(某高級貴金属店)
店員A:いらっしゃいませ。
閣下:……………
店員B:(カウンター奥にいて、閣下からは離れている)ねぇねぇ、あの金髪のお客様、すっごいイケメンじゃない?
店員C:キャ~本当♥ なんかキラキラして目立つ人ねっ!Aちゃん接客できてうらやまし~♥
閣下:…………うーむ…………(腕時計のショーケースを真剣に見ている)
店員A:お客様、腕時計をお探しですか?よろしければ、お勧めのお品物をご案内いたします。
閣下:(ぼそ)……子供の
店員A:はい?
閣下:(ぼそぼそぼそ)……子供の、誕生日の、10歳の……誕生日の
店員A:あ、あの……すみません、ちょっと聞き取りにくく……
閣下:………ええぇい言えるか―――――!!!!! 貴様代われ!!!!!
店員A:ひぃぃっすみません!!!! 私のご対応が悪かったですかっ……!
リーザ様:あ、代われと言ったのはこちらの都合でして…驚かせて申し訳ありません。
店員A:(あ、あれ…?なんだか急に雰囲気が変わった…?)
もっ……申し訳ありません。少しお客様の声が聞き取りづらく……
リーザ様:えーとですね、2月に息子が10歳の誕生日を迎えるので、腕時計をプレゼントしようと思っているのですが…何かお勧めとかありましたら、教えていただけますか?(にっこり)
店員A:(イケメンの笑顔眩しい…ッ!)はっハイ!お子様向けの腕時計ですね!
でしたらこちらのケースを見ていただければ…!
リーザ様:うわあ、どれも素敵だなぁ…!パノス君、どれが似合うだろう?
店員A:10歳の男の子ですと、このあたりが。
リーザ様:うんうん、色も地味すぎないし、丈夫そうだし、イイ感じですね。値段は…
店員A:3万2千円ですね。
閣下:安――――――い!!!!!! 貴様そんな安物をあやつに与える気か!!!!!!
店員A:ひぃっっ!!!
閣下:仮にも、高貴かつ崇高なる我輩の子息を名乗るならば、このくらいの物を身につけなければ様にならんだろうが!!!! メイド!!! これの価格は!?
店員A:56万8千円です
リーザ様:いや無理ですから!!!! 今のウチの家計じゃ到底無理です!! 閣下は王宮に居たころの金銭感覚で買い物したらダメって、あれほど言ったじゃないですか!!
この間もとんでもない額のアフタヌーンティーセットと高級茶器をカードで買ったりして!!
店員A:あ……あの、お客様……?
閣下:えぇい我輩の別人格のくせに生意気な!! 我輩の高貴さに見合った茶器を買いそろえて何が悪い!!!!
リーザ様:買いそろえるのは結構ですけどちゃんと自分の今の収入に見合ったお買い物をですね…!!!!
浪路:おう、リーザ様たちじゃん。なにしてんだ?
リーザ様:あぁっ浪路さ~ん(涙)
閣下:なんだお前は!……あぁ会社の奴か。今取り込み中だ!失せろ!!
浪路:取り込み中って、店員のお姉さん困ってるじゃん(笑)
(店員Aに向かって)あっごめんねーびっくりしたでしょ?この人ちょーっと変わってるから、俺がなだめとくよ。
で、ここでなにしてんの?(店員Aから経緯を聞く)なるほど、パノス君への誕プレかー。偶然だな。
リーザ様:偶然?……あぁ、そういえば…!
浪路:前に俺、パノス君と誕生日同じ日だって言ったじゃん。偶然にも、俺も誕生日に自分用プレゼントに腕時計でも買おっかなって。
リーザ様:そうだったのですね!
じゃ、じゃあ店員さん…!さっきの、3万2千円の!それを、プレゼント用にっ…
閣下:だから安――――――い!!!!!
浪路:まぁまぁまぁまぁ閣下。3万円は小学生には決して安い買い物じゃないぜ?堂々と誇っていい贈り物だよ。きっとパノス君も跳ねあがって喜ぶぜ?
それにもっとグレードの高いものを贈りたいなら、成人した記念の時とか、結婚の時とか、そういう時のために取っておくのさ。
閣下:ぐっ……そういうものなのか
リーザ様:(ありがとうございます……浪路さん……)
浪路:さってと、俺はどういうのにしよっかな~
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リーザ様:今日はありがとうございました、浪路さん。
浪路:いやいや、別に大したことしてねーし!いいの買えて良かったな!
リーザ様:浪路さんは、気に入ったものは見つかりましたか?
浪路:うんうん、手ごろな値段でカッコいいやつあったし、いい買い物できたぜ!
リーザ様:それはよかった。……では、今日のお礼にと言ってはなんですが、今度の息子の誕生日パーティーに、浪路さんもいらしてください。
浪路:えぇ!? え、いいよ別に!家族水入らずの席に俺が加わるのもなんかヘンだろ!
リーザ様:いえいえ、大丈夫ですよ。今回は社員寮の皆で集まりますから。1人増えても2人増えても全く問題はないです!
今回助けていただいた浪路さんに、息子に今日の腕時計をプレゼントするところを、見届けてもらいたいです。
浪路:見届けるって、そんな大げさな。
リーザ様:閣下も、今日の事はすごく感謝しているみたいですしね。ぜひお願いいたします。
浪路:閣下が……そうなのか?
閣下:貴様勝手なことを言うな!!! 我輩は別に何とも思っておらん!!!!
浪路:その一人でやる兄弟(?)ゲンカ、見慣れてないと何なのかわっかんねぇよなぁ~w