”ドガッシャアァァァァーーーーーーーーンン!!!!!”
何気ない、N.H.Kのいつもの朝。
その静寂を破るかのような、もの凄い物音。
「な、何っスか!!!???」
次郎は驚いて音のあった方を向く。
開発研究室からだ。
「ああ、今日もまた久我さんがなんかやったんじゃない?」
特に動じずに言う、悟史。
「また継ちゃんが実験台にでもされたんでしょ~?」
まったく他人事、と言った感じで笑うハリー。
開発研究室と営業部は同じフロアにある。
「じ、実験台……大丈夫っスかねぇ?仙波さん…」
悟史、そしてハリーの予想は的中していた。
今日もまた、継人が恭一郎の発明の実験台にされていたのである。
「…………てめぇ…………!!!!!」
継人はブチ切れ寸前…いや、もう既にキレている。
今日の実験は、『毛はえ薬』。
東雲 凪の入れたコーヒーに、継人の分にのみ
こっそりとそれを恭一郎に盛られたのである。
凪の入れた(と思われていた)コーヒーだったので、
継人も安心して飲んでしまったのだ。
「ごっ、ごめんなさい…私、気付かなくて…」
凪が謝る。
継人は黙って右手をひらひらと振る。
『あんたのせいじゃねぇよ』
と言いたいらしい。 いつもならすぐに恭一郎に飛びかかり、殴りまくる継人だが…
毛はえ薬の効果は絶大で、頭髪はもちろん、
眉毛、睫毛、鼻毛…あらゆる体毛が、
一気に床下5メートルくらいにまで伸びてしまったため、
身動きがとれないのだ。
継人はもはや人間の姿をしていなかった。
「フフフフフ…これで世の中のハゲに悩む人々の悩みは解決される…
まさに、世紀の大発明だ!!!!!!」
恭一郎は高笑いする。
「でも…予定ではこんなに伸びるはずじゃなかったんじゃないの?」
継人の変貌にもさほど動じず、冷静に分析するのは、
恭一郎の娘、在素。
「そうだな…薬の分量間違えたか……?」
のんきに首を傾げて言う恭一郎。
「てめ…らいい加減に……」
毛にまみれて、いつもの怒鳴り声もボリューム小さめの継人。
「何を言ってるんですか!仙波君。
久我博士の実験台になれるなんて、こんな光栄なことはないでしょう!!!」
そうやって真剣に答えるのは、自称・久我の右腕、桐島上総。
「でも仙波継人サマ、苦しソーデスヨ!ダレか助ケタ方ガ……」
心配そうに俺 劣は呟く。
「フフフ…大丈夫だよ劣くん……元に戻す薬もちゃんと……おや?」
『元に戻す薬』を継人に飲ませようとした恭一郎は、
継人の様子がおかしいことに気付く。
次の瞬間、在素が怒鳴る。
「ちょ、ちょっとお父さん!!
継人さん、伸びた毛で窒息してるんじゃないの!?
このままじゃ死んじゃうわよ!?」
在素の言葉に、研究室内がざわめく。
だが、その時点ですでに継人は意識を失っていた。