(梧の自室)
” バタン! ”
梧:はぁ……はぁ……焦った……兄さんに感づかれてなきゃいいけど……
ラシェル:あ、あの……
梧:と、とりあえず!(なるべくラシェルの方を向かずにタンスをあさる)……これとかこれとか今すぐ速攻で着て!じゃないとまず話にもならない!
ラシェル:は、はい!
(ラシェル、男物の大きめのスウェット上下に着替える)
ラシェル:あ、ありがとうござます…
梧:で、君は何?何者なの?猫のララなのは間違いないの?
ラシェル:………はい、私は猫のララで間違いないです。
梧:……全く……家柄のせいでこういったとんでもない現象には慣れてるつもりだけど……昔から飼ってた猫までただものじゃないなんて
ラシェル:正直に言いますと、ここに住み始めたのはつい数日前です。
梧:数日…!?
(※時系列的にはこの事件の直後)
ラシェル:大島家の皆さんの記憶を少し改ざんさせてしました。
梧:なんっ……
ラシェル:元々この家に飼い猫なんていなかったです。
梧:…………なんてこった…………(膝から崩れ落ちる)
ラシェル:えっえっ、梧さん!?
梧:(……唯一、癒しの存在だったと思っていたララが、得体の知れない生き物で、記憶を操られてたなんて……キッツいな……)
ラシェル:梧さん………
梧:………気安く、名前呼ばないでもらえる?
ラシェル:うっ………はい、すいません。
梧:代々高位の能力者の家系であるウチをまるごと騙してたなんて、君も相当な能力を持つ妖なんだろうね。
一体なにが目的?動機と事と次第によっては、一応はこの大島家の一員として、当主である母さんに君を差し出さなきゃならない。
ラシェル:ひぇぇえっ!そんな、悪気はなかったですとよ…(涙目)
梧:うまく化けてたつもりなんだろうけど、僕の「目を見た相手の本質を暴く」能力には弱かったみたいだね。
ラシェル:(ひぇっ……梧さんにそんな能力があったなんて……)
梧:………でも。
ラシェル:…………?
梧:この能力のせいですっかり人間嫌いになった僕を、君が癒してくれていたのも、事実だ。
……正直に話してくれたら、お礼として逃がしてあげないこともないよ。
ラシェル:あおg…………えと、おおしまさん。
梧:僕もまだ記憶の改ざんに酔わされてるのかな。君が悪意あってウチを騙してたようにも……見えなくて……(恥ずかしそうに頭を掻く)
ラシェル:私は……この大島家の次の当主である橘さんを監視するために、来たですよ。
梧:……橘、兄さんを?
ラシェル:ただ、監視の途中で橘さんに正体がばれてしまって……。
梧:えっ!橘兄さんは君の正体を知っていたのか!
ラシェル:けど私も、上からの命令である監視を中断するわけにもいかず、身内を味方につけることで、橘さんのこれ以上の詮索を防いだです。
梧:正体バレしたからって、その家族を丸ごと乗っ取るっていう君のやり方も、中々に大胆だね…。
ラシェル:橘さんには、正体を悟られないよう細心の注意を払ってたしたし、上手くやれてたと思うですが、私がドジ踏んでしまって。
正直、私にとっては橘さんより梧さんの能力には全く敵うことができなかったです。
梧:兄さんより、僕の方が…?
ラシェル:梧さんの、その目。恐らくある程度の妖の幻術は打破できるものかと思うます。
梧:……………
ラシェル:……………あっ!すいません!また梧さんって呼んでしまし……
梧:………いいよ。
ラシェル:へ?
梧:いいよ。気が変わった。名前呼びは構わない。君の秘密も、守るよ。君はウチの飼い猫のララだ。
ラシェル:え………私、ここにいてもいのですか?
梧:ばれないように上手くやってくれるならね。
ラシェル:………………~~~~~~梧さん!
梧:うわっ!ちょっ、苦しっ……!
ラシェル:ありがとござます~~~~っ♥♥♥
梧:(とりあえず、悪い子じゃなさそうだし……僕に、橘兄さんにも勝るものがあるなんて、意外な発見もできたしね……)
(つづく)