(社内5F、資料室)
氷雨:(部長に資料を取ってくるように言われたけど……「行けばすぐわかる位置にある」とか言って、明確な在処を教えてくれなかったから、どこにあるかわからないんだけど……本当、男の人っていい加減なのです……)
………あ、あった………けど
(氷雨の身長では到底とどかない高い位置にある、目的の資料)
氷雨:あんなの私に届くわけないじゃないですか……どうしよう、どこかに踏み台とかハシゴとか……あ、こういう時は氷塊を作ってそれを踏み台にすれば……よぉし……
芹子:はい、欲しい資料はこれかしら?
氷雨:!?(他に人がいるとは思わず、驚く)
芹子:あっごめんね?びっくりさせちゃったかしら。上の方見上げて困った様子だったから…
氷雨:あ、ありがとうございま………はうぅっ!!??
芹子:??
氷雨:(なっ、なんという綺麗なお姉さま!!! このような方が同じ会社にいたことを今まで知らなかったなんてっ……!!!)
芹子:(顔を真っ赤にしてこちらをガン見してくる氷雨を不思議に思いながら)
あの、どうかした?
氷雨:あぁぁっすいません!!! あまりに綺麗な人だったので、うっとりしてしまって…♥
芹子:え、えぇ???(ストレートに褒められてびっくりする)
氷雨:あっあのっ、おねえさま………いえ、あの、お名前を教えてください!!
芹子:え、と、遠山芹子、です。けど。
氷雨:芹子おねえさま……♥♥♥
美しいご尊顔はもちろんのこと、状況を即座に把握し手を差し伸べるそのお優しさ、抜群のプロポーションで周りを瞬時にして魅了するその圧倒的存在感……このような素晴らしき女神(ミューズ)がこの会社におられたなんて……(感動のあまり涙目で震えている)
芹子:えっと、ど、どうしたの……かな?
氷雨:……あぁぁっ!すいません、お名前を訊いておいて自分が名乗らないなんて、失礼にもほどがありました!!!
購買部の朝霧氷雨と申します!以後お見知りおきを……♥(芹子にすり寄る)
芹子:!?!?(なっ…なんなのこの子、かわいいけど、ちょっと怖い…?)
(一歩後ずさりして)こっ、購買部かあ!購買部と言えば愛子のいるところよね!
氷雨:愛子おねえさまを、ご存じなのですか?
芹子:ええ、愛子とは年も近いし、よく一緒に遊んだりしてるわよ。
たまにウチにきて子ども達と遊んでもらったりもしてるし。
氷雨:そうなんですかー……ってこどもおおおおおおおお!!!!!???
芹子:!?!? な、なんで!? そこそんなに驚くこと!?
氷雨:だっだっだってとても、お子さんがいるようなお歳に、見えないので……!!!
芹子:まー…結婚、世間的に見れば早いほうだったからねー。
氷雨:そ…そうですよね、お子さんがいらっしゃるってことは……ご結婚されてるんですよね……
芹子:な、なにかガッカリしてない??
満:おう芹子。こんなとこでなにしてんだ?
芹子:うわっ満!? あんたこそなんでこんなとこに来るの!?
氷雨:(こ…この人は……前に柴田部長と話してるの見たことある……)
満:オレ?タバコ吸いにきた。
芹子:オフィスは禁煙でしょ!?
満:だから人のいない、こーいうトコで吸うんじゃん。携帯灰皿あるし大丈夫っしょ。
芹子:全然大丈夫じゃない!っていうかいい加減タバコ止めればいいのに!
私の妊娠中も、全く止める気なかったものね。
満:おうよ!オレはタバコで生きてるようなもんだからな!
いいだろお前の前では吸わなかったし、家の中でも吸わなかっただろ。
氷雨:(こ……この会話……もしかして、このお二人……)
あ、あの、すいません
芹子:あっごめんね?実はコレうちの旦那!部署は全然違うけどね?
満:あん?なんだそこのちんまい子。どっかで見たことあるな。
芹子:ちんまいとか失礼でしょ!購買部の朝霧さんですって。
満:あ~~しばっちょのトコの子か~!よろしくなー!(頭をなでようとする)
氷雨:さ……タバコのにおいのついた手でさわらないでください。
(芹子の背後に隠れる)
満:んん?
氷雨:芹子おねえさまが、あなたのようなタバコ大魔神とご夫婦だなんて……信じたくありませんっっ(睨む)
芹子:え、えーと?
満:タバコ大魔神って、なんかカッコいいな!(なぜか喜ぶ)
芹子:そう呼ばれないように、タバコ止めなさいよいい加減に。。