(午前5時――――とある公園)
悟史:(はぁ~~早朝はやっぱり気持ちいいなぁ~~
バスケットゴールのある公園ってあんまりないから探してこんな遠くまで来たけど、結構いいところだなぁ。ジョギングがてら、これからちょくちょく通ってみようかな~)
(シュッ……スボッ!!)← ゴールに投げてシュートが決まる音
悟史:(さて…もう10~20セットくらいやってもいいかな~。のんびりやろ。
……香澄ちゃんは子どもたちと実家に帰ってていないし……俺も行きたかったなぁ。
昨日までの仕事が忙しすぎなければ行けたのに……うう……)
(ダン、ダン、ダンッ)← 憂さを晴らすかのように荒っぽいドリブル
悟史:よっ!ほっ!……ん?誰か来た。おっはようございま~す。
オサム:おはよ~~~…って誰だおっさん、見慣れない顔だなー。
――――互いに面識がなく、ねぎ社の社員であることには気づいていないのであった――――
悟史:(おっさん――――――!?)
オサム:オレ、毎日この時間ここ使って練習してんだよね~。どうしよっか~…
悟史:んん?もしかして場所譲ってほしい感じかな?
オサム:いやいやいや、そんな、おじさんに譲ってもらうのもなんか悪いし~
悟史:(今度は「おじさん」―――――!?)
オサム:でも、今月末に区民大会があるから、練習はしときたいしなぁ。
悟史:おじさん…おじさん……
オサム:あ、そうだおじさん、オレと勝負しない?練習にもなるし。オレが勝ったら場所譲って!
悟史:……(ぴくっ)…………勝負?
そうだねぇ………それも面白いかもね。やってみる?
オサム:よっし!やってみよっかぁ!あ、オレこーみえても大会常連でいつもベスト4以内には入るチーム所属で、腕前にはちょーっと自信あるんだよね~♪
悟史:ふーん。……じゃあ、おじさんにハンデで先にボール持たせてもらっていいかな?
オサム:ふふん♪いいよ!……すぐ奪っちゃうかもしれないけどね?
悟史:おやおや、怖いなぁ~。
オサム:よーし、ゲームスタートぉ!
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(10分経過)
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オサム:………ぜぇ、ぜぇ………な、なんっ………
悟史:はい、よいっしょっと!(シュート→ スポン!とゴール)
オサム:……はぁっ、はぁ……全っっっっ然……取れねぇ……!!
悟史:やーだなーもう、ホントにベスト4とか行ったことあるの~?
こんな「おじさん」からもボールを奪えないなんて、大丈夫なのかな??(ボールを華麗にハンドリングしながらニヤニヤ)
オサム:くっ…!! めっちゃ煽ってくるし……ムカつく……!!
悟史:このままだと、ベスト4どころか、ただの「おじさん」から1点も取れずに、大会の練習もできないね~。まぁ俺は「おじさん」だし?大人だし?コートを占領するほど性格悪くないけどね~。
オサム:(「おじさん」…やたら根に持ってるな…)
悟史:さて、イイ感じに運動できたからそろそろ帰るかな。楽しかったよ、ありがと~~。
オサム:……あ、ありがとうござい、ました……(地べたに倒れ込む)
悟史:(持参したスポドリ飲みながら)っぷっは~!いい運動したなぁ~!
こんなにみっちりバスケしたの、U-18行って以来かなあ?
俺もまだまだ鈍ってないな~!あはははは~~~
オサム:!? U-18だってぇ……!? マジか……このおじさんが……
悟史:………あ、そうそう、君さ~。帰る前にひとつだけ訊きたいんだけど
オサム:は、ハイ……
悟史:何歳?
オサム:28です
悟史:(プチッ)俺と2つしか違わないのにおじさんとかおっさんとか呼ぶんじゃない――――――!!!!!!!!!!!!!(鬼の形相)
オサム:うわあああああああああああ!!!!!! 怖いよこのおじさん!!!!!!
(その後みっちり2時間、年上の者を敬う心について説教を食らわされたオサム。
そして彼らが互いに同じ会社の社員だと知るのはもうちょっと後のことである。)