(某大型同人イベント会場)
早瀬:こういうイベント…TVなどでは観たことはあるが、すごい人混みだな……
結佳:あはは……ほんと、すごい人ですよね。すいません……今日は完全に私の趣味に付き合っていただいて……
早瀬:それは構わないが……結佳が楽しいなら俺はどこでも……
結佳:あっ、あのへんかな?早瀬さーん!あっちです!(目的のものを見つけ、走っていく)
早瀬:あ、ああ。
結佳:きゃ――――――!!!!! せ、せいかちゃん♥♥♥♥
ちょ、ちょっ……カッコ良す……g………(酸欠)
星香:ふふん♪どーお?渾身のコス衣装だよん♥(バッチリ男装している)
結佳:よ……よりによって私の大好きなダークネス執事のブラックセバスチャン…ッッ
ありがとう……ありがとうっっ星香ちゃん……!!!!
早瀬:(な、泣いてる……)
星香:あっ、どーも!お兄さん。
早瀬:あー、そ、その声は……(※一応初対面ではない)
星香:石流洋品店の石流星香でーす!今日はちょっと気合入ったコスで失礼します♥
早瀬:そ、そうだな……何の格好かは知らないが……その、男にしか見えなくて……
星香:そりゃそーですよw 男キャラになりきってますからね~!
これは結佳ちゃんの好きなダークネス執事っていうマンガのキャラです。
元々悪いヤツだったけど、ある事件がきっかけで正義のダークヒーローになるっていうキャラで…
山音:おぉ~~~い!星香ちゃん!
結佳:!!!!!!!!!!
早瀬:(結佳の、今まで見たこともない、ものすごい形相に驚く)
な、なんかすごい格好の奴が近づいてきたけど……この声まさか
山音:おっ、はっちゃん達も来てたか~!よっすよっす~!
結佳:や、やまねさん……それ……その姿……
私の好きな……暗黒帝軍キルゼムオールのザンギャーク師団長……
も……もう……すごい……すごすぎです―――――!!!
山音:そそ!わかってくれてよかった!
さっすが、星香ちゃんの作った衣装とメイクだよなー!
星香:山音くんのスタイルなら師団長イケると思ってたけど、やっぱバッチリだったね~!
今日の、結佳ちゃんの好きな『ダークヒーロー合わせ』に向けて頑張って作った甲斐があったわ!
結佳:わっわたし………ふたりと一緒に写真撮りたい……!!!!!
星香:もっちろん!じゃんじゃか撮って撮って!
結佳:じゃ、じゃあ……星香ちゃん、あのポーズお願いしていい……?
あと、山音さんは登場する時のあの武器の構えを……
早瀬:(※もう全然ついていけてない)
結佳:あっ、早瀬さん!
早瀬:! な、なんだ?
結佳:スマホのシャッター押してください!
早瀬:お、おう……
(その後、イケメンダークヒーローに挟まれて感激で号泣する結佳の写真を、延々と取らされる早瀬)
山音:それじゃ、俺らこれから他のメンツと合流してイベント行くからさ~
星香:結佳ちゃん、今日は来てくれてありがとね!
結佳:星香ちゃん、山音さん、本当にありがとうっっ!!!
ふたりともカッコよかったぁぁぁ><
山音:今度結佳ちゃんも一緒にやろやろ!
結佳:あはは…わたしにダークヒーローはちょっと無理ですかね……
星香:ダークヒーローにこだわらなくても、結佳ちゃんスタイルいいからなんでもイケるって!
あ、そうそう、山音くんのお兄さんも!是非コス挑戦してみてくださいよ!
早瀬:お、俺がか…?
山音:いや~、はっちゃんには無理しょー!こーいうの恥ずかしがって着ないタイプっしょ!
早瀬:(ムッ)
山音:「我が帝国に逆らえばその身がどうなるかわかっておろうな!? 自らの行い、地獄の底で悔やむが良い!!」(決めポーズ)
結佳:きゃぁぁぁ!!! 山音さんカッコいい!!!!!
星香:あはははは!山音くんすっかりコスにハマったよねー!
あっそろそろ時間やばいよ!山音くん行こ!
山音:おっと、やべやべ。んじゃーね!二人とも~!
・
・
・
・
(会場を離れ、喫茶店で休む早瀬と結佳)
結佳:はぁ……♥(うっとりと幸せそうな笑顔を浮かべながら、スマホの写真を眺める)
早瀬:………(ちょっと面白くなさそう)
結佳:はぁ………… はっ!(早瀬の機嫌が悪そうなことに気付く)
す、すすすすすすいません!!!! な、なんかひとりで突っ走ってしまって…
早瀬:……別に、いいのだが……
な、なあ、結佳……?
結佳:はい…?
早瀬:やっぱり、君も、ああいうイベントには見るよりも参加する方が、いいのか?
結佳:あ、はい!…っていえ、もちろん見るだけでも楽しいですけど!
今日はそのっ……早瀬さんを置いてけぼりにしたみたいになってしまって、すいませんでした……。
早瀬:いや、元々興味のないイベントに、俺が付いていくって言いだしたのも悪かったし…
でも、結佳がこういうのが好きなんだなっていうのは、すごくよく分かった。
結佳:あ……あはははは……(今になって自分の醜態を思い出して恥ずかしくなる)
早瀬:それで、今日は参加はしていなかったが、参加もしたことあるんだろう?
結佳:はい!最近ちょっとお仕事も忙しくて、準備に時間も取れなそうだったので。
今度時間が取れそうなときに、また星香ちゃん達と一緒に参加する予定です!
早瀬:そうか……ふむ……
結佳:?
(週明け、会社にて。営業部の打ち合わせ用デスク)
クリス:お疲れ様デス、奥田部長。営業部に直接いらっしゃるなんて、珍しいデスね?
次郎:(ほんとに……いつも吉村部長ののほほんとした空気しか流れない平和な営業部が、一気に空気が張り詰めたみたいになってるッス……)←会話には参加していないが少し離れた自分の席にいる次郎
クリス:それで、今日はどういったご用件デスか?
早瀬:フォックス…さん。君にお願いがあって来た。
クリス:??
早瀬:色々調べたり人に訊いたりして、社内で日本のオタク文化に一番詳しいのが君だと聞いた。
お願いだ、私にアニメとかマンガのキャラクターのコスプレのイロハを一から教えて欲しい。できれば総務と人事部には秘密で……
クリス:エエエエ!?
次郎:ブ――――――ッ!!!!(飲んでいたお茶を5mくらい吹く)
(おおおお奥田部長……そういうのたぶん一番聞いちゃいけない人物に頼んでるッスよ!!!!!!)
早瀬:大して話したこともない私のこんなお願い、戸惑うかもしれないが…
(俺もコスプレマスターして、結佳に心からカッコいいって言われてみたい……!!!!)←大本音
クリス:(なんだか色々察したクリスさん満面の笑顔)
イイデショウ、ワタシの知る限りのコスプレの知識と技術を、奥田部長に伝授して差し上げマス……!!!!
次郎:(だ……誰か止めてあげてくださいッス……!!!!)