――― これは、久我在素が「聖野薔薇学院初等部」の児童会役員に就任した時の話である ―――
先生:――――以上で、児童会新役員の紹介を終わります。全校集会はこれにて閉会です。皆さん、各自教室に戻ってください。
” ザワザワザワザワ……… ”
児童1:それにしても、1年生で児童会に入る子がいるなんて、びっくりだよね~っ!
児童2:なんかウワサによると、アメリカに留学して大学そつぎょうしてるとか…ほんとかなぁ?
児童1:あはは、アニメみたいな話だよね~。でもそのくらいスゴイ子じゃないと、1年生で児童会なんてはいれないのかも?
” パタパタパタパタ……… ”(速足で教室に戻っていく児童たち)
在素:(……はぁ、疲れた。変な学会とかで発表するよりも疲れたわ。本当は小学校で目立つことなんてしたくはなかったのだけれど。先生がどうしてもって言うからなぁ…)
???:あなたが久我さんね?
在素:えぇ…そうですけど。
???:私にごあいさつがありませんわよ。まったく、これだから子どもは。
在素:あなただって子どもじゃない。小学生なんだから。
???:まぁぁあっ!なんてナマイキな!
在素:ところで、どなたでしたっけ。
???:なっ………!なんて失礼な子なのっ!? さっきの紹介を聞いてなかったの!?
在素:ごめんなさいね、昨日も研究に没頭しちゃってちょっと寝不足で。
すみれ:私は……6年紅組、聖野薔薇学院初等部児童会会長を務める、学院で最も優秀かつ美女、篠宮すみれ。あなたの偉大なるセンパイよ!よーっく覚えておきなさい!
在素:自分で美女とか優秀とか偉大とか言い切っちゃう奴にあんまりろくなのいないのよね…
すみれ:なっなっなっ……なんですってぇえええ!!!!! なんて失礼極まりない子なのかしらっ!!!!
だいたいあなた、その年でアメリカ留学して大学卒業してるとか、そんなウソつき通して先生たちをだまして、よく児童会にもぐりこんできたわよね!!!!
在素:ウソ?なんでウソだって言い切れるの?なにか証拠でもあるのかしら?
すみれ:~~~~~~っっ、小学生が大学卒業するなんて、ありえないじゃない!普通は!!!
在素:「普通は」、ね…。まぁ証明するのは簡単だけど、面倒だからどう思ってくれても構わないわ。
すみれ:だいたい、なんであなたみたいな一般庶民が1年生で児童会に入れるのよ!
大会社・篠宮産業の会長の孫であり、母は世界的に有名な声楽家、伯母は大女優と大物声優というエリート中のエリートな血筋の私のような上級国民が選ばれるべきなのに!
在素:なんかどっかで聞いたような経歴……それと篠宮産業……ふーん……で、それの何がすごいの?
すみれ:!!??
在素:それってあなたのご家族がすごいのであって、あなたがすごいわけじゃないわよね?たまたま、そういうご家族のいる家に生まれてきただけじゃない。
すみれ:~~~~~キィィィ~~~~~!!!!!(言い返せなくて寄声上げるしかなくなってる)
在素:…あぁ、思い出したわ。そういえば千雪さんのところの傘下に篠宮なんとかってあったわね。そこのお嬢さんなわけね。覚えておくわ。
すみれ:!!! 千雪さん!? あなた鳥居の千雪様とお知り合いなのっ!? 私ですら年1のパーティーとかでしかお目にかかれない、あこがれのお方……
在素:知り合いもなにも、血の繋がった身内だし。しょっちゅう会ってるわよ。
すみれ:はああああ~~~~!!!?? ウ、ウソよ!!あなたみたいな子が…………ふ、ふんっ!そ、そんなこと、どうでもいいわ!ていうか、あなたみたいなナマイキなお子様、お嫁のもらい手がいないんじゃなくって!?
