「……今まで、ごめんね。みはるちゃん」
天と地の区別も付かないほど、濃い霧に包まれた場所。
「長い間、嫌な思い、させちゃったね……」
心なしか、橘の声はかすれている。
橘の言葉を、何も言わずに黙って聞いている、みはる。
…いや、黙っているのではない。
言い返したいのだが、声が出ないのだ。
「僕はいなくなるけど、これからも、友達で、いてくれるかな…?」
声は出せないまま。
黙って、ゆっくりとうなずく、みはる。
「僕のことは気にしないで…………
―――――――さんと、幸せにね………」
「橘くん!?」
ガバッ!!!
突然、2段ベッドから飛び起きるみはる。
額には汗がにじんでいる。
「ゆ……夢……?」
時計に目をやる。
午前4時。まだ早朝である。
2段ベッドの上からは、姉、みひろの寝息が聞こえる。
「いなくなるって……幸せにって……どういうことなのぉ……?」
まだ、夢の圧迫感から抜け出せないみはるは、
額から流れる汗も拭わずに、小刻みに震えていた。
何だかとても嫌な予感がする。
みはるには予知能力がある。
みはるの見た夢は、9割の確率で当たるのだ。
もし、この夢が正夢ならば。
友人・橘との別れと、自分に伴侶が出来ることを意味していることになる。