(まだ正月休みの頃のねぎ社、宿直室)
千雪:(コン、コン)………………
(コン、コン)………………
………返事がありませんわね………
”ガチャ”
千雪:いやぁああああああっっ!!!!
久我:!?…何だ、千雪君か…人の顔を見ていきなり悲鳴とは、中々に失礼じゃないか…
千雪:失礼もなにも、そんなボサボサのヨロヨロの浮浪者みたいな顔して
いきなりドアを開けられたら驚かないわけがないですわ!まず返事くらい、なさい!
久我:……フフフ……済まないね……つい研究に没頭してしまってだね……
千雪:その身だしなみも最低ですわ!清潔感のない男性ほど最低なものはありませんわ!
久我:フ…フフフフ…これでも…ちゃんと毎日風呂には入っているから安心してくれたまえ…
ただ髪も髭も全くセットしていないだけだからね…
千雪:お正月休みだからって、そんな自堕落な生活をして!
在素さんはどうしたんですの!彼女がそのような状態の貴方に黙っているとは…
久我:在素なら……正月早々喧嘩して、怒って出て行ってしまったよ……
しばらく同居していない間にすっかりませてしまったようだな……
少し、交友関係に口出ししたらすぐ怒ってしまって……
千雪:口出し…?
久我:在素にちょっかい出してくるクラスの男子生徒数人を
ちょ――――っと脅しただけなんだがね…
千雪:小学生男子相手に大人気ありませんわね!?
というか、在素さんは今社員寮に入れないんじゃなくて?
久我:あの子は自分でそれなりの財産を持っているからね…
恐らくホテルなどに泊まっているだろう…
千雪:小学生が一人でホテルに泊まれるんですの…!?
久我:そこは大人化薬とか適当に利用してだね…ふふ…流石我が娘…
千雪:つまり現状、娘が家出状態ってことですわよね!?心配じゃないんですの!?
久我:心配は心配だが…今取りかかっている新薬の研究に手が離せなくてだね…
千雪:貴方は娘より研究の方が大事なんですの!?
そんな事だからいつまで経ってもお母様に心配をお掛けして
久我:………あぁ………成る程ね………
千雪:………!?
久我:君が珍しく、しかも会社が休みの時に宿直室を訪ねて来るなんて、
どういう用件かと思えば…姉さんの差し金って訳だね…フフフフ…
千雪:そうですわよ!お母様に様子を見て来い、なんて言われなければ
誰が貴方になんて会いに来るものですか!
もう、お元気そうなのは良くわかりましたから、私は帰……
久我:まぁまぁ来たばかりでそんなこと言わずに…
お茶でも入れるからゆっくりして行きなさい…
ビーカーで入れたお茶でよければ
千雪:それは私に帰れと言っているのと
同義と見てよろしいのかしら?
久我:うちじゃ普通の入れ方なんだがね…フフフフ…
千雪:……ま、まぁお母様への報告の為にも、上がらせて頂きますわ。
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千雪:……身だしなみとは裏腹に、意外に整理整頓されていますわね。
…というか、塵一つ落ちていない!?こんな引きこもり男性が
住む部屋なのに逆に不気味ですわ…!
???:………(ゴツン)
千雪:!? 背中に何かぶつかっ……
久我:おやおや、うちのお掃除ロボット「ルン・バ太郎」君が反応してしまったようだね。
千雪:お掃除ロボット… !?
久我:太陽光電池で半永久的に掃除をし続ける、私特製の掃除ロボットだ……
両足が市販のお掃除ロボット、ルン●になっている他、
ゴミと見なしたものは自動的に排除してくれる……
ルン・バ太郎:………(ゴツン)
千雪:!? ちょっと、またぶつかってきたんですけど !?
久我:あぁ……千雪君のことは初めて見るものだから、
ゴミと見なされているのかもしれないね……
千雪:失 礼 な !!!
ルン・バ太郎:………(ゴツン)
久我:コラコラ、バ太郎君。千雪君はゴミじゃないよ。
千雪:このポンコツロボット……不愉快ですわ!!!私はもう帰ります!!お母様には、
叔父様はとりあえず生きていると報告しておきますわ!!
久我:もう帰るのかね…残念だよ。可愛い姪っ子がせっかく訪ねて来てくれたのにね。
千雪:……可愛いなど……心にもないことおっしゃらないで下さいませ。
久我:心にも無いなんて事は、無いよ。
千雪君は…私が身内と呼べる、数少ない人間の一人だから…ね。
千雪:私は…貴方なんて、お母様の弟でなければ、本当にどうでもいい人間の一人ですわ。
久我:フフフフ……そういう所、本当に姉さんにそっくりだね……
姉さんにも、昔から色々言われたからね……
ますます、血の繋がりを感じずにはいられんよ……フフフフ……
千雪:……………失礼しますわ!!!
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久我:(姉さんが何を考えてるかは知らんが…裏で実家と通じている所もあるのか…
だが……どんなに監視されようと何をされようと、
私が実家に戻ることは、有り得ん……。)