(大島家、客間)
雅人:僕は吸血鬼でも少し特殊なんだ。吸血鬼にもランクがあってね。
太陽光が苦手な渉くん達のような普通の吸血鬼より高位の能力を持つ。高等吸血鬼といってね。
継人:ふーん。
雅人:御真祖様…白鳥氏のような生まれながらの吸血鬼というのはかなり稀でね。あのお方は世界最強クラスだ。ほとんどの吸血鬼は、他の吸血鬼から致死量の血を飲まれることで生まれる。それも全てではないけどね。血を致死量飲まれた人間が吸血鬼と化す確率は五分五分と言われている。
梧:叔父さんも、元は人間だったんですか?
雅人:そうだよ。もうほとんど記憶にないがね…。
そして僕は、人間だったけど吸血鬼になるための「素養」が元々備わっていたようでね。
そういう人間が高等吸血鬼になったりするそうなんだ。
……そしてここからが本題だ。
普通の吸血鬼と高等吸血鬼の決定的な違いは…生殖能力があるということだ。
継人:それで母さんと出会ってオレが生まれたってことか?
雅人:まあそうなんだが、話はそう簡単でもなくてね。
生殖能力があるといっても、吸血鬼の子供を産める人間というのは、きわめて稀らしい。
通常は吸血鬼の遺伝子の強さに人間の遺伝子がついていけず、受精まで至らないらしいが…
優秀な能力を持つ強靭な人間であれば、受胎できる。つまり…
橘:人間だけど、特殊な能力を持つ一族である大島家の人間だった、継人のお母さん…華耶子さんは、その条件を満たしていたんですね。
雅人:そう。母さん…華耶子さんは自分の産む子がダンピールかもしれないと知っても、覚悟を持って産んでくれた。
ダンピールはその体質上、吸血鬼からとても狙われやすい。だから古来からダンピールを産んだ夫婦は、子が危険にさらされるくらいならと、乳児のうちから吸血鬼の親が血を飲んで、吸血鬼にしてしまうことが多いそうだが……僕も華耶子さんもそうしたくはなかった。
大島家にも協力いただいて、全力で隠し通し、君を守っていくと決めたんだ。
梧:でも、さすがに一生隠し通すのは、無理があったのかもね~。
橘:まあ…いいんじゃない?もう、隠すよりは堂々と全てを話した上で今後も守……
継人:おい、ちょっと待てよ。なんかさっきから聞いてれば、何もかもオレを外敵からみんなで守ってやるってのが大前提での話をしてるな?
雅人:! それはそうだよ!子供を親が守らないで誰が守ると…
継人:子供のうちは仕方ねーにしてもよ、オレを何から襲われようと返り討ちできるくらいに鍛えてやろうとは思わなかったわけ?
雅人:え……
継人:オレはか弱いお姫様じゃねーんだぞ。それに自分がダンピールだと知ってから、自分なりに調べてみた。
ダンピールは確かに吸血鬼に狙われやすいが、能力の使いようによっては吸血鬼の天敵にもなりうる存在らしいじゃねーか。
雅人:……!!
継人:それを知って、あの背デカい白髪の…白鳥、部長だっけか。あの人に訊いたら
ダンピールは飲まれた血を操って、吸血鬼の体内でその血を毒に変えて吸血鬼を殺すことができるってな。
……ただ、それができるようになるには、ある程度の訓練が必要らしいが。
雅人:……あぁ、知ってた。知ってたけども……
継人:それも知ってたのかよ!?
雅人:これでも吸血鬼保護団体の仕事で世界中飛び回ってはいるからね。色々情報は入ってくるんだけども……
海外に、ダンピールを吸血鬼ハンターとして教育・育成する団体なんかも存在する。
継人:なんだと!? じゃあオレがそういうところで勉強して……
雅人:……って流れになるでしょぉぉおお!!!!??
継人:!?
雅人:嫌だよ!? 継人がダンピール留学して吸血鬼ハンターに目覚めて父さんを殺しにかかってきたらと思うと、そんなこと教えられるわけないじゃないか!!!!
継人:……(あっけ)
雅人:ただでさえ自由に会うこともできなかったのに親子で天敵同士になるなんて嫌だったんだよぉぉぉ~~~(号泣)
梧:うわぁ……僕、雅人叔父さんってスタイリッシュで渋くてカッコいいイメージだったけど、こんなみっともなく泣くところ初めて見たなぁ~…
橘:それだけ息子が可愛くて仕方ないってことじゃないかな……
継人:……はっ、ホントにな。父さんにそんな情けねぇ姿見せられるなんてな。
大丈夫、仮にそういうことができるようになったとしても、父さんを襲ったりはしねぇよ。
雅人:継人……
継人:あと、雅(妹)はどうなんだ?あいつもダンピールなのか?あいつこそまだ幼いし、よっぽど守ってやらなきゃ…
雅人:ああ、雅は養女なんだよ。僕とも母さんとも血の繋がりはないんだ。覚えてないかい?
継人:………………………まぁ、薄々は気づいてたが。
そもそも雅が来たのがオレが12の時。母さんが妊娠して腹がデカかった記憶もないし、なんかある日突然というか、いつの間にかいたよな、雅。
雅人:雅は僕が連れてきた子だからね。僕と会った記憶を操作した関係で雅との出会いの記憶も薄れて、いつの間にかそのまま家族になっていたのかもしれない。あの子についてはまた後で説明しよう。
継人:まぁ、何であろうとあいつが妹なのは変わらねぇがな。
…………で、橘さんよ。
橘:∑ はっはい!? いきなり振られてびっくりするんだけど!?
継人:父さんがここに来たのは想定内だったんだろ。今日ここにオレ「たち」を呼び出したのは何か理由があるんじゃねぇのか?
橘:え、えっと……その……
継人:なんだよ、言いづらそうにして。
柊:そんなの、継人くんがお父さんと自由にご対面解禁お祝いのお赤飯を柊お兄ちゃんが炊いたから食べてもらうために決まってるじゃないですか~~~~~☆
ささ、ささ、い~~っぱい炊いたからじゃんじゃん食べてくださいね~~~~~
(継人の口にしゃもじで無理やりねじ込む)
継人:んごっ!? むぁにうんはおっ!?(うわっ、なにすんだよ)
兄さんが誤魔化して、くれた……?
まあ、あの叔父さんの様子を見たら、言い出しにくくなっちゃったよな……
……継人をダンピールとしての能力をちゃんと扱えるようにするために、しかるべき機関に行ってもらう…なんて。
とりあえず、しばらくは保留かな……
雅人:そ、それで………け、継人……お願いが、あるんだが………
継人:んごぁ?
雅人:だ……抱きしめて……いいかな……
継人:(んごくっ)←赤飯飲み込む
はぁぁっ!?
雅人:ねぇ……いいでしょ……ね……?(はぁはぁ)
梧:うわ、叔父さん……完全にセクハラオヤジと化してない?
雅人:噛みついたりしないから、ね?頼むから……ちょっとだけ……
継人:噛みついたらぶっ飛ばすに決まってんだろ
雅人:うわあああもう我慢できない継人――――っ♥♥♥
(むぎゅうううう♥♥♥)
柊:わぁ~~ 親子の感動の抱擁ですね~~愛ですねぇ~~~
橘:継人は相当嫌そうだけど…(笑)
とりあえずは、結果オーライなのかな? まだまだ大島家のバックアップは必要だろうけど。