[小説]千葉湯けむり殺人事件(2)

小説/本文

その頃、この物話に今まで唯一登場していなかった
遠山 満は…

「あ~いいねェ!温泉は何回入ってもいいねェ!」
本日三度目の入浴をしていた。
この旅館は24時間、温泉を開放しているのである。

よほど気分がよいのか、彼は歌い始めた。

「ワルサ~P38~
 この手の~中に~ィ~
 抱かれた~ものは~全て~消えゆく~ゥ
 さだめ~なのさ~ルパン~三世~~ィィィ~」

何故かルパン三世Part2のテーマである。
何だかんだ言って彼はいい年であった。
(若い読者にはわからないかも、ごめんなさい)
その時…

チャポー……ン

誰かが温泉に入ってきた。
湯気で人影しか見えない。誰だろう?
満は、目を凝らしてよーく見てみた。
な、なんと、芹子である!
ここは混浴だったのか!?

酒の飲み過ぎで泣き疲れた芹子は、
気晴らしに温泉に入りに来たのである。
どうやら芹子は、よほど疲れているらしく、
満の存在に気がついてないらしい。

ここは、男・遠山満、のぞくしかない!
行け!満!!

だが、湯気がすごくて、残念ながら顔くらいしか
確認できない。
(ああもう、邪魔!湯気!)
必死でのぞこうとした。…しかし…

(ここで芹子に見つかったら殺される…っていうかもう