あこ：（……あー、いい天気！空気も都内より断然いいし…
実家の長野に帰ってくるの、本当に久しぶりだな…）
（バス停でバスを降りて歩く）
あこ：（綺麗な川……そういえば、子どものころはよくここで遊んだっけ……
ちょっと、立ち寄ろうかな……）
（荷物を置いて靴を脱いで。川の浅瀬に足を入れる）
あこ：（わっ、冷たい…！今日は暑いし、すごく気持ちいい♪）
（しばらく川の水で遊ぶ）
あこ：（……っと、いけない、こうしてる場合じゃなかった。
お昼までに実家に帰らないとだから、早く行かないと）
（川を後にして、ある場所へ向かう）
あこ：（……ふう、着いた。ちょっと、久しぶりになっちゃったな…
……あっ、指輪、つけなきゃ。太一さんの前でくらい、ちゃんと夫婦のしるし、つけていたいもんね）
（首にかけていた結婚指輪をはずして、左手の薬指にはめる）
…
あこ：久しぶりね、太一さん。ずっと来れなくてごめんなさい。
……前は、月命日には毎回来ていたのにね。
ごめんね、忘れているわけじゃないの。
でも…私も、ようやく前を向けるようになってきたから。
今の生活と、これからのことを、もっと大事にしようと思って。
泉家を出て、東京に行って、就職して…
最初は不安だったけど、今はとっても充実してるよ。
次郎くんも同じ会社にいるし……すごく頼りになるよ。
次郎くんのお嫁さん……になる人も。
照美さんって言うんだけど、すごくしっかりしていて、
揺るがなくて、自分を持っていて、かっこいい女性。
私の上司でもあるんだけどね。本当に素敵な人よ。
ねえ太一さん。太一さんが今、ここにいたら。
今の私を、応援してくれるかな。
東京なんて行かないで、こっちに戻ってきてって、言うかな？
……言わないよね。太一さんは昔から、
私の決めたことに文句なんて言わなかったし。
ずっと、あたたかく見守ってくれていたもんね。
もし、あなたが、生きていたら……
あの日、あんな事故に遭っていなければ…
時間が巻き戻せたなら……なんて、
考えない日なんて、ないけど。
どんな道を進んでも、どんな結果であっても、未来であっても。
私が太一さんを好きなのは、変わらないよ。
ずっとずっと、大好きよ。
まわりは、またいい人が居たら一緒に……とか、
言ってきたりもするけど、まだまだ、そんな気にはなれないかな。
絶対一生独りでいる!!!
…とも思うけど、それはきっと、太一さん、望まないでしょ？
もし、この人となら幸せになれる…そういう人に出会えたら、
その人との幸せを願っちゃうような優しい人なの、知ってるし。
だから、誰かと一緒になるにしても、ならないにしても。
私は私が一番幸せだと思う道を進んでいくつもりだから。
ずっと、見ていてくれると嬉しいな。
それじゃ、また来るね。
