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[小説]最期の恋(3)

それから、雪彦は丸一日、夜半の家で眠ったあと、だいぶ回復して自力で自宅へ戻っていった。雪彦が回復して、普通に話せるようになったところで夜半は、彼が見つけたという「死なずに済む方法」とやらを訊いてみたのだが途端に顔が真っ青になって、絶対に無理...
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[小説]最期の恋(2)

それから3ヶ月の時が過ぎた。雪彦と恵莉が付き合っている、という噂は瞬く間に広まり、気が付くと二人は既に公認のカップルになっていた。部署も違い、普段いるフロアも全く違う二人は、昼休みは屋上公園で一緒にお弁当を食べ、帰りはお互い残業がなければデ...
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[小説]最期の恋(1)

それから一ヶ月後。「……突然、呼び出したりしてしまって、すいません」「突然でもないだろう。1週間くらい前から約束してたんだから」午後7時。日は沈んだものの、西の空には赤紫色した夕焼けが、薄気味悪く残っていた。東の空には、そんな不気味さをかき...
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[小説]最期の恋(プロローグ)

「すいません……突然、呼び出したりして…」3月28日、快晴の昼下がり。会社の近くの公園の、満開の桜並木の下に。見なれない組み合わせの男女が一組、たたずんでいた。烏丸雪彦と……長谷川恵莉。「いいえ…そんなに、きにしないでください。」気まずそう...
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[小説]因縁 – Connection -(終)

その後、美彦は。仙台支社勤務から本社勤務へと異動が決定し、東京へ戻ることになった。それと共にみゆきは会社を辞め、二人揃って帰京した。「それにしてもさ~、まっさかあんたが柏葉くんと結婚するとはね!」東京へ越してきて2ヶ月。中学時代からの友人、...
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[小説]因縁 – Connection -(5)

数日後。みゆきの父の葬儀が執り行われた。彼女はこの日、涙も見せずに喪主を務めた。葬儀には、父の会社関係の人間や、みゆきの学生時代のクラスメイトなどが多く訪れた。驚いたのは、柴田家の血族や親戚関係の人間が一人も訪れなかった事だ。・葬儀を終え。...
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[小説]因縁 – Connection -(4)

それから二人の、同じビル内での日常が始まった。元々小さな雑居ビルな上に、みゆきの会社が6階、美彦の会社が5階にあるので、顔を合わせるのはしょっちゅうだった。ほとんど高校時代に逆戻りである。だが…次第に。会えば言葉を交わし、暇が合えば昼食を共...
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[小説]因縁 – Connection -(3)

東京を離れて約3ヶ月。仙台に越してきたみゆきは、新しい生活にも徐々に慣れ始めていた。父の容態も、思ったよりも安定して来ている。何かが起こっても、病院は会社のすぐ近所なのでいつでも駆けつけられる。毎日仕事を終えた後、病院へ通うのがみゆきの日課...
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[小説]因縁 – Connection -(2)

それから二年後の、10月。美彦達は三年生になった。不幸なのか幸いなのか。毎年クラス替えがあったのにも関わらず、美彦もみゆきも、ずっと同じクラスであった。相変わらずみゆきを追いかける美彦。相変わらず美彦を相手にしないみゆき。そんな様子を傍から...
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[小説]因縁 – Connection -(1)

4月。「体育館前の掲示板に、クラス分けが貼り出してあるので各自確認のうえ、それぞれの教室へ行くように。」入学式を終え、学年主任がそう指示すると、新入生達は一斉に体育館前の掲示板へと向かって行った。ここは、私立春雨高等学校。都立の名門校である...