡の最高級明太子~♥
これもリーザ様が、商店街の福引で当てて、食べたら
閣下がすごく喜んでる気がした!って言ってたものなの♥
ちゃぁんと、ブランドも同じものなのよ♥
閣下:(ひとくち舐める)……うむ、まさにあの時の味だ!
このぷるぷるとした鮮やかな赤い食べ物、忘れもしないわ!
………ほっほ~~う、貴様ら、中々やるではないか!
この我輩の好みをバッチリと当ててくるとはな!
幹雄:そうですよ閣下、僕達、閣下のことをもっと知って、もっと仲良くなりたいんです。
梅酒と明太子以外にも色々用意しましたから、今日はこれで宴会しましょう。
閣下:(すっかりご機嫌)ふふん、そこまで言うならば、相手してやらんでもないぞ。
椎子:ねぇねぇ部長?部長はなにかプレゼント、ないのぉ?
夜半:んー、俺別にそっちのリーザ君の好みなんてリサーチしてないしなぁ。
まぁ、使えるかどうかわからないけど
もしかしたら使えそうなものでも、あげようか。
(閣下に向けて差し出されたのは、1冊の古びたファイル。)
閣下:……何だ、この書物は?
夜半:俺のネタ帳。
閣下:貴様の落書き帳など要るか―――!!!!(べしぃっ! ←叩き落す)
夜半:……あそう、要らないの。これ俺の魔導の小ネタ帳なんだけど
自分で言うのもなんだけど新しい魔導の教科書2~3冊は作れるくらいの
内容は詰まってるよ。
閣下:(;゚Д゚)……!!!
夜半:たぶんこれ持ってたら、そんじょそこらの魔導師は
軽く跳ね除けられるんじゃないかなー。そーか要らないかぁ。仕方ない、
然るべき博物館にでも寄付するかな。
幹雄:∑( ̄□ ̄;)博物館寄贈レベル!?
閣下:待て!それをよこせぇ――――――!!
夜半:(襲いかかる閣下を人差し指で跳ね返す)
君も、もうちょっと素直になる努力をした方がいいよ。
あんまり意地を張ってると何も手に入らないし
そのうちツンデレに萌え狂った椎子ちゃんに襲われちゃうよ。
幹雄:∑( ̄□ ̄;)部長!! そーいうことするから
閣下が逃げちゃうんですよ!!
椎子:部長ひどぉい>< 襲ったりなんかしないもん、たぶん!!
幹雄・閣下:(゚Д゚)たぶん!?
こうして国際部の閣下歓迎会は滞りなく(?)執り行われた。
色々あったものの、この日を境に少しずつではあるが閣下は
国際部の面々と打ち解けていくのであった。