[小説]N.H.Kエアコン争奪戦!!(4)

小説/本文

それから、数日後。

あの騒ぎのおかげで、結局勝負がつかず、
「沢井英司杯争奪 肝試しスーパーオリエンテーリング 1999 in Summer」は、
ノーゲームに終わった。
エアコンは、結局みんなでお金を集めて買うことになった。

そして倒れた橘は。
由美子にさんざん心の中や記憶を探られたせいか、
脳波に異常が見つかり、意外にも1ヶ月の長期入院となってしまった。
大事には至らないようだが。

「…ホレ、百武愛子から預かった仕事のメモ」
「…あ、ありがとう。継人」
継人は、病院から自宅が近いせいか、
橘の見舞いが日課になってしまっている。

入院している間は、愛子が一人で購買部を仕切っている。
が、所詮役割が違うため、分からないことだらけなので、
分からないことをメモに書いて、
継人に預け、橘に渡してもらい、その答えを橘が書いて、
再度継人が愛子に渡す、といったことを繰り返しているのだ。

「…にしても…面白ぇほど、誰も見舞いに来ねぇのな」
「そりゃ、みんな忙しいから…毎日って訳にもいかないよ」
入院したばかりのころは、みんな、次々と見舞いに来たものだ。
半ば面白半分だが(笑)
誰も見舞いに来ないことなど、
橘にとっては別に気にとめることでもなかった。
ただ、ひとつだけ……
みはるだけが、まだ一度も見舞いに来ていないのである。

「あと1週間くらいで退院だっけか?」
「うん…」
橘は、毎日見舞いに来る継人に、
「みはるちゃんはどうしてる?」と
聞きたくてたまらないのだが、
なんとなく恥ずかしくて聞けないでいるのだ。

由美子にとり憑かれていたとき、橘の意識は消えていたが
とり憑かれている間、自分が何をしたかは、実は何故か覚えている。
ハリーのことは、時々殴ってやりたくなる時があったし、
英司は、奇妙なフィギュアを持ち込むのがなんとなくイヤだと思った時もあった。
久我に至っては、殴って当然のことをされたのだが(笑)
そして、みはる…
(……あれはまずかったよなあ……
成沢さんが間に入らなかったら……どうなってたんだろう……)

「…じゃ、オレは帰るぜ」
用を済ませた継人は、さっさと病室から出ていった。
「うん、ありがとう。継人」

継人が病室のドアを開けると…
ドアの陰に人が。
(…やっと来たか…)
その人は、継人を見ると、黙ってそのまま病室に入った。

橘は、愛子のメモに返事を書いている最中だった。
「…大変そうだな…百武さんも…
退院したらおわびしなきゃ……」

「……橘くん」

「!!!」
メモを書くのに夢中で、目の前に人がいることに
気づいていなかった橘。

「……みはるちゃん……」

橘は、みはるにお茶を入れてもらい、
なんとなく気まずそうに、一口飲む。
みはるの入れたお茶の味に、
しばらく行っていない会社を懐かしく思った。

「…な、なんだか、久しぶりだねえ…」
みはるも、なんとなく気まずそうに口を開く。
「そ、そうだね…」
「そういえば、もうすぐ退院するんでしょ?よかったね」
「あ、ありがとう…」
ありきたりの会話を少し交わした後、
しばらく沈黙が、続く。

「……あの時は……びっくりしちゃった……」
そう言って、みはるは顔を真っ赤にする。
「あの時」とは、もちろん、
橘が由美子にとり憑かれていたときに、
みはると抱きしめて告白寸前までいったことである。
どうフォローすれば良いものか。
「あれは…確かあの『由美子さん』ってユーレイが
やったことなんだよね……でも、由美子さんは
『橘くんが思ってることをやった』って言ってたよね…?」

「…………………」
橘は冷や汗ダラダラで金縛り状態である。
そして、またしばらく沈黙が続いた。

なんとなく、この場所にいづらくなったみはるは、
「…ごめんね。今日はもう遅いし、もう帰るね…
また、お見舞いに来るからね!」

と言い残し、立ち去ろうとする。

(ここまで来て、言わないわけには、いかないよ…!!!)

みはるが立ち去ろうとしたのをきっかけに、
決意が固まった、橘。

自分から離れていこうとしたみはるの腕をつかむ。
「!……な、なに…?橘くん…」

「……ずっと、好きだったんだ……君のこと……」

タイトルとURLをコピーしました