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奈津恵:(あら珍しい、白鳥君から電話?)……はい、もしもし。
夜半:「もしもし奈津恵ちゃん?ちょっと、困ったことになって」
奈津恵:……本当に困ってるみたいね。珍しく焦ってるような口調じゃない。
夜半:「焦ってるような、じゃなくて本当に焦ってるんだよ。瀬上先輩のことで」
奈津恵:俊幸の? 何かあったの?
夜半:「実は………」
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(約3ヶ月前)
俊幸:やっぱ、納得いかんのよ!
夜半:唐突にアポなしでウチに来たかと思えば、何にご立腹してるの。
俊幸:白鳥、お前アレや。契約だっけ?アレ、オレ俺にもしてくれ。つうか、しろ!
夜半:ええ??
俊幸:だって、考えてもみい?オレの愛しのマイスイート嫁の奈津恵がな?毎週毎週他の男んとこ行って、自分の命のためとはいえ、血ィ吸わせてんのやで?気にいらんに決まっとるやないか!
夜半:そんなの、わかりきってたことでしょ。……だから、契約破棄してもいいって言ってるんだけど。奈津恵ちゃんがそれを良しとしないからなぁ。
俊幸:そこなんよなぁ。あいつ学生時代から、お前のことは友達としてできる限り支えてやりたい感があるっちゅーか。……そこに恋愛感情は、ないとは信じたいんやが
夜半:ないよ(きっぱり)。仮にだよ?奈津恵ちゃんがほんのちょっとでも俺に気があったら、どういう行動とると思う?
俊幸:………………あいつのことや、不倫とか二股とか、そういうの絶っっっっっ対に許せないタイプやから、まずオレのこと捨ててからお前んとこ行くハズやな。
夜半:でしょ?それにたまに……いやたまにでもないな。先輩のノロケ話聞かされたりするよ。
俊幸:えっマジで!? どんなどんな?
夜半:なんで俺が君のノロケ話再現なんてしなきゃいけないの…心底だるいから本人から聞いてよ。
俊幸:えー つまんねぇなー
……ってそれは置いといてやな、契約契約!オレにも契約して!はよ!
夜半:あのさ、奈津恵ちゃんの時にも説明したと思うけど、俺との契約ははっきり言って命がけだって、言ったでしょ?
こまめに血を渡しに来なきゃいけないし、来なかったら命に係わるんだよ?
俊幸:週イチでお前んとこ来ればいいんやろ?楽勝楽勝!オレ仕事そんなに忙しくあらへんし!
夜半:上を目指す芸人の端くれがそんなこと言ってていいの…
俊幸:大丈夫大丈夫!ちょっと忙しくなったって、週イチくらいならここに来るぐらいヨユーだろ!
夜半:……そこまで言うならもう止めないけど、後悔しても知らないからね?ハイじゃぁ首筋差し出して
俊幸:うっわそうだっけ。やだなぁ野郎に顔近づけられるの。足先とかから吸うとかじゃアカンか?
夜半:(イラッ)そのまま足指噛みちぎられてもいいなら。
俊幸:いやーん夜はっちゃんこわーい♥
夜半:はあ……(重いため息)
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(そして現在)
奈津恵:ツッコミが本職のあの人が見事にボケに徹して……貴方達なにげにいいコンビになりそうよね…
……って注目するべきはソコじゃない!契約したの!? しかもそんな前に!
夜半:「だって先輩しつこいから…」
奈津恵:で、それからちゃんと社員寮に行って血あげてるんでしょうね?
夜半:「最初は言われた通り週イチで来てたんだけど…ここしばらくは来ていなくて」
奈津恵:ど……どのくらい行ってないの?
夜半:「1ヶ月は来てないかな。だから、絶対やばいと思うんだよね。契約して血を与えないでいたら、命に係わるとはいうけども、実際に相手に何が起こるかなんて見届けたことないから」
奈津恵:週イチと言われてるものを1ヶ月もサボってるの…!? でも、今朝出かける時は何でもなさそうだった……あ、でも
夜半:「でも?」
奈津恵:今日はそんなに暑くなくて、むしろ涼しいくらいなのに…やたら「暑い暑い」って言ってたわね…。
夜半:「うーん……ちなみに今日の予定は?」
奈津恵:今日は珍しく昼の仕事よ。昼のバラエティの生放送の1コーナーに出させてもらえるみたいで。
夜半:「生放送……嫌な予感がするなぁ。何時から?」
奈津恵:もうすぐよ。今から見ようと思ってたし。
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男性MC:お次は、今日午後からのお天気予報!
今日は新進気鋭の芸人さんが日替わりでお送りする「体当たりばったり天気予報」!!
女性MC:今日はどなたがお送りしてくれるんですかね?
男性MC:今日は、初登場!「瀬上坂内」のおふたりで――――――す!
中継繋がってます!瀬上坂内さ―――――ん!?
「は――――――い!!!」
奈津恵:・・・・・・・・・
夜半:「・・・・・・・・・」
(TVでは見事な放送事故をやってのけた俊幸を即座に下げ、別の映像に切り替えている。
MC達が心配するコメントを出した後、何事もなかったように番組を進める)
奈津恵:……あれはやっぱり、契約の代償なわけ?
夜半:おそらくだけど……吸血鬼の血は人間にとっては造血作用もあるから、血を与えないとキャパオーバーしてああやって暴発する……ってことなんじゃないかな。
だから、先輩に契約は無理だって言ったのに。奈津恵ちゃんは同じ会社にいるから定期的に与えやすいわけだし、同じように考えちゃダメだってことだね。
奈津恵:やっぱり、契約破棄しないとダメね。でも破棄しても命に係わるんじゃなかった?
夜半:それは君だけ。前に俺が暴走して摂り過ぎた分、こっちの血を多めに与えてるから、それ全部抜いたら危ないってだけ。
瀬上君の場合は、どうせすぐ限界くるでしょと思って、大した量は与えてないから、さほど大きな反動はないはずだよ。
奈津恵:全く……アホ俊幸。コレをきっかけに仕事がなくならないといいんだけど。
(しかし奈津恵の心配をよそに、俊幸には新たに『鼻血キャラ』としての人気を確立していくのであった。※契約は破棄。)