初南賛:……久我室長もいないことですし、種あかししてもいいですかね。
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(初南賛とゆたかが祭に向かう数日前。午後9時の国際部)
初南賛:失礼します。こんばんは。
夜半:……おや、西城寺君。こんな時間に何しに?
初南賛:………よいしょっと。
夜半:? 随分と大きな荷物持ってきたね。
初南賛:白鳥部長が京菓子好きだと聞いたので、
京都の実家に頼んで送ってもらったんです。まず、これと………。
夜半:おお、生八ツ橋。定番だねぇ。
初南賛:あとこれ。あんまり知られてないですけどここのどら焼きはお勧めです。
夜半:地元民ならではのお勧め品かぁ。いいねぇ。
初南賛:あと丁稚羊羹に、茶団子、蕎麦饅頭、豆大福。
とりあえず自分の好みで色々選んでみました。
お口に合えばいいのですけど。
夜半:うわぁ……………(珍しく目が輝いてる)
初南賛:良かったら全部、遠慮なくどうぞ。
……同じ社員寮でいつもお世話になってますし、
本来このくらいは当然なんですけど……すいません、
夜半:(和菓子抱えてうっとりしながら)え?
初南賛:お願いが、あるんです。
……僕、久我室長に殺されるかもしれないんです。
白鳥部長の力で、どうにかなりませんか。
夜半:ええ?いくら久我ちゃんでも、
同じ組織の人間を殺すような真似はしないんじゃないかなぁ。
初南賛:けど……先日、在素と買い物行ったところを目撃されてから……。
久我室長の僕を見る目が明らかに……怖いんです。
その視線だけで殺されるかと思うほど。
夜半:あー…でも、君が入社してから3ヶ月……か。
久我ちゃん毎年恒例の新人研修と称したただの人体実験を
やるには絶好の時期だなぁ。
初南賛:こ、怖いこと言わないで下さいよ!……でも……確かに先日、
父からこんなものを渡されまして。
夜半:……ふむ、「祭」の招待状ねぇ。渡したのはマイケル君……
危険なイベントなら久我ちゃんからマイケル君に託された時点で
マイケル君が反対しそうなんだが…まぁ、何かありそうではあるね。
……うーん、でも俺が直接行くとなぁ……。
初南賛:何か、まずいんですか?
夜半:や、最近血の供給がしっかりしてるから魔力が有り余っててね。
何か反撃したら久我ちゃんごと木っ端微塵にしちゃいそうで。
初南賛:(やっぱりこの人が最強だ……)
夜半:内容からして、君だけでなく、ゆたか君も招待されてる可能性が高い。
とりあえず、久我ちゃんの正確な思惑を知るためにも、
君はこの誘いに乗っておいて。君らには、久我ちゃんに対抗出来うる
人材を護衛として派遣しようじゃないか。
初南賛:え、一体誰を…
夜半:君の護衛はアラウネちゃんに、ゆたか君の護衛をリーザ君に任せてみよう。
初南賛:アラウネさんって女の人じゃ……だ、大丈夫なんですか?
夜半:ああ見えて彼女の攻撃能力は高い。
それに女の子が一緒なら君を狙う久我ちゃんの攻撃の手も鈍るはずだよ。
ただ、最初から一緒だと途中で策を練られて引き離される可能性がある。
彼女は一応久我ちゃんの部下だからね。だから最初は彼女には
姿を消しておいてもらうかな。
初南賛:でも…久我室長の部下なのに、
久我室長に歯向かう役目なんて引き受けてくれるんですか?
夜半:そうだね。……そのあたりは、俺がちょっと彼女をやる気にさせるよう
口説いてみるかな。…あとは、西城寺君。君の「演技力」に物を言わせてみようか。
初南賛:僕の、演技力…?
夜半:君は、久我ちゃん…いや、
「悪の帝王に何を言われようと何をされようと決して怯まない『勇者』」に
なってもらうかな。
初南賛:ゆ、勇者!?
夜半:決して、弱音を吐いたり泣き言言ったり許しを乞うようなことはしちゃ駄目だよ。
だって君は悪いことをしてるわけじゃないんだからね。
君の「勇者」っぷりがアラウネちゃんの力に繋がると思って、頑張って演じてね。
初南賛:頑張って…
って、それで久我室長を怒らせて殺気立たせちゃったらどうするんですか…。
夜半:一応どんな展開になろうと君は俺が絶対に殺させやしないから
安心して堂々としてていいよ。(京菓子の山抱えながらキリッ)
初南賛:(白鳥部長にそう言われるとホントに頼もしいな…
わざわざ京菓子買ってきた甲斐があったかも…)
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英司:…じゃあ、ここにたどり着くまでは姿を消したアラウネちゃんに
協力してもらっていて、あの発狂した久我ちゃんにも
全く怯まずに毅然としていたのは…演技!?
初南賛:まぁほとんど「素」でしたけど…。
本当は腰抜かすかと思うほど怖かったですよ…。
英司:しかしあの夜っちゃん(=夜半)を餌付けしとくとは、やるねぇ西城寺君。
初南賛:餌付けとか、なんか人聞きの悪いこと言わないでください…。
そういえば、アラウネさんは白鳥部長から、
どんな説明を受けてここに来たんですか?
アラウネ:わたしはアレク様……いえ、夜半様からは、
「西城寺君は在素ちゃんとの愛を守るために久我室長と戦っている。
その愛を守りきるには君の力が必要だ」って仰ってました。
最初は、恭一郎様に歯向かうなんて…って思いましたけど…。
真剣に恭一郎様に立ち向かう初南賛様の姿を見て、
わたしが守らなければ、って思って…。
初南賛:(だからあの思い込みよう、か……
アラウネさんをやる気にさせる策略とはいえ……白鳥部長……)
英司:ホント、演技とは思えないほど迫真の…
こちらが恐れおののくくらいの迫力だったよ。ホントに……
在素ちゃんとの愛を守るために立ち向かってるんじゃないかって。
初南賛:その最中でも、「在素とはただの友達」だって
言ってたはずですけど!?
ゆたか:…ちぇー☆ いいなぁ!! オレも初南賛の、その迫真の演技見たかった!!!!!
ね、ね☆初南賛!もいっかいその場面再現できない!?☆
初南賛:は!? 無理に決まってるでしょ!!
ゆたか:ええー☆ でもやっぱまた同じ状況にならないと無理かー☆
久我室長~☆どこにいますかー☆もっかいあのでっかいタコ出せませんかー☆
オレの後学のためにもお願いしまーっす☆☆
初南賛:やめて!ホントはすっごい怖かったんだから、止めて!!!
(史上最凶の夏祭り・完)
(おまけ・後日)
マイケル:(ピ・ポ・パ・ポ……)も、もしもしジョナサン!?
あれは演技だったんだよNE!? ならダディと口利かないとか、
お父さんって呼んでくれないとかっていうのも演技…
…
音声ガイダンス:”この番号は使われておりません 番号を確認しておかけ直しください”
マイケル:。・゚・(ノ□`)・゚・。ジョォオナサァアン!!!