[NEWS]御嬢様のお忍びディナー

○刊ねぎ秘密結社ニュース

(経理部)

 

千雪:経理部の皆さま、ごきげんよう。

橘:ごきげんよ………って鳥居さん!? 珍しいですね、うちの部署に来るなんて…

千雪:あら、来たらまずかったかしら?

橘:いっいえ全くもってそんなことはないんですが!きょ、今日はどういったご用件で…

千雪:成沢さんはいらっしゃる?

橘:眞妃さん……部長は今少しだけ席を外してますが、すぐ戻ってくるはずです。

千雪:そう。では適当に空いた席で待たせていただきますわ。(優雅に座る)

橘:(空いた席……眞妃さんの席なんだけど……)

千雪:そこの貴方!お茶を入れてくださらない?

橘:はっはい!(なんで僕が;)

 

(数分後)

 

眞妃:………なんで、あなたがここに座ってるの?

千雪:あぁら成沢さん!ごきげんよう。いらっしゃらないから空いてる席に座らせていただいてるだけですわ!

眞妃:よくわからないんだけど……何。何の用?

千雪:成沢さん。あなたは産休が明けてから一切残業をしていないのは知っています。ならば今日!終業後に私とディナーを共にする権利を与えて差し上げてもよろしくてよ!!

眞妃:別に要らないけど…

千雪:(ガ――――――ン!!!!)な、なんですって、この私の誘いを断るですって…!?

眞妃:あぁ……誘ってるの……。にしたって、もうちょっとマシな誘い方があるでしょう?
まあ、いいけど。じゃあ子どもの迎えとかをに頼んでおくわ(スマホを取り出す)

千雪:………………

眞妃:な、何よ?

千雪:……何でもありませんわ。では終業後、正面玄関にて待ち合わせいたしましょう。

橘:(この二人が食事に行くとか、珍しいな……そういえば大学の同窓生とかなんだっけ…?忘れてたけど)

 

 

 

(終業後、某居酒屋)

 

千雪:こちらの店にしましょう。

眞妃:(へぇ……思ったより普通の大衆居酒屋……この人の事だから、超高級フレンチとか三ツ星レストランとか連れていかれるかと思ったのに)

千雪:ここは沙織さんにお勧めされたお店ですの。二人で腹を割ってじっくり話すには良い環境とのことで。

眞妃:腹を割ってじっくり……?というか話すには少々騒がしいんじゃない?居酒屋だと。

千雪:今日は貸し切りにしてあるのでその点は問題ないですわ。

眞妃:(流石だったわ…)

千雪:あ、それと……手紙を差し出す)

眞妃:手紙…?

千雪:その手紙は、今日の食事が終わって、私と別れたあと、すぐに読んでくださるとありがたいですわ。

眞妃:ふーん……。

 

(入店)

 

眞妃:……で、今日は私と何を話そうっていうの?

千雪:成沢さん………貴女、最近どうなの?

眞妃:どう、、、とは……?

千雪:結婚………夫婦、生活ですわよ……

眞妃:??? ま、まぁ別に、普通に平和に過ごしているけど……?

千雪:結婚、とは、一体どういうものですの?
他人同士だった男女が同居し、そして家庭を作っていく……私には、想像もつかないことですわ。

眞妃:そ、そうね……私も最初は……違和感あったけど。でも時が経つにつれて慣れちゃって、そのうち子どももできて……

千雪:そう、そうなのよね……子ども。貴女、母親なんですものね……(涙ぐむ)

眞妃:ちょ、ちょっと!? なに涙ぐんでるの!?……うわっ、気づいたらグラス3杯くらい空けてる!?

千雪:もう……なんなの、なんなのよ貴女……ついこないだまで、私と対等……私と同じくらい、知性と美を兼ね備えた完璧な麗人だったのに、
気づいたら結婚、出産して……もう私とは全くの別の人種になってしまったかのようで……ぐぅっ、えぐっ、ひっくひっく

眞妃:えー……(困惑)なんで、そんなこと言われなきゃ……というか、そんなことで号泣されなきゃいけないの……?

千雪:でも、貴女は結婚して母親になってもなお、才色兼備さを保って………私は、わたくしは………

眞妃:(な、なんだかものすごく褒められてる……?)

千雪:わたくしは、嫁いでもそうでいられる自信は、正直無いんですのよ……っく、えっぐ、うっうっ……

眞妃:鳥居さん……?

千雪:貴女のご主人のことは、わたくしは良く存じ上げませんが、しっかりした方だとは伺っております。そして、いつの時も貴女を深く愛し大切にしてくださっている男性だと……

眞妃:そ…そうだけど……(改めて言われると照れるわね……しかしあのヘラヘラオカマ男をしっかりした人、って。誰情報かしら?)

千雪:わたくしには、見ず知らずの他人の男性を心から愛することも、愛される自信を持つことも、できるかどうか不安しかないのですわ……っ~~~うううううう

眞妃:見ず知らず……って、流石に結婚相手は、結婚する前にある程度の交際期間を経て、それで判断して結婚するものでしょう!?

千雪:普通はそうなのでしょうけど……わたくしは、わたくしの場合は……うわああああああ~~~ん!!!!(完全に顔を伏せて泣きつぶれる)

眞妃:ちょっと――――!? 鳥居さんしっかしりなさいよ!!
全くもう、意味がわからないんだけど!?

 

 

(その後、わんわんと泣きわめく千雪を眞妃がなんとかなだめて、タクシーに放り込んで家に送らせてお開きとなった。)

 

 

眞妃:……ふう……なんだか、あんまりゆっくり食事もお酒も楽しめなかったわ……
鳥居さんって、あんなに酒癖悪い人だったかしら……というか、そもそも一緒に飲むこと自体初めてだったかも…?

(無意識にポケットに手をやると、入店する前にもらった手紙が)

眞妃:そういえば別れた後に読めって言ってたわね。なんなのかしら(手紙を開ける)

 

「今日私が話したこと、私がやらかしたことは全て忘れてください。」

 

眞妃:…………………
あの人、自分の酒癖の悪さ、知ってたのかしら……事前にこんな準備しておくなんて。
まぁ、別に誰にも言わないけど……

 

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