(ここは、『あの世』と『この世』の間はざま――――)
司:今年も来たぞお盆!会社から解放されて家に帰れる日!
……ってなんでカメラまわってんの?え?お盆を毎年恒例コーナーにする?
っんだとーふざけんなよ!それじゃお盆も仕事してるみてーじゃねぇか!
しゃーねぇなまあいっか!
去年はなんか、社員の関係者…関係霊?が集まってお祭り状態になったけど、
さすがに今年はそうそう集まらんかー。ってか集まられても収拾つかなくなるからいいけど!
でも誰かしらに会わないとこちらとしてもネタにならねぇなー。
???:うっ……うっ………ひっく、えぐ………
司:ん?なんだ?なんかいい歳したあんちゃんが体育座りでめっちゃ泣いてる。
まさか会社の関係霊………?
司:いやマジで誰。わからん。
???:ひっぐ、ぐぇ、ううう………
司:でもこれを放っておくのも、なんかおれが冷たい奴みたいで嫌だしなあ…。
……もしもーし?せっかくのお盆なんだから、さっさとお家に帰ったら?
???:……ひっく、ど、どうぜ、ぼぐなんで……
司:(めんどくさそうだ……)
う、うーん、まずは泣きやもうか!? ほーらベロベロバー!いないいないばあ!うちのばあちゃんまだ生きてるから居る居る婆!
???:…………ぷっ、あはははははははははは!
司:よし!ウケた!
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司:はいというわけで今日のお客様は泣きじゃくり兄ちゃん!
???:お客様!? え、えっと……
司:あーゴメンな? ハイではお兄さん!お名前と享年(亡くなった年齢)教えてもらっていい?
???:ぼ……僕は、ローレンツと申します……30歳です。
司:(ホントに誰だー!?)ローレンツね、………えーっとロッつん!よろしくな!
ローレンツ:?……あ、はい。よろしくお願いします。
司:んじゃ早速だけど、言いにくいかもだけどロッつんは家にも帰らずなんであんなに泣いてたんだ?
ローレンツ:……………うっ(涙ぐむ)
司:ハイこの話終了!ご、ゴメンなー!? 普通に言いたくないわな!?
ローレンツ:………妹に、会いたくて。ここまで来たけど、でも……会えなくて……
司:妹いんのかー!なんで会えないんだ?見つけられなかったとか?
ローレンツ:いえ、この先にいるのは、分かってるんです…けど、僕なんかが会う資格がない、ってふと思い出してしまい……
司:なんで会う資格ねぇんだよ?
ローレンツ:妹は、僕が殺しましたから。
司:おおっとおお!!?? そういうアレ!? ……ん、でも待てよ、この先に「いる」って…
ローレンツ:妹は、生まれ変わっています。いえ、正確には……
司:?
ローレンツ:……ともあれ、妹はもう別人。僕の事なんて覚えていないでしょうし、今さら会ったところで……ぐすっ
司:ううう……なんて声をかけてやりゃいいのかわからんな……ま、まぁせっかくここまで来たんなら、実家にでも行ったらどうだ?
ローレンツ:実家は、妹を殺して僕も自害した後に、取り潰しになりました。今はもう何も残っていません…
司:ヒィン…
ローレンツ:そう、だから……ここで泣いていたって、何にもならないのに……どうしても諦めきれないんだ……!あぁ、ティナ……!!!(妹の名前と思われる)
司:そ、そっかー、まあほどほどに泣きまくって発散したら帰れよ~。んじゃな~……(そぉ~っと立ち去る)
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司:いやー、世の中いろんな奴がいるもんだわ。ってかなんであんな奴にこんなとこで会ったんだおれ?やっぱ会社の関係霊……ってか、あの髪色とか、どーっかで見たような気がしなくもねぇんだよなー。
ま、あんまり深く考えないでおこ……闇深そうだし。