(東堂家)
雪彦:うあぁぁぁあ~~~~ん!!!!
浪路:ああああ!雪!わりぃわりぃ!
つい持ち込んだ仕事に夢中になってミルクの時間が…
吹雪:全くもう!ミルクの時間くらい大体わかってたはずでしょ!泣かすんじゃないわよ!
雪彦:うぁぁあああああ~~~~~ん!!!!
浪路:えーとえーと…あ、オシメだな!よしよし…うぉっとっとっと
吹雪:ホント見ていてイライラするわ…どんだけ手際が悪いのよ!
雪彦:キャッキャッ
浪路:…………
吹雪:………………
浪路:いつまで見てるつもりだ?
吹雪:………!?
浪路:そんな堂々と不法侵入されて気付かないほど俺は馬鹿じゃねーよ。
あんただよあんたのことだよ。吹雪ちゃん?
吹雪:だってあんたみたいな男みたいな女に雪彦を任せてるのが心配でたまらないのよ!!
浪路:心配って…それで毎度毎度ストーキングされちゃ、
こっちもたまったもんじゃねーんだけどな。
ってか第一、雪彦育てるの放棄したのはそっちの方だろ。
吹雪:だって母……山神様が人間となった雪彦は我々とは無関係って言うから……
山神様のお言葉は絶対なんだから!
浪路:山神には無関係かもしれねーけど
少なくともあんたには無関係じゃないだろ。弟だろ?
吹雪:そうよ!弟…しかも、私と雪彦は双子なんだから!
自分の片割れが心配じゃないわけ、ないでしょう !?
浪路:双子…?マジかよ……どーみてもあんたの方が老k
吹雪:氷に刺されて死にたい?
浪路:あはい…すいませんでした
吹雪:とにかく!姉弟だけど私は雪女、雪彦は人間なんだもの、仕方ないじゃない!
浪路:……そんな、仕方ないことかぁ?
吹雪:そうよ!雪女にとって人間の男なんて獲物でしかないのよ。
いずれ雪彦が大きくなって、私が雪彦を食べたくなっちゃったら…
浪路:種族が違うとはいえ、そこまで愛情注いでる弟を食べたいと思うわけねーだろ。
……ハッキリ言うわ。雪彦はあんたが育てた方がいいんじゃねぇか?
吹雪:!?
浪路:どーせ俺がどう育てようと心配で心配で毎日ストーキングに来るんだろ?
だったらいっそあんたが引き取ればいいじゃねーか。
吹雪:む、無理よ!人間になった雪彦は無関係って山神様が……
浪路:今が無関係なら今から関係持てばいい話だろ。
山神があんたに雪彦に近づくな、とでも命令してんのか?
吹雪:そ、そんなことないけど……
浪路:ならいいじゃねーか。
吹雪:そ、そんな…雪彦が私のもとに…私…住民票も戸籍もないのにどうやって…
浪路:その辺の事情怪しい奴らなんてこのサイトに
いっぱいいるのに、そこまで心配する奴初めて見たぞ。
まぁ…なんだ、その辺ちゃんとさせたいなら、
ウチの会社に頼めば偽戸籍くらいは作ってくれるぞ。
吹雪:私、あの会社の人間じゃないわよ!?
浪路:細かい事情は知らんがウチの社長は妙に雪女族を懇意にしてるみてぇだから、
全然OKだろ。いいからいっぺん一緒に居てみりゃいいだろ。
…なぁ雪!お前どう思う?
雪彦:うー?(浪路が指差す、吹雪の方を見る)
吹雪:………雪彦………
雪彦:………ねーね!
吹雪:!!!
浪路:!!!
雪彦:ねーね、ねーね! キャッキャッ
浪路:…驚いたな…初めて顔合わせただけなのに、姉ちゃんだってわかってんのか…?
・
・
・
(数時間後)
浪路:というわけで、だ。八雲。
雪は実の姉ちゃんが責任持って引き取るらしいから……
八雲:嫌だ!
浪路:は?
八雲:いったん放棄したくせにまた引き取るとか、自分勝手じゃないか!
俺だって雪ちゃん好きなのに!
浪路:お前………結構真っ当なこと言うのな………。
八雲:当たり前だよ!雪ちゃんがいるおかげで、俺どんなに幸せだったか!
浪路:八雲………。
八雲:雪ちゃんがいるおかげで、
俺が浪路姉さんと結婚して子供作った妄想を
毎日出来て俺超幸せだったのに――――――!!
浪路:(ゴスッ)(そのへんにあった鈍器で八雲を殴打)
まあこのクソ変態弟の言うことはさておき、俺もそこそこ長い間
一緒に過ごしたし、さすがにすぐに雪と離れるのは寂しいんだ。
吹雪:確かに…一度母親を名乗らせたのに、こちらに戻させるのは、
虫の良すぎる話だと私も思ってるわよ…。
浪路:だからひとつだけ条件だ。俺が通いやすい範囲内に引っ越して、
姉弟ふたりで暮らしてくれねぇか?
吹雪:!?
浪路:一応、雪彦はうちの社員として「とりあえず」は登録されてる。
社長に言えば色々手伝ってくれるだろ。
吹雪:わ、わかったわよ……。
浪路:交渉成立な!ほら、雪。姉ちゃんだぞ!(雪彦を抱き上げて吹雪に手渡す)
雪彦:ねーね?
吹雪:………雪彦………!今までごめんね……(涙ぐみながら頬ずりする)
浪路:(ま、これでいいんだろうな……寂しくなるけども……)