(平日夕方、開発研究室別館)
継人:……っす(挨拶)
久我:……仙波君か。今日は随分と遅かったじゃないか。終業30分前だぞ。
継人:連絡入れただろ。大学の講義がすげぇ長引いたんだよ。
久我:そうか。
継人:(……なんだこのオッサン、妙にテンション低いな…?いつもハイテンションってわけでもねぇが、なんとなく…)他の連中は?本館の方はほとんど片付いてたが。
久我:桐島君は午後半休、湧木君は支社に出張、アラウネ君と在素は買い出しに行っている。
継人:ふーん。
久我:ふぅ……む(何かの書類を、ため息交じりにまじまじと見ている)
継人:…………
久我:……仙波君、話しておきたいことがある。
継人:? な、なんだよ……
継人:………(「あのこと」か)
久我:君には、どんな病気や怪我、猛毒にかかっても短時間で治癒する素晴らしい能力が備わっている。
だがそれは半分は人外の……吸血鬼の親の血によるものだというではないか。
継人:ああ、そうだ。
久我:私は……私は、人間でありながら超人的な治癒能力を持つ、仙波君の能力に、出会った時からずっと、とても魅せられていた。
そう、「人間でありながら」というところにだ。
継人:何が言いたい?
久我:私は、「人間が」持つ「特殊な能力や体質」を研究するのが大好きでね。……つまりは、人間じゃなければ、意味がないのだ。
正直に言うと、人外には興味がない。頼まれれば研究したりもするが、自らのめり込もうとは思わない。
継人:……回りくどくせずハッキリ言うなら、ただの人間だったら良かったのに、人外だから気に入らないってか?オレのこと。
久我:……………。
継人:けっ、とんだ人種差別だな、オッサン。ちょっとだけ幻滅したぜ。
それに生まれや血筋が何であろうと、オレがオレなのは変わらねぇ。
久我:………そう、変わらないのだ。
継人:……あ?
久我:人外には興味はない……それも変わらない。変わらないのだ……。
……仙波君、君が人間だろうと人外だろうと、仙波君は仙波君、変わらないのだ。
(継人の両腕をがしっと掴む)
…君が魅力的な生物であることに、なんら変わりはないのだと!!!!
継人:うわぁっ!?
久我:再確認してしまったのだよ!君が何であろうと私は仙波君が大好きだと!!!!
在素の婿にはやはり君しかいないっ!!! 君にお義父さんと呼ばれたい!!!!!
継人:はぁぁぁああああ!!!?? キモいこと言ってんじゃねぇぞこの変態!!!!
そこはフツーに興味なくしてくれて構わねぇトコなんだよ!!!!
久我:それにダンピールは何もしなければ「怪我が治るの早くて血がちょっと美味しいだけの人間」だと白鳥君も言っていたし!!!
私の仙波君は何も変わらな――――――い!!!!(今度はしがみつく)
継人:「私の」とか心底不愉快なんだが!? 寄るな触るな離れろしがみつくなこのド変態科学者!!!!!