八雲:知らなかったなぁ。姉さんの会社に俺と同い年の大学生がバイトしてたなんてね。
継人:オレは結構前からあの会社にいたけど…
まぁ、開発とシステムじゃあんまり関わりないからな。
でもあの会社、結構学生バイト雇ったりしてるぜ?
八雲:みはるちゃんとこのみひろちゃんとかでしょ。会ったことあるよ。
けど姉さんどうしたんだろ、一緒に晩御飯でも食べに行こうって誘ったのに、
何故か君と行けって。
継人:…………
(以下、仙波継人の回想)
浪路:……………(なにやら携帯を見て頭を抱えている)
……なあ継人、突然だがうちの弟と友達になってやってくれないか。
継人:はぁ??
浪路:……あ、あぁぁ!そうだよな!よく考えたらお前ら同い年じゃん!
しかも大学生同士だし!若いもん同士、話も合うかもしれないよな!
継人:何、見合い持ってきたババァみたいなこと言ってんだよ。
浪路:ババァとか言うな!……でもまあ、あいつ、ぶっちゃけあんなだから友達いないし
男友達のひとりやふたりでも出来れば、あの性格も……
継人:……お前の弟、そんなに性格に問題があるのか?
浪路:今のところ俺以外に対しては割と普通だとは思うんだけどな……俺以外には……ごにょごにょ
継人:あ?
浪路:ま、まあとにかくだ!男友達でもできれば視野が広がって
なんか夢中になれる遊びとか趣味とかできるかもしれないし!
2~3日中にうちの部署のバイト頼もうと思ってるから
その帰りにメシでも食いに行ってきてくれ!
継人:……なんか引っかかるが、まあお前の弟だろ。別にいいぜ。
(回想終了)
継人:……正直に言うが、お前の話し相手になってくれって、
お前の姉ちゃんから言われたぜ。
なんか、姉ちゃんに心配させるようなことでもしてんのか?お前。
八雲:心配?心配かぁ………たぶん数え切れないくらいさせてるだろうな。
まぁ、そうやって必死に心配してくれる姉さんが
またかわいいんだよね(にやにや)
継人:……………??
八雲:あ、そうそう。名前すら名乗ってなかったね。
俺は東堂八雲。同い年だし八雲でいいよ。
苗字だと姉さんと区別つけにくいだろうしね。君は仙波くんだっけ?
継人:仙波継人。
八雲:仙波継人くんか~。姉さんからよく話は聞いてるよ。よろしくね。
継人:(……どう見ても、普通だよな……別に性格も良さそうだし、愛想もある。
姉貴と同じくよく喋るほうではあるが、別に鬱陶しいレベルではないし……
これでなんで「友達がいない」んだ?)
八雲:そういえば仙波くんって姉さんとよく遊んだりするの?
継人:よく、でもねえけど……
まあ時々飲みに誘われたり合コンに引っ張られていったりはするな。
八雲:えー、姉さん合コンなんて行ってるんだ。まあどうせ男としてだろうけど。
姉さんを本来の意味で女として認めてるのは俺だけだからね。
継人:は?
八雲:姉さんと飲みに行ったりもしてるのかぁ。いいなぁ。
姉さん俺の前だと、何か身の危険を感じるのか絶対飲まないからなぁ。
そりゃ酔いつぶれたら当然襲っちゃうかもしれないけどさ。我慢できるわけないもん。
継人:……おいちょっと待て。。
八雲:だって姉さんってば………………ん?なに?
継人:お前と東堂浪路は血が繋がってないのか?
八雲:何を言ってるのさ、浪路姉さんと血の繋がってる唯一の弟だよ俺は。
継人:何だって……その上で女として認めるとか襲っちゃうとか言ってんのか、お前は!
八雲:そりゃそうさ。だって俺、姉さんのこと好きだからね。
どんな男にだって譲るつもりなんてないよ。もちろん仙波くんにもね。
継人:いるかボケ!!!というか考えてみたらさっきから発言に姉さん姉さんばっか!
実の姉をそういう対象にしちゃいけないってのは、常識だろ!
八雲:えー、でも昔は姉と弟でも結婚できたんだよ。
日本の伝統文化をなくしちゃいけないよ。
継人:兄弟が結婚できたのは飛鳥時代の話だ!!!
あとそんなもんは伝統文化でもなんでもねえよ!!!
八雲:それに逆に考えてごらんよ。浪路姉さんと血が繋がった兄弟は俺だけ。
姉さんを姉さんと呼ぶ権利を持つのも俺だけ。
俺って浪路姉さんにとって唯一無二の存在だと思わない?
継人:間違ったことは言ってねえがポジティブに捉えすぎだ。
八雲:あはははは、仙波くんってツッコミ方がいちいち姉さんにそっくりだな。
かわいく思えてくるよ。
継人:寄るな変態!!! …ったく、こういうことだったのかよ!!
お前に友達が出来ないとかいう理由は!!!
八雲:俺には姉さんがいればそれでいいし、友達なんていらないよ。
でも仙波くんとはいい友達になれそうだな。ね?
継人:ど こ を ど う 見 れ ば そ う 言 え る ん だ !!
(八雲の首ねっこを掴んでぶんぶんと振る)
八雲:ああ、もうそんなに怒らないでよ。
姉さんが取り持ってくれた仲じゃないか、俺達は。
継人:(無言で携帯を取り出して、どこかにかける)………………
……おい、アホ浪路!なんなんだこの変態弟は!!!!
八雲:あ、姉さんに電話してるの?ちょっと代わって(強引に携帯を奪う)
もしもし姉さん?仙波くんいい人だね。俺達いい友達になれそうだよ。
それでこれからなんだけど…………ちぇ、切られちゃった。もう一回かけていい?
継人:携帯返せ!あとかけなおすなら自分のでやれ!!
八雲:えー、だって俺姉さんから着信拒否されてるし。
メールはかろうじて読んでもらってるけど。
継人:…実の姉から着信拒否される弟って…お前、その理由をよーく考えろよ。
八雲:姉さんああ見えて恥ずかしがりなところあるからね。
継人:絶対違うから。……ああもう、なんか怒鳴りまくってたら腹減った。
もういいから適当にメシ食いに行こうぜ。ただし姉ちゃんの話題抜きな。
八雲:姉さんの話題抜いたら俺話すこと何もなくなっちゃうよ。
継人:あるだろ大学の話とかそういうの!!!
八雲:俺、法学部だし。仙波くん確か薬学部でしょ?共通する話なんてあるかなあ。
そんなことより会社での姉さんのさあ(勝手に話を進める)
継人:(ふるふるふるふる)………
…よーし今からオレとジェネリック医薬品の将来について
延々と語ろうじゃねえか。来い!
八雲:ああああ仙波くん、乱暴はよくないよ。姉さん助けて~……
(ずるずると引きずられてどこかへ去っていく)