(金曜の夜、とあるゲーセン)
初南賛:まさか仕事帰りの平日に、今日から稼働する新型の筐体を試したいからってゲーセンに連れてこられるなんてね……
ま、長谷川さんらしいというかなんというか……
恵莉:え、えへへ……
つきあってもらっちゃって、ほんとうにすいません!
初南賛:いいよ別に……暇だったし……
恵莉:さすがにへいじつの稼働初日にネットのおともだちをさそうのは気がひけましたし…
初南賛くんなら、新型の筐体でもすぐに操作ほうほうはあくして、すいすいプレイしますし…
初南賛:そ、そう?………ゲームの腕に関しては神みたいな長谷川さんにそう評価されるのは、ちょっと嬉しいかも…
恵莉:わたしに勝てるかどうかは、べつですけどね。
初南賛:ぐっ………っていうか、仮に慣れたゲームでも長谷川さんに勝てるわけないでしょ!
さ、早く。誰も並んでないうちにやってみようよ。
恵莉:そうですね!
(新筐体を対戦プレイ中)
初南賛:へえ、なかなか面白いな……技のバリエーションがめちゃくちゃ豊富だ……
……まあ、何を繰り出しても、面白いくらい長谷川さんには勝てないわけだけども。
恵莉:ご、ごめんなさいです……ついいろいろ試したくてさんどばっぐにしてしまって……
初南賛:今日はサンドバッグになりにきたからいいんだけどね……
男1:ぷっ、ウケるんだけど。この男、女の子に全然勝てねーでやんの!
男2:見てた見てた。雑魚過ぎにもほどがあんでしょ。
初南賛:!
恵莉:………!
男1:ねぇねぇ彼女、こんなクソ雑魚彼氏ほっといて俺たちと遊ばね?
男2:こいつ、これでもここのゲーセンでよく開催されてるゲームの大会で何度も優勝してるんだぜ。
恵莉:(彼氏、発言は否定するのもめんどくさいのでスルーして)あ、あの……
男1:いくら女の子でも、こんな雑魚男くん相手じゃつまんないっしょ~?
初南賛:(同じくスルーして、恵莉の前に立ちはだかる)
……やめてください、彼女が困ってるじゃないですか。
男2:お?雑魚男くんやるつもり?なんなら彼女賭けて勝負でもしてみっか?ハハハ
初南賛:いいでしょう、勝負します。あなた方が勝ったら、彼女を連れていっても構いませんよ。
男1:マジか?こいつ死に急ぎ過ぎだろww
初南賛:ただし勝負するのは僕じゃなくて彼女ですけど
恵莉:ええええっ!!??
男1・2:ハァ!?
初南賛:なんなら筐体もあなた方の好きなの選んでいいですよ。
恵莉:じょ、初南賛くん………
男2:こいつ、ひでぇなwウケるわwww 彼女捨てて逃げるつもりか!
男1:なんっつークソ雑魚ゲス男www
(しばらく腹かかえて笑っている男2人)
恵莉:(小声)………初南賛くん………
初南賛:(小声)何?
恵莉:(小声)ほんとうに、いいんですか?
初南賛:(小声)何が。
恵莉:(小声)ほんとうに、わたしがぶちのめしていいんですか?
初南賛:どうぞ。
男1:(会話は聞こえてない)じゃあ、彼女か~わいそ~だから、かんたん目なの選んでやるよ!こっち来い!
(3分後)
男1:あ、あれー?なんかミスったかな……なんでこんなあっさり負けんだ……?
男2:おい、何やってんだよ!
恵莉:あ、あのー……おわっちゃったんですけど……なにかまちがえたのですか……?
男1:そ、そうだな!もう一回やろうぜ!
恵莉:はい。よろしくおねがいします。
(1分後)
男1:うぇっ!?
恵莉:あのー……だいじょうぶですか?すぐおわってしまうんですが。
びっくりするほどよわいので、てかげんしてくださってるのでしょうけど……。
初南賛:(長谷川さん……煽ってる……煽ってるよこれ……)← 笑いこらえてる
男1:なんだこれ!このゲームおかしいから別にやる!さっきの、今日稼働したばっかのアレやるぞ!
(3分後)
恵莉:おかしいですね……あたらしいゲームでもこんなすぐにおわってしまうなんて……
正直、初南賛くんよりよわい気がするんですけど、きのせいでしょうか。
初南賛:(……長谷川さん……怒ってる……?)
男2:オレ横で見てて思ったけど……お前(男1)がおかしいんじゃなくて、この娘がおっそろしく強いんじゃ……!?
恵莉:初南賛くんをくそざこ呼ばわりしたんですから、もうちょっともたせてくれないと、つまらないです。
男1:(ゾクゥ…)……ちっくしょー!もう1回、もう1回だ!!
(1分後)
男1:(ガクッ)無理ゲー過ぎるだろ~~~~!!!!
男2:もう行こうぜ!カッコ悪すぎんよオレら!
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恵莉:いなくなっちゃいましたね。
初南賛:……とっさに押し付けちゃったけど……長谷川さんが安全に済む方法としてはあれが一番かと思って……
暴力に訴えてきたら、なんとか体を張って守る覚悟はしてたけど。
恵莉:いえ、よかったです。初南賛くんをわるくいわれて、正直ちょっとあたまにきたので、じぶんでぶちのめせてよかったです。
初南賛:は……ははは……やっぱ怒ってたんだ……別に、僕は長谷川さんから見たら雑魚なのは間違ってないのに……
恵莉:そんなことないです。こんかいは押しつけられちゃいましたが、初南賛くんでもあのひとたちには勝てたとおもいますよ。いつもいっしょにプレイしているわたしがいうんだから、まちがいないです。
初南賛:そ、そうかな……ありがとう。
恵莉:じゃあ、すっきりしたところで、さっきのゲームのつづき、やりましょう。
初南賛:えっ まだやるの!?