(都内、某一時保育施設。午後7時)
保育士1:遠山さん、遅いわね~。遅くなるとは言っていたけど。
保育士2:そうねぇ。でも子どもたちも、ぐずったりはしていないし、大丈夫そうね。
保育士1:なんでも、自分のお母さんが経営してる喫茶店がイベントで忙しくなったと思ったら、自分の会社も忙しくなってきて、子どもまで手が回らなくなっちゃったとか。
保育士2:お父さん…ダンナさんも、忙しいのかしら?まぁ、まだまだ男性の子育て参加は発展途上だけどね、この国は。
” キンコ――――ン ”
保育士2:はぁ~い
保育士1:遠山さんかな?
渉:どうも、お世話になります。遅くなって申し訳ありません。
保育士2:どうも、いらっしゃいませ。……えーと……(託児室には遠山さんの子たちしかいないけど…)
渉:あ、すいません。遠山 昴と全を迎えに来たんですが。
保育士2:いつもの……お母さまじゃないのですね。(以前、ダンナさん来たことあったけど、こんな顔じゃなかった気が…)
失礼ですが、遠山さんのお子さんとどういった関係でしょうか?
渉:祖父です(きっぱり)
保育士2:なんて?
渉:おじいちゃんです!(きっぱり)
保育士2:(どうしよう……変な人来ちゃった……)
昴:あ―――――っ!わたるちゃんだぁ!おむかえ?おむかえ!?
保育士2:あっ、昴くん!(この懐きよう…本当に知りあい?)
昴:あっ!おかあさん!
芹子:すいません遅くなりましたっっっ!!!! ごめんね昴!待たせちゃって………って、渉さん!?
渉:芹ちゃんお仕事お疲れさま。満くんから「遅くなりそうだから迎え行ってやって」ってLINE来て、迎えに来たんだけど。
芹子:えええぇぇ?満ってば…!お迎えは書類で申請してる家族しかできないことになってるから、別の人が行くとスタッフさんに迷惑かけちゃうのに!
渉:うわぁ、そうだったのか~!
芹子:そうですよ、今は物騒な世の中ですもん。見ず知らずの人に大事な子どもをうっかり引き渡したりしちゃったら、大変ですし!
昴:おかあさんおなかすいたー!かえるぅー!! わたるちゃんもかえろ!
保育士2:(家族であることには間違いなさそう……ね?)お、お迎えありがとうございます!全くんも連れてきますね。
(バタバタと慌てて全を抱きかかえてくる)
渉:全く~ん♥すっかりよく寝ちゃってるねぇ。起こすのかわいそうだなぁ。しかし寝顔がもう最強の天使!って感じ!う~ん、孫の寝顔はいつまで見てても飽きないなぁ♥
芹子:^^;・・・・
全:………うにゅ………?
芹子:あら起きた。ご飯食べさせなきゃだし、ちょうど良かった。
渉:あ、芹ちゃん!お迎え来る家族に僕の名前も申請しておいてよ!夜なら迎えに来れるし!
芹子:え、そんな悪いですよ。渉さんだって在宅のお仕事大変でしょうし。それに忙しいのも一時的なものだから…
渉:えー、申請だけでも!お願い!
芹子:なんでそんなに…
渉:そりゃもう!「僕はおじいちゃんです!孫をお迎えにきました!」ってやりたいからに決まってるじゃないかぁ><
芹子:^^;・・・・・・・・
渉:ねーっ昴くん!昴くんもたまにはおじいちゃんに迎えに来てもらいたいよね!?
昴:んーんべつに
渉:ガ━━━(;゚Д゚)━━━ン!!
保育士2:あっあの……この方は、ダンナさん……では、ない、です、よね……?確か……
芹子:え、あぁはい。主人ではなく……
渉:おじいちゃんです!(きっぱり)
芹子:…………渉さん、保育士さん困惑するから、やめてくれますか?
渉:え~!?
保育士2:(困惑している)
芹子:……えーとですね、彼は……
渉:おじいちゃんです!
芹子:黙れ
渉:(´・ω・`)
芹子:私の実の母の、再婚相手でして……まぁ、戸籍上は確かに子どもたちの祖父にはなるんですけど……年は私と同い年でして
保育士2:そ、そうだったんですか…!
芹子:それじゃ、どうもお世話になりました。……混乱させちゃってすいません。では。
渉:失礼しまーす
(保育施設を後にする二人と子どもたち)
保育士2:……世の中、色んな家族構成の人が、いるわよねぇ……
保育士1:ああして見ると、普通のお似合い夫婦にしか、見えないんだけど……
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渉:実際は僕はみんなよりずっとずっとずーっと年上なんだから、おじいちゃんって呼んでくれてもいいじゃないか――――――っ><;
芹子:それ言うとさらにややこしくなるから、やめてください。