(終業前、食堂)
みゆき:さて…晩飯は何にするか…とりあえず帰りに買い物するか…
蔦子:♪~~ ♪♪~~ ♪~ (鼻歌を歌いながら何かを煮込んでる)
みゆき:…またそれを煮込んでいるのか…もう3日ほど煮込んでいるようだが、一体何を?
蔦子:蔦子特製・じっくりコトコトしこたま煮込みすぎて
なにがもうなんだかでも美味しい♪スープよ♥
みゆき:相変らずなネーミングだな……
(どこからともなく救急車の音。だんだん近づいてくる)
みゆき:ん…… この近辺で事故でもあったか……?
(救急車はなんとねぎ社の前で停まる)
みゆき:!? …この会社に停まった…誰か、急病人か…?
蔦子:あらやだ、一体誰がどうしちゃったのかしらっ!?
まさか、みっちゃんじゃないでしょうねっ!?
みゆき:……まさか……(美彦ではないだろうな……)
みゆき・蔦子:…………………
蔦子:あっ、出発したわよ、救急車。早かったわねー。
みゆき:少々気がかりだな。一応問い合わせてみるか。
(購買部に内線をかける)
美彦:『はぁ――――い!!購買部!!!!!』
みゆき:…………(鼓膜を突き破るかと思うほどの大声応対でイラッとするが、
出たのが美彦だったので内心ホッともする)
……もう少し静かに電話に出ろ。
美彦:『!!!! みゆきちゃん!!!どうしたの!?
あ、もしかして今の救急車が気になった!?』
みゆき:…あぁ…うちの給仕係がもしかしたら身内じゃないかと、心配していてな…
(自分が少しでも心配していたことは言わない・笑)
美彦:『もしかして俺様だと思った!?みゆきちゃんやっさしーい!!!
さすが俺様のみゆきちゃん!!!』
みゆき:(イラッ)
美彦:『運ばれたのは人事部の西城寺だ!!! 何だか急にものすごい苦しみだして、
吐いたりもしちゃって重篤そうだったから奥田部長が救急車呼んだ!』
みゆき:そうか。わかった。(内線切る)
蔦子:みゆきちゃん!どうだった!?救急車で運ばれたのは誰だったのっ!?
みゆき:……人事部の西城寺だそうだ。
蔦子:さいじょう………って、マイケル部長の息子さんよねっ!?
えぇ~っ…一体どうしたのかしら…
というか、それなら一刻も早くマイケル部長に連絡した方がいいんじゃないっ!?
みゆき:確かにそうだが…今だかつて、あの風来坊部長が
電話一本かけて捕まえられたことがあるか?
蔦子:う~ん、そうよねェ…部長、いっつも留守電なんだものォ…
ということは、こういう緊急時ってやっぱり、お母様に連絡するのかしらねェ?
(数時間後、とある救急病院)
亜紀:(……ジョー、どうか命に関わるような病気じゃありませんように……)
結佳:あ、あの……さ、西城寺くんのご家族の方……ですよね。
亜紀:……ええ。会社の方ですか?
結佳:は、はい!西城寺くんと同じ部署の関口と申します。
救急車で搬送する時に付き添わせていただきました。
亜紀:ありがとうございます。いつも………うちの息子がお世話になっています。
結佳:い、いえそんな…!(綺麗な人…というか、こ、この人、
女優の杜若亜紀にすごい似てる、けど…まさか、本、人…?)
亜紀:あとは、身内で対応しますので。ご迷惑お掛けしてすみません。
ここまでありがとうございました。
会社か、ご自宅までのタクシーをお呼びしますわ。
結佳:い!いえいえ!そんな!大丈夫ですっ!会社の方(※早瀬)に
既に迎えを頼んでおりますので!
亜紀:そうですか。では、何かありましたらまた会社の方に連絡差し上げますね。
結佳:それでは、失礼します…っ!(あとで早瀬さんに訊いてみよっと……)
(結佳と別れ、医師から説明を受けたあと、処置室の外で待つ、亜紀)
亜紀:………はぁ………
………ドドドドドドドド………
亜紀:………?
看護師:病院内では走らないでくださぁーい!
??:スミマセ――――――ン!!!
亜紀:…………………(頭を抱える)
??:ジョナサ――――――ン!! 大じょうb…………
亜紀:病院内では静かにしてちょうだい。他の患者さんもいるのに迷惑でしょう。
??:…………秋子…………。
亜紀:お久しぶりね。茂樹さん。こうやって顔を合わせるのは正式に離婚して以来かしら。
茂樹:……秋子ォォォ……!!!(再会に感動して涙ぐみながら歩み寄る)
亜紀:(睨む) あたしのことよりまずは初南賛のことでしょう!
茂樹:!! そ、そうだ初南賛………初南賛は大丈夫なのかいっ!?
亜紀:………腸閉塞だそうよ。緊急に外科手術が必要なほど悪くはないようだけど、
二週間ほどの入院が必要らしいわ。
とりあえず、命に関わるような病気や状態じゃないから、安心してちょうだい。
茂樹:そ、そうか……良かった……
亜紀:……良くないわよ。
茂樹:!?
亜紀:貴方、今はあたしよりも初南賛の近くにいるくせに、
どうしてあたしよりも駆けつけるのが遅いわけ…!?
あの子の親権はあたしが持ってるけど、貴方が父親なのは、
これから一生変わることのない事実なのよ…!!
茂樹:ご、ごめん秋子……
亜紀:あたしは別にいいわよ。もう、貴方とあたしは他人なんだもの。
茂樹:そ、そんな……
亜紀:あたしはもう再婚したし、貴方とは別の道を歩んでいくの。
この先、貴方と関わることも、もう無いでしょう。
茂樹:(涙ボロボロ)
亜紀:……けど、あの子の親はあたし達という事実…
血の絆は、何があろうと一生切れないの。
これ以上、あの子に、父親としての貴方を失望させないであげてちょうだい…。
茂樹:あ、あぁ……本当にごめん、秋……
亜紀:今のあたしに、いくら謝っても意味ないわ。謝って欲しいのは……
「あの頃」のあたしとあの子に対して、よ……。
茂樹:そ、そうか………(また涙ボロボロ)
亜紀:それじゃ、あたしは帰るから。
茂樹:!? ジョ、初南賛のそばにいないのかいっ!?
亜紀:貴方が居てあげればいいでしょう。
茂樹:……え……!?
亜紀:……あの子、口ではいつも貴方に対して憎たらしいことばかり言ってるけど、
内心は相当、貴方の事を気にしてる。母親であるあたしが、妬けるほどにね。
たまには父親の良いところ、見せてあげなさいよ。
茂樹:秋子……
亜紀:言っておくけど、あの子が自分から望まない限りは貴方に親権は譲らないから。
それじゃ。
茂樹:………秋子!!!!
亜紀:………何よ。
茂樹:復縁とまでは勿論、言わないけど……昔みたいに、戻る事は……
亜紀:無いから。
茂樹:!!!!(更に涙ボロボロ)
亜紀:戻れるとするなら…強いて言えば、貴方はあたしの幼馴染だった、というだけだわ…
・
・
・
初南賛:………う………
茂樹:初南賛 !!
初南賛:……お、父……さん……?
茂樹:初南賛…!! だ、大丈夫かいっ……!?
初南賛:……気持ち悪い……
茂樹:何も心配しなくていいから、ゆっくり寝てなさい…!
初南賛:…………
(うろ覚えだけど…救急車乗せられて…たぶん、相当時間は経ってるだろうな…
お父さん、よくここにすぐ駆けつけてきたなぁ……お母さんは、来たのかな……
いや………お父さんとお母さんが揃うことなんて、ないよね………)