駅から会社までの間にある商店街の中を、たくさんの荷物を抱えながら歩く小柄な少女。
年末の買い込みをしている朝霧氷雨であった。
氷雨:え、ええと…ガラス用洗剤に、クレンザー、トイレ用洗剤…
(その他とにかく色々中略)…
……こ、こんなもんですかね……お、重たい……
美彦:朝霧ィィィ!!!!!!
氷雨:きゃあっ!?(ガシャン!ドサドサッ!!)
………ちょ……ちょっと、し、柴田部長………
美彦:まず挨拶!!!
氷雨:こ、こんにちは!…というか、見ての通り大荷物なのに
後ろからそんな大声で怒鳴られたら、
びっくりして落としちゃうに決まってるじゃないですか!
美彦:何をそんなに買い込んでいるんだ?年末の大掃除道具か!
そんなものは前もって何日かに分けて買い揃えるものだ!!
いっぺんに持とうとするからそうなるのだ!!
氷雨:柴田部長の大声にも問題あると思いますけど!
美彦:全く、減らず口だけは一人前だな!!! 俺様の家は大掃除なんてもう終わったぞ!!!
明日から田舎に帰らなければならんしな!!!
氷雨:……へえ……柴田部長の田舎って、どちらなんですか。
美彦:鹿児島!!!!
氷雨:だからそんなに暑苦しいんですね。(※鹿児島の皆さんごめんなさい・笑)
美彦:九州男児なめるな!!!!
氷雨:わたしは別に、年末だろうと正月だろうと、田舎に帰る予定はありませんし……
……家族や、兄弟と一緒に過ごすという習慣なんて、雪女族にはありませんし……
美彦:…………………全く、年末にそんな辛気くさい顔をしていたら、
来年も辛気くさくなってしまうぞ!!
ほら!!!(ぱしっ!)
氷雨:ちょっ…何するんですかっ!? わたしの荷物返してください!!
美彦:こんな重たいものを朝霧みたいな小さい女一人で持とうなんて、
無謀にもほどがある!!!下手したら腕が折れるぞ!!!!
氷雨:そ……わたし、そんなにかよわくありません!!!
美彦:はいはい、いいからそれもそれも、それも俺様に貸す!!!(次から次へと荷物を奪う)
朝霧は社員寮だっけか?ここから歩いて10分もかからんだろう。俺様が持つ!!!
氷雨:そんな、いいですってば!
柴田部長こそ用事とかあるからここにいるんじゃないんですか!?
美彦:別に、年末年始は普段会社に住み着いてる久我室長が、
今年は海外で過ごすとかでいないようだから、
休みの間は幹部が交代で会社の様子を見に行ってるだけで、
それの帰りだからもう用は無い!!!
氷雨:そう、なんですか…。
美彦:大掃除は、これから始めるのか?
氷雨:はい、そうですけど。
美彦:社員寮は結構広いからな!掃除も大変だろう!!!
俺様が手伝うからちゃっちゃと終わらせる!!!!
氷雨:えええええええっっっ!!??
・
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美彦:ふふん、こんなものでどうだ!!!!!
氷雨:……すごい……ガラス窓も網戸も、それに壁までピカピカ……
窓掃除に新聞紙が役に立つなんて、知りませんでした……。
美彦:こういうのは、男手と年の功の知恵があればすぐに終わるのだ!!!!!
家の大掃除も、ほとんど俺様がやったしな!!!!!!!!
氷雨:相変わらず、みゆき様のお尻に敷かれてるんですね。
美彦:うるさ―――――い!!!!
氷雨:……で、でも……その……あの、ありが……(ごにょごにょ)
美彦:朝霧!!!!
氷雨:(びくううっ!!)は、はいっ!!
美彦:朝霧は、鍋とか食ったらマズかったりするのか?
氷雨:え?……そんな、雪女だからって
熱い物食べたら溶けるとか、そういうことはないです。
なんでも普通に、人間と同じものを食べられますよ!
美彦:そうか!!!!(携帯を取り出す)
……あ、もしもしみゆきちゃん?……ごめんごめんごめんなさい!今すぐ帰るから!!!
ところでもう作り始めてる?さっき商店街で朝霧に会ってねー、
…うん、そう、その子。
氷雨:…みゆき様に電話…?
美彦:朝霧がおなか空かせて寂しそうにしてるから
連れて行って一緒に鍋食わせてもいいよね?
ほんと?じゃあ今からすぐ!帰るから!!!(電話切る)
氷雨:ちょっ……!? わたしがいつ寂しそうにしてたっていうんですか!
美彦:鍋というのは人数が増えれば増えるほど美味くなるものだ!!!
ウチの鍋を美味しくするために手伝いに来い!!!! それとも鍋嫌いか?
氷雨:なんですかその無茶振りは!!? べ、別にお鍋は普通に好きですけど!
美彦:…まぁ…その、なんだ。みゆきちゃんの作る鍋は、ホントに美味しいから!
本当なら俺様だけで、独り占めして当然なのだがな!!!!
……朝霧、今年入ってから頑張ってたろう!
だから特別!!! と・く・べ・つ・だ!!!!
氷雨:し、柴田部長………
美彦:とりあえず、走れ!!!!! 早く帰らないとみゆきちゃんに怒られる!
氷雨:は、はいっ!!
… よいお年を(´∀`) …