[小説]微笑の暗殺者(終)

小説/本文
Silhouette of maniac with knife in hand in long dark creepy corridor, horror psycho maniac or serial killer concept, toned

1ヶ月後。

「…桐島さんが来なくなってから、もう1ヶ月か~」

屋上には、満と浪路、継人がタバコを吸いに来ていた。
少し離れたところに、芹子と眞妃、ハリーもいた。
「ああそうだ、仙波。オレお前に聞こうと思ってたんだけどよ」
突如、満が継人に問う。
「…何だよ」
「お前さ~、胃に穴開けて入院してたじゃん?
よく2日3日で退院できたな~
普通、胃に穴開いたら少なくとも2,3週間は入院だろ?」

「知らねぇよ。いいだろ?治っちまったんだから。
オレは昔からキズとか病気の治りが妙に早ぇんだよ」

「……まさか……」

突然、何かを思い立ったかのように、浪路が継人を見つめる。
「そのまさかだよ~?浪路くん……フフフフ……」
「うおわああっっ!!??」
突然背後から不気味な声が。恭一郎である。

何やら話を始めた恭一郎の元に、芹子と眞妃、ハリーも近づいてくる。

「…説明しよう。桐島くんが昼休みにみんなにお菓子を食べさせて
眠らそうとしただろう?あの日の朝、私はみんなが毎朝、
みはるくんに入れてもらって飲むお茶の葉に、これを混ぜておいたのだよ…」

そう言って、恭一郎は白衣のポケットから
一つの小さなアンプルを取り出す。
「…それ…カズさんの手首に塗った薬?」
「そう………これは仙波くん、君の血液から作られたものだ」
恭一郎の発言に、一同の視線は継人に集中する。
「お……オレぇ!!??」
「君は素晴らしい体質の持ち主だ。尋常でない治癒力を持ち、
どんな強力な毒に侵されても軽症で済んでしまう抗菌体質。
おそらく一億人に一人といるかいないかの
奇跡の人間だよ……フフフフ……」

「…抗菌…体質だとぉ…?」

恭一郎が自分を付け狙うわけが、今やっとわかった継人は。
自分の体質を呪うわけにもいかず、わなわなと拳を震わせていた。

「……そうだったのですか、久我博士!」

久しぶりに聞く、あの声に。
一同は声のした方向を向く。
上総である。
「カズさん!!」
「桐島さん!!」
上総の元気な姿に、一同は笑顔で迎える。
だが、その歓迎をよそに、上総は突然、
土下座をし、地に頭をこすりつける。
「久我博士、皆さん、本当にご迷惑をおかけしました…!!!」
土下座して震える上総を、芹子がなだめる。
「ちょ、ちょっと桐島さん!もう大丈夫よ!!
みんな、気にしてないから!!ねぇ?」

「そーだよカズさん!だいたい久我ちゃんに復讐しようなんざ、
むしろイイ度胸してるぜ~!はっはっは!!」

「っていうか、キレた桐島さんもカッコよかったわン♪」
「みんな、わかってますよ。桐島さんが悪い人じゃないって事。
だから、頭を上げて下さい」

眞妃が優しく言う。
「……み……皆さん……」

”キ~ン コ~ン カ~ン コ~ン… ”

昼休み終了のチャイムが鳴る。
地べたに頭を付けすぎて、額をすりむいている上総。
そんな上総に、恭一郎が手を差し延べる。

「さあ、仕事を始めようじゃないか」

END

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