私には、……私にはっっ!!! すてきな婚約者がいるんですからねぇ~~~~っ!!!!!(超ドヤ顔で首からチェーンでかけている指輪を見せる)
在素:入学前に校則は頭に全部叩き込んだけど、確かアクセサリー類の着用は禁止じゃなかった?
すみれ:うるさぁぁぁあい!!!!! これは婚約指輪なんだから!!!!! 私のカラダの一部!!!!だからいいの!!!!!
在素:ふぅ~ん……よく見ると、婚約指輪にしては安っぽい指輪ねぇ。
すみれ:どこまで失礼なのあなたは!!!!! これはお兄様が私に贈ってくださった、世界にひとつしかない大切な指輪なんだから!!!!!
(背後に従えているメガネの取り巻きの二人が声をかける)
メガネ1:篠宮会長、そろそろ、そのご婚約者と会食のお約束の時間が。
メガネ2:お約束の時間まであと5分です。今日は会長就任のお祝いに学校まで駆けつけてくれるとのことでしたよね。
すみれ:!!! きゃぁっ!もうそんな時間!? こんな子にかまってる場合じゃなかったわ!
……ちょうどいいわ、久我さん。あなたついていらっしゃい。私の、とぉぉっても素敵な婚約者を紹介してあげるわ!
在素:別に、いらないけど。無関係だし。
すみれ:いいから来るのよぉっ!!!!
在素:(自慢したいだけか……あぁ面倒くさい)
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(校門前)
すみれ:いいこと!? 私のお兄様は、すっごいイケメンですっっごいカッコよくてすっっっごい優しいんですから!!!!! 好きになったりしたら、承知しませんわよ!!!!!
在素:好かれたくないなら会わせなきゃいいじゃない。
すみれ:(スルー)あっ、いらっしゃったわ!お兄様ぁぁ~~~~~♥♥♥♥
初南賛:あれ?在素。なんで?
在素:初南賛さんじゃない…………世間て狭いわね、本当に。
すみれ:何!? なに!!?? ナンナノ!!!??? 名前呼びすてなんてされてなんなのよぉぉぉあなた!!!!!!(在素に掴みかかろうとする)
初南賛:お、落ち着いてすみれちゃん……在素は別に、ただの友達?だよ。
在素:正確には初南賛さんが私の父の勤務先に勤めてる、ってだけだけどね……まぁ友達と言って差し支えないかもね。
ところで、このマウント取りたがりお嬢さんは、初南賛さんとどういったご関係?
初南賛:従妹だよ。すみれちゃんは、母の妹の子で。
在素:なるほど、そういうことなのね。私は……すみれさんの所属する児童会に、同じく所属することになったってだけだけど。
初南賛:だから一緒に出てきたのかぁ……って、え!? 在素まだ1年生なのに児童会!?
在素:そうよ。まぁ先生に言われて仕方なくだけど。
初南賛:はぁ~~……さすが天才児……
すみれ:~~~~~っっっちょっとっ!!! 私を差し置いて、なにふたりで和気あいあいと話してるのよっ!!!! お兄様は……
在素:そういえば、彼女と婚約してるんですって?
初南賛:いや無いから(0.1秒)
すみれ:(ガ――――――――――――ン!!!!!!)
そそそそそんなウソよお兄様!!!! ここに婚約指輪だってあるのに!!!!!(首から下げてる指輪を見せる)
初南賛:うわそれまだ持ってたの…!? それ僕が中学生の時に、一緒に行ったお祭りの露店かなんかで200円だか300円だかで買ってあげたやつ……
在素:そんなことだろうと思った。子どもの思い込みって怖いわねぇ。
すみれ:あなただって子どもじゃない!!!! ひどいわお兄様!!!! 信じてたのにぃぃぃ~~~~!!!!!
(泣きながらなぜか校舎へ戻っていく)
初南賛:ええぇ………困ったな、タクシー待たせてあるのに………あとで叔母さん(すみれの母)に呼んでもらうか………
在素:子どものお守も大変ね、初南賛さん。
初南賛:ま、まあね……(在素にそう言われるの、なんか変な感じだな。。)