[NEWS] リーザ様と杏寿さん・1

○刊ねぎ秘密結社ニュース

(情報システム部)

杏寿:はぁ………。

浪路:ん?なんだ杏寿、ハンカチなんか握りしめて、ため息ついて。

杏寿:あ、浪路さん…。実はこのハンカチなんですけど、
一昨日、社員通用口の前で拾ったのです…。

恐らく、この会社の人のものではないかとは思うのですが…。

浪路:誰のものかわからない、と。

杏寿:はい…。

浪路:まぁなー、学生じゃあるまいし、
持ち物にいちいち名前書いてる大人なんてそーいないだろうしな。

ま、テキトーに食堂にでも貼り出しておけば誰か持っていくんじゃね?

杏寿:そ、そんなこと……したら……。

浪路:ハンカチの一枚二枚、仮に盗まれたって……って、これ……。

杏寿:……すごく、高そうなハンカチ、なんですよね……。

浪路:よく見るとこれ、シルクだな…。
しかも男性ブランドもんじゃねーか。絶対高いぞこれ。

こういう紳士のたしなみみたいなハンカチ使う、ここの男社員ってーと……
……………(すごく考える)……………だ、誰かいたっけか………?

満:おう浪路、紳士中の紳士ならここにいるぜ!

浪路:黙れ、紳士という名の変態が。

(昼休み、食堂)

杏寿:(結局…一番人目のつく食堂に掲示するのが一番だと言われ、来てしまいましたが…
こんな高級そうなもの、貼り出すのはやはり、気が引けますね……)

リーザ:あの~……すみません。

杏寿:は、はい !?

リーザ:その、手に持っているハンカチ……。

杏寿:(も、もしかして !?)は、はい!一昨日、社員通用口の前で拾ったもので…!

リーザ:あぁ良かった!それ、僕のなんです。ずっと探していたんですが…。

杏寿:ほ、本当ですか!私ずっと落とし主を探していまして…良かった…!
(ハンカチを手渡す)

リーザ:ありがとうございます!(にっこり)とても大切なものなので、助かりました。

杏寿:ど………ど、どういたし、まして………
(こ、この方……よく見ると、ものすごく、綺麗……!
天使みたいな、というか……
おとぎ話から飛び出したような……
王子様みたいな……な、なんて綺麗なの……!)

リーザ:僕は、国際部のフレスリーザ・レオンハルトと申します。
お会いするのは初めてですよね。

良かったら、お名前教えて頂けませんか?

杏寿:あ……は、はい、私は、情報システム部の真北杏寿と、申します……!

リーザ:杏寿さん……アプリコットですか。
貴女によく似合う、みずみずしくて可愛らしいお名前ですね。

杏寿:∑ か、かわ………っ!!??

リーザ:杏寿さん、これからお昼ですか?

杏寿:(『可愛らしい』を頭の中でリフレイン中)
は、はわ、はい、お昼はこれから、です……。

リーザ:良かったら、お昼をご馳走させてください。ハンカチのお礼です。

杏寿:え、ええええぇぇええ~~!!?

・  ・  ・  ・  ・  ・

リーザ:(何かの会話の途中)…へぇ、杏寿さん、普段は和服を着たりするのですか。

杏寿:(少し落ち着いた)はい、祖母も、母も和服が好きで……
和服を着るのが日常的になっていますね。

リーザ:日本の和服は本当に素晴らしいです。
お祭りや、成人式などですれ違う人のものしか見たことないですが…。

今度、僕に和服を見せてください(にこにこ)

杏寿:∑うぇ !?(や、やだ変な声出ちゃった…)
ははは、はい、いつか、機会があ、あれば……。

リーザ:そういえば、ハンカチ……洗ってありましたね。

杏寿:…あ、はい!拾った時、地面の汚れが少しついてしまっていたので……。
丁寧に洗ったつもりですけど……だ、大丈夫でしたか……?

リーザ:洗ってくださった上に、きちんとアイロンがけもしてくださっていて…
感動しました。
貴女のような方を、まさに大和撫子と言うのでしょうね。

杏寿:やまとなでしこ……!?そ、そんな恐れ多い……!
(な、なんなのこの方……!次から次へと信じられない褒め言葉を、私に……!)

その後、杏寿が沸騰しそうなクサい台詞を
リーザ様が織り交ぜながら、談笑は続いた……

(翌日、情報システム部)

浪路:へぇ、あのハンカチ、リーザ様のだったのか!
まぁ確かに、あんな王子様が使ってそうな高級シルクハンカチ使うのなんて
リーザ様くらいか。納得だわ。

杏寿:無事お渡しできて、よかったです……それにしても……(ぼんやり)

浪路:ん?

杏寿:レオンハルトさん、でしたっけ……とても、お美しい方でした……。
女性である私なんて足元の足の裏にも及ばないほど、きらきらして……
笑顔が素敵で……。

浪路:はっはっはっは!リーザ様と比べようって方がまず間違いだわ!
あんなおとぎ話から飛び出したリアル王子様、そーそーいねぇって!
……なんだ杏寿、もしかして惚れたか?(にやにや)

杏寿:だ、だって……!あんな、素敵なお方にあれこれ褒められたり、
あんな美しいお顔で微笑みかけられたら……!

浪路:あはははは!まーな!大抵の女はコロッとイッちゃうだろーな!
ま、本気なら応援するけど、リーザ様はちぃーっとばっかし、クセがあるぜえ?

杏寿:と、当然……あんな素敵なお方、既にお相手がいらっしゃるでしょうし、
いなくても……高嶺の花ですし……

浪路:いやーそういうことじゃなくてなー?

杏寿:??

・  ・  ・  ・  ・  ・

(一方、国際部)

閣下:……………。

幹雄:あ、おはようございます。(今日は閣下か……)

閣下:おはよう……。

幹雄:……あの、閣下……な、何かあったんですか? 何か怖い顔して……
(まぁ、閣下は大体怖い顔してるけど…たまに気にかけてあげないと怒るからなぁ…)

閣下:……昨日、我輩が落としたハンカチを、
もう一人の我輩に届けてくれた女がいたんだが……

ハンカチを受け取ってから、奴の様子が変なのだ。

幹雄:変? 何がです?

閣下:それぐらい察しろ!中原のくせに!!!

幹雄:(;´□`) い、意味わかりませんよ !!??

閣下:……ふん……あんな地味な女のどこがいいのだがな……だが……
本気ならば、我輩が後天的に創り出した人格の、大いなる進化の一歩とも言える…

……………ううむ……………

幹雄:(何だかよくわからないけど……閣下が珍しく考え込んでる……)

(その日の夜、国際部)

夜半:(お盆休みはどこに行こうかな。さすがにそろそろ京都には行ってみたいんだよなぁ。
日本に100年近く住んでて、まだ一度も行ったことないしなぁ。
和スイーツ食べ歩きしたい………) ………ん?

夜半:『君』の方から単身、俺の元に来るなんて初めてじゃないかな。
……一体、何の用だい?

(つづく)

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