[NEWS]仙波くんのお父さん・6

○刊ねぎ秘密結社ニュース


継人:父さん……なのか?

雅人:こ、今夜会う約束をしていただろう?帰ったら、社員寮の梧くんのところに行ったきり帰ってないって、母さんから聞いてね。

継人:わざわざここまで来たのか。……逃げもせずに。

雅人:あぁ……もう、逃げないよ。母さんにも了解を得たし、本当のことを話そう。

渉:仙波さん…!本当にいいんですか?

継人:そ、そうだ!父さんはこんな嫌な感じする奴らと仕事してんのか!? 一体オレに何を隠してる?

渉:嫌な感じする奴ら……(涙)

雅人:渉くん、……そして、えーと(夜半の方を見る)

渉:あっ、仙波さん。こちらが以前話した、僕の奥さんと同じ会社にいらっしゃる、御真祖様です。

雅人:(´A`;)ヒェッ!!! やや、やややや、やっぱりそうか…!

夜半:そんなに怯えなくても…

雅人:気を取り直して………お初にお目にかかります、御真祖様。僕はこの子…継人の父、仙波雅人と申します。
この度は僕の息子が無礼を働き申し訳ありませんでした(深々とお辞儀)

夜半:いやいいよ。俺も試すようなことしちゃったし。ご子息が俺達の前で気が立つのは習性みたいなもんでしょ。

継人:これが習性、、だと……?

雅人:………………継人、僕はね。
人間じゃない。本当は吸血鬼なんだ。
母さんは紛れもなく人間。だが、君は……
吸血鬼と人間の間から、ごく稀にしか生まれない種族、ダンピールだ。

継人:ダン……ピール?

雅人基本的な体質は人間と変わりない。最たる特徴は、吸血鬼が近くにいるとその存在を感知できる能力があるんだ。

継人:感知……って、まさかこの二人に悪寒を感じるのは……

渉:……そう、僕らも吸血鬼だからだよ。君に危害を加える気のあるなし関係なく、悪寒を感じさせてしまうんだ。

継人:でも、父さんからは悪寒を感じないんだが…

雅人:えっ、そうなのか!?

夜半:それは恐らく、吸血鬼でも血の繋がりがあるから、拒否反応が出ないんだろう。たぶん。

雅人:な…なんという…

夜半:あと継人くん、君は怪我をしてもすぐ治っちゃうんだっけ?久我ちゃんから前に聞いたけど。
それもダンピールの能力だよ。吸血鬼と同じように治癒能力が高い。あと……
ちょっと、指差し出してもらっていいかな。

継人:指?(左の人差し指を差し出す)

 シュパッ!(指先を少しだけ切る)

継人:ッ…!

夜半:ごめんね。でも君なら数分もすれば塞がるだろう。

雅人:わ……わー!!! ご、御真祖様…!そんなことしたら…!!!!

渉:………うわ………何これすごい……すごい、美味しそうな匂いがする……

夜半:……ほ~、これは確かに、絶品なのかもしれない。

雅人:ちょっ……!渉くんまで!! ひとの息子でワインの品評会みたいなことしないでくださいよ!

夜半:でも、現物を見たほうがわかりやすいだろう?君も。

雅人:ぼ……僕?

夜半:ダンピールの血は至上最高の美味とされていてね。血の匂いに敏感な吸血鬼なら我を忘れて飛びつく美味さと言われている。
雅人くん、君が恐れていたのは、継人くんにもし血の流れるような何かが起きた時、君が息子の血を飲んでしまうかもしれないからだろう?

雅人:!!!!!

夜半:ダンピールは、吸血鬼になる一歩手前の人間みたいな存在だ。他人の吸血鬼から噛まれても何も起きないが、唯一、血の繋がった親吸血鬼から血を飲まれると、体内の吸血鬼の遺伝子がたちまち目覚めて、吸血鬼となってしまうんだよ。

雅人:そう……そうなんだ。継人……僕は、君には人間として生きていて欲しいんだ。
こんな……太陽の下を歩けない魔物なんかより、人間でいて欲しかった。

継人:父さん……

夜半:でも、雅人くん。今、ご子息の血を目の前にして、我を忘れて吸いつきたいとか思うかい?

雅人:………………そういえば、全く血の匂いを感じられない。
特に美味しそうにも見えないな……何故だ……?

渉:僕らには、とっても美味しそうな匂いがしますけど。でもまあ……我を忘れて噛みつきたいとかは……思わないですかね。ここに来る前に食事済ませてあるからかな?

夜半:俺も血族がいるわけじゃないから、聞いた話でしかないんだけどね。
血の繋がった家族の血は、美味しくないらしい。

雅人:えええぇ――――――っ!?

夜半:人間と吸血鬼が血の繋がった親子や兄弟である例は稀だから、あまり知られていない知識だけども。だから、継人くんの血は他人にとってはご馳走でも、雅人くんにとってはただの血か、それ以下。
我を忘れて襲おうなんて気は、まず起きないから安心していいと思うよ。

雅人:……そ……そんなぁ……じゃあ僕は、普通に継人と生活できたんじゃないか……今まで、何のために何年もこの子を避けて……

夜半:あとまぁ、ついでに言うと……渉くん。

渉:はい?

夜半:君も本来ならダンピールの血を目の前にしたら、吸血鬼の野生もろ出しに理性を忘れて継人くんに襲いかかるはずなんだけど。

渉:え……? で、でも僕は……美味しそうとは思うけど……蔦ちゃんの血の方が美味しいか、しいて言えば同じくらいかな、としか……。

夜半:君は蔦子ちゃんに吸血鬼だと明かしてから、蔦子ちゃんの血をもらっているんだろう。正式契約したうえでね。

渉:はい、そうです。カミングアウトしてからは蔦ちゃんの血しか飲んでませんよ。蔦ちゃんを安心させる意味でも、白鳥さんに教えてもらってちゃんと契約して…

夜半:血を交わして正式契約すると、吸血鬼の血を得た人間は、相手の吸血鬼の好みの味に血が変質する。
今の蔦子ちゃんは、契約主の渉くんに対してだけは、他のどんな人間の血よりも、世界一美味しい血の持ち主になってるはず。
だから、ダンピールの血の匂いにも当てられない。

渉:そうなんですか……正式契約にはそんな効果もあるんですね。

夜半:それに俺も最近正式契約相手ができたしね。ここにいる吸血鬼は全員、継人くんに襲いかかるようなことは絶対にないから、安心していいよ。

雅人:そうか…そうだったのか……。
色々ご享受いただきありがとうございます、御真祖様。……済まなかった、継人。今まで寂しい思いをさせてしまったね。

継人:別に、もう気にしてねーよ。

雅人:継人が赤ん坊の時に、僕があやそうとすると、必ずと言っていいほどギャン泣きするから、てっきりダンピールの能力が影響してるのかと思ってな……ダンピールに対する知識も乏しかったし、避けることしか頭になかったんだ。

継人:それは単純に父さんの赤ん坊の扱い方が下手クソだっただけなんじゃねぇのか。

雅人:(ガ――――――ン!!!)

継人:……ま、ともかくこれで、オレに対してコソコソする必要はなくなったわけだが…な?
まだ気になることは多々あるから、続きは家帰ってからとことん追及させてもらうぞ!(雅人の首根っこを引いて強引に連れて帰る)

雅人:痛い痛い痛いって継人!!
父さんはもう逃げも隠れもしないからそんな無理やり引きずらないでくれ~!

(仙波親子、退場)

夜半渉:………………

渉:なんだか、うまくまとまったみたいですね!

夜半:まぁ……まだちょっと不安要素はあるけど、それは追々アドバイスしていくか。

 

(つづく)

 

 

 

 

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