(昼休み、食堂)
恵莉:…そういえば…たしかきょう、人事異動のはっぴょうがありますよね。
歓子:そっか、もうそんな時期かぁー。
ま、そんな世間の流れをぶった切って3月に新部長来たりしたけどね…。
恵莉:じぎょう企画部のあたらしいぶちょうさんは、たのもしいひとですね。
歓子:そうね!仕事デキる人だし、何よりあの鳥居さんをやる気にさせた人だしね。
でも事業企画部の人も増えて、鳥居さんもそこそこは仕事するようになって、
ぶっちゃけあたしのやる仕事があんまりないんだよね…
恵莉:そうなんですか…じょうほうシステム部は、いつもいそがしいですよ。
かんこちゃん、きてくれたらうれしいんですけど。
歓子:え~あたしパソコン苦手だからなぁ…ゲームは得意だけど…
恵莉:あ、せがみ部長がきましたよ。
奈津恵:失礼します。早速ですが4月1日付けで異動になる方の
名前をここに貼っておきます。
正式な辞令は4月1日に交付されますのでご了承下さい。(立ち去る)
歓子:さてさて…誰がどこに異動したりするのかなぁ~
恵莉:あ……かんこちゃん……
歓子:ん?
恵莉:はりがみ……かんこちゃんのなまえしか、ないですよ…
歓子:えっ!?
” 下記の者、4月1日付にて、ねぎ秘密結社事業企画部より転属を命ずる。
事業企画部 三輪 歓子
所属部署 未定 ”
歓子:み、未定……??
恵莉:どういうこと……なんですかね……
歓子:じょ、冗談じゃないわよっ!あたし4月からどこに行けばいいの!?
恵莉:た……たいしょくしろということではないですし、
会社にきてもいいんでしょうけど…
これじゃ4がつからどこにじぶんの席があるかどうかわかりませんね……
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(そして4月……)
歓子:……どの部署にもあたしの席がない……一体どおしたらいいのお!?
行くあてないからとりあえず食堂に来ちゃったけど……
みゆき:ああ、お前か。転属先がわからない転属命令出された子ってのは。
歓子:あ、え!お、おじゃましてますっっ
みゆき:お邪魔も何もここは食堂。公共の場だから遠慮は要らない。
ま、ここは業務推進部のベースでもあるらしいが…
転属先が決まるまで好きなだけくつろいで居ればいい。
歓子:くつろいで…って、そんな、あたしの仕事はっ!?
みゆき:そんな事私に訊かれても困る。だが……
歓子:だが…?
みゆき:体のいい退職勧告じゃなければいいのだがな、これが。
最近は不況で社員の解雇はもちろん、仕事を与えないで
自主的に辞めさせる企業も多いらしいからな。
歓子:く……クビ……?あたしが……?
みゆき:まぁネタになりそうな変人ならともかくお前みたいな普通の罪もない女の子に
そこまで酷い事をする会社ではないとは思うが…………ん
(いつの間にかみゆきの視界からいなくなっている歓子)
みゆき:……まぁ、何を考えてるんだかなこの会社も。
歓子:…そんな…事業企画部に人が増えて、やることなくなったからクビだなんて…
仕事だって頑張って覚えて、沙織先輩みたいにかっこいい
キャリアウーマンになりたかったのに…
………ショックで思わず会社飛び出して来ちゃったけど…
…いいよね、あたしなんていなくたって……
男:そこの制服姿のかわいいお嬢さん、どうしたんだね?
歓子:え……?
男:目を真っ赤にして…可哀想に。見たところ学生というよりは会社員かな。
上司にでも怒られたかい?
歓子:い、いえ……なんでもないですっ……
男:だがそんな君の涙に、おじさんはビビビッと来たね!?
歓子:……へ?
男:この世で一番美しいものはなんだと思う?そう、女性の涙だ。
歓子:(な……なんかちょっとアブない人……?逃げた方が……)
男:どうだい君!そんな酷い会社辞めて、私のところに来ないかねっ!?
(名刺を差し出す)
歓子:こ、これって……
(続く)