仙波継人退社後の人手不足を解消すべく開催された、スカウトキャラバン。
だがしかし、「あの」久我恭一郎の元で働きたいという者はそうそうおらず、
スカウトは早くも難航していた……
一人、廊下をトボトボと歩く上総。
上総:三輪さんも、長谷川さんも、烏丸君も、泉君も…駄目。
……何故…久我博士の傍らで働けるかもしれないという
素晴らしいチャンスを、皆さんは嫌がるんでしょうか……(溜息)
この分だと、沙織さん…も…
沙織:よっ!(上総の背中を叩く)どしたん?元気ないなー。
上総:ぅわぁぁっ!? 沙織さんっ!?
沙織:? なんだその反応はぁ?(笑)
上総:えっ、あー、いや…すいません…何でもありません。
沙織:ふーん?
上総:あ、あの…ちょうど、企画部へ行こうと思ってた所なんです。
沙織:ん、そうなん?何か用?
上総:実は……(スカウトキャラバンのことを説明し、推薦書を渡す)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
沙織:えぇ!? あたしが開発へー!?
上総:はい……
沙織:全く…うちの人事はいっつもいきなりだもんなー…
上総:まぁ…強制ではありませんし。でも、考えてみてくれませんか?
沙織:そんな事言ったってなぁ…
上総:開発は…仙波君がいなくなってからというものの、人手不足が深刻で…
沙織さんの様な、迅速且つ丁寧に仕事をこなし、
尚且つバイタリティ溢れる人材が来て下さるなら、
これ以上喜ばしい事は無いんですけどね。(満面の笑み)
沙織:そ、そうなんか?(悩みつつも、おだてられて少々ニヤける)
でも、あたし以外にも候補はいるんだろ?
上総:それがですね……皆さんに断られてしまって……(涙ぐむ ←嘘)
沙織:ありゃ、そりゃー気の毒に。
上総:だからっ、沙織さん!どうか……開発に!!
沙織:…………(悩)
上総:(心の中:あと一押し、あと一押し…)
湧木:(唐突に割り込み)何やってんッスか?
沙織:ぅおわぁ!…なんだびっくりした。湧木かぁ。
湧木:湧木かぁは無いじゃないッスかー、沙織ねぇさんはー。
ところで、何を話し込んでたんッスか?
沙織:ん、実はねー。(事情を話す)ってワケ。
湧木:へー、開発に行くんッスか。
沙織ねぇさん女医さんみたいにカッコイイから白衣も似合うッスよきっと。
沙織:え、そうかな?そんなこと…あるかな?エヘヘヘヘー(照れ照れ)
湧木:でもいいッスねー。僕も開発面白そうだなーとか思ってたんッスよね。
沙織:そうだよねー、よくよく考えたら面白そうっちゃー面白そうだよなー。
上総: ←面白くない (湧木と沙織がやたら仲良さそうなので・笑)
沙織:でもさー……あれ?
湧木:どしたんッスか?
沙織:この書類見て。候補者の中にあんたの名前も載ってるじゃん。
湧木:あれ、ホントだ。
上総:(←湧木にスカウトの事を話すのを忘れてた人)
あ…そういえば湧木君にはまだ言ってなかった…ですねえ(苦笑)
沙織:じゃあ湧木が開発行けばいいじゃん。行ってみたいって思ってたならさ。
上総:(ずぎゃーん)←ショック音
湧木:そうッスねぇ。どーせ僕は適当に秘書課入ったよーなもんだし。
上総:ま、待ってください!!
沙織:?
湧木:?
上総:………………
沙織:なんだよ?桐島さん…
上総:…今回、開発に異動になると
超大幅昇給+ボーナス1年分です!!
沙織:(目の色早変わり)何ィ――――!!?? 乗った!! その話乗った!!
湧木:えっ!? 沙織ねぇさんズルい!! 僕も乗るッスよお!?
沙織:よし湧木!正々堂々と(研修で)勝負だっ!
湧木:負けないッスよー!
上総:(……後は湧木君をどう蹴落とすかだな……)
かくして、沙織と湧木(ある意味上総も?)の
開発研究室異動権を巡る戦い(研修)は始まるのであった……
が。
社長:(陰で見ていたらしい)……超大幅昇給とかボーナス1年分なんて
言った記憶無いんだけどな私。
まっ、いいか。桐島上総の給料から天引きすりゃ。
(引いたら給料残らないんじゃ・笑)
(続く)