悟史:(はぁ~~~残業でちょっと遅くなっちゃったな。今日も疲れた!早く帰らないと…
香澄ちゃんと、子どもたちが待ってる)
男:…………
悟史:(今日の晩ごはんは、ハンバーグと人参のグラッセ、ほうれん草のバター炒めって言ってたっけ。どれも俺が好きな物ばかりだ~! 楽しみだなぁ)
男:…………
悟史:(家族と一緒に、心置きなくおいしい晩ごはんを食べるためにも……)
男:…………!!!!(いきなり、悟史の背後から襲いかかってくる)
悟史:……おっと
男:(ボスッ!!!!)……ぐっはっ……
悟史:あーもう、びっくりしたなぁ(という割に驚いてはいない表情)
男:(なんだこいつ……全力で体当たりしたのにビクともしねぇし、よろけすらしねぇ!)
悟史:ひったくりかな?おおかた俺に突進して押し倒すかよろけさせた隙に、カバンを奪おうとしたとかそんなとこ?
男:……くっ……うるせ……
悟史:馬鹿じゃないの?そういうことするなら、もうちょっと相手を選びなよ~
俺みたいな図体でかい男狙うんじゃなくて、若い女の子とか、お年寄りにするとかさ~
男:…………
悟史:そんなこと、馬鹿でも俺でもわかるのに。そうしなかったってことは、
そういうことを女の子やお年寄り相手にしたら悪いとか、かわいそうとか、そう思ったからでしょ?
男:!!!
悟史:君、ひったくりに向いてないよ。お金が欲しいなら、君ならもっといい稼ぎ方があるんじゃない?
男:………でも、おれ、やらないと……脅されてて(ぼそっ)
悟史:脅されてる?
男:あっ……!!!(言っちゃった、という顔)
悟史:……あーもしかして、いま流行りの闇バイトってやつ?
うわ~本当にあるんだね。俺が遭遇するとは思ってもみなかったけど。
男:(どうしよう、どうしよう、どうしよう……警察にバラされたら……おれ……)
悟史:その…闇バイト?だっけ。指示出してる相手と繋がってるスマホ、あるでしょ。貸して?
男:………(貸してはいけないはずだけど、悟史の謎の威圧感に圧され、無言で差し出してしまう)
悟史:……ふんふん、なるほどね~。じゃ、このスマホは俺がもらっちゃうね~
男:!!??? ちょっ……!返せっ……!!
悟史:でもスマホないと不便でしょ?新しいのは俺が今買ってあげるよ。
……もしかしたら、こっちのスマホのおかげで、そっちは経費で落とせるかもだし。
男:は……!?
悟史:そうと決まれば、電器屋さん行こ!早くしないと閉まっちゃうし、俺も早く家に帰らないといけないしね!
男:(えぇぇ~~~!? 何なんだこの男~~~!!???)
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(電器屋で新しいスマホを買い、店を出る)
悟史:いやー閉店ギリだったね~。買えてよかった!
男:あ。あの……ありがとう……
悟史:うんうん、気にしなくていいよ~
男:それと……さっきのスマホ……と……
悟史:あぁ、今日のひったくり……いや、ひったくりじゃないか。ただ俺にタックルして逆に倒されちゃっただけだったね~~あっはっはっは。
だから、犯罪でもなんでもないし、警察にも言うことでもないし。心配しなくていいよ。
男:(ほっ………と一息つくも、すぐ思い返す)でっでも……!バイトのボスにバレたら……っ
悟史:あぁ、そっちも大丈夫大丈夫。すぐ、首根っこ捕まえて君や君の家族に危害が行ったりしないようにするよ。
男:そっ……そんなこと、できるの……!?
悟史:こういう組織から得られる情報ってのもあるしね。会社に連絡してすぐに解析させるよ。こういうの得意な奴らが、会社にいっぱいいてねぇ~
男:(……もしかして、おれ、とんでもない男にぶつかっちゃった……?)
悟史:…で、さっきも言ったけど。君はひったくりとか闇バイトするには、全然向いてないねぇ~。気も弱そうだし。
男:うっ………
悟史:お金に困ってるなら、気が向いたらでいいからここに連絡してよ。この名刺あげるから。
直接来てくれてもいいし。俺の名刺持ってるっていえば、通してくれるはずだから。
男:えっ……
悟史:さってと、家族が待ってるから急いで帰らなきゃ。じゃ、また縁があったら会おうね~
(足早に立ち去る)
男:あっ……!行っちゃった……
………マジで、あの人何者なん………ずっとニコニコしてたけど、なんか、ちょっと、底知れぬ威圧感あったし………
でも、闇バイトよりは良さ……そう……?