(都内のとある私立小学校)
”次の競技は、1年生による玉入れ競争です!”
在素:……ああもう、くっだらないわね。
あんな小さなカゴにお手玉入れることの何が楽しいのかしら……
カゴに投げる振りして人に投げつけてくる悪ガキもいるし……
同級生:ありすちゃーん、たま入れいこう~!
在素:はいはい。そんなに急かさなくてもすぐ行く……きゃぁっ!?(豪快に転ぶ)
同級生:きゃぁ!ありすちゃんだいじょうぶ!?
在素:大丈夫…靴紐がほどけてたのを踏んで転んだだけ…直していくから、先に行ってて。
同級生:うんっ、わかった!さきいってるね!
在素:……ああもう嫌。こんなみっともない姿、会社の人たちに見られたら最悪よね……
湧木:やー、在素ちゃん!これから玉入れだってねぇ!
在素:!!?? 廉太郎さん!?
継人:……へぇ、結構見に来てる奴らいるんだな。
出店とかもあるしお祭り感覚ってやつか。
上総:在素さんこんにちは。玉入れ頑張って下さいね。
在素:ちょ……!なんでみんなここにいるのよ――――――!!!
今日が運動会だってこと、お父さん以外の誰にも言ってないはずなのに……!!
湧木:久我室長が研究室のカレンダーの今日の欄に思いっきり
「在素運動会」って書いてたよ?
在素:お………お父さんんん………
というか特に継人さんはこういう人の集まるイベント来ないと思ったのに!
継人:こういうイベントに出るのは嫌いだが見るのは別に、な。
あの変態オヤジが絡むなら来なかったけどお前の運動会ならなぁ。
在素:う……あ、そう……(嬉しいけど見られたくなかったので複雑)
その、情報漏らした当のお父さんはいないの…?
上総:久我室長なら都合が悪いようで来ないそうですよ。寂しいですか?
そう思って、今日は張り切って沢山お弁当作ってきましたよ。
後でみんなで食べましょう。
湧木:僕らが持ってるこの荷物、全部弁当なんッスよね~。桐島主任、作りすぎッスよ。
上総:少ないよりはいいじゃないですか。
”玉入れに出場する1年生は、早く集合場所に集まってください ”
上総:あ、早く行かないと出遅れちゃいますよ。玉入れ。
在素:も、もうそんなのいいわよっ!恥ずかしい!
継人:やるべきことをサボるのはお前らしくねえなぁ。
別に恥ずかしくもなんともねえだろ。子供らしく頑張って来いよ。
在素:う………(継人に言われると弱い)
上総:デジカメの用意はばっちりですから、安心して頑張って下さい。
在素:余計に安心できないわよ――――――!!
先生:あっ、久我さんこんなところに!早く集合しなさい!
在素:あ、はい……すいません……(ものすごく嫌そうに先生に付いていく)
”さあ、始まりました!1年生による紅白玉入れ!赤がんばれ白がんばれ!”
在素:ちょ…!そんな当てずっぽうに投げたって入らないわよ!きゃあっ痛い!
ちょっと誰よ!?今ぶつけたの!痛い痛い痛い!入らずに落ちてくる玉も痛い!
投げる数の割に全然入ってないじゃない!最悪――――――!!
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”61、62、63……63対58で、白の勝ちで――――――す!! ”
継人:お疲れさん。
在素:あ、あんな大変だったのに……負けた……
湧木:あっはは、泥だらけだなぁー。こんな在素ちゃん貴重かも!
上総:あ、1枚撮っておきましょうか。
在素:撮るなぁ――――――!!
上総:そうそう、今の熱戦は動画で撮っておきましたよ。後で久我室長に見せましょう。
在素:見せなくていいってば!!
”次の競技は、児童の父兄によるパフォーマンスです! ”
湧木:へぇ、パフォーマンスって何やるんだろ?
久我:”フハハハハ――――――!!!
この運動会はたった今から私が支配したァ――ッ!!”
上総:こ、この声は……!!
在素:お父さんっ!?
久我の高らかな笑いと共に、謎の極彩色植物がグラウンドにうじゃうじゃと生え始める。
喜ぶ子供もいれば泣き出す子供、食虫植物に追われて逃げ出す大人で会場は大騒ぎ。
だが慣れている研究員達はその場を冷静に見つめる。
湧木:……なるほど……これをやりたかったから、都合が悪くて来れないとか
言って、内緒にしてたわけッスね……言ったら在素ちゃんに止められるだろうし。
継人:よくこんなんを小学校のPTAが認めたな。
湧木:そんなの事前に言うわけがないっしょ。
上総:流石は久我博士、素晴らしい発明です。……でも、
器物損壊とか傷害罪とかで博士が逮捕されても困りますから
そろそろ止めた方がいいですかね?
継人:……とりあえず、探し出して縛り上げるか。
その後、校内の放送室に潜り込んでいたところを研究員達に見つかり、
仙波くんに縛り上げられ、在素からたっぷりとお説教を食らった久我さんでしたとさ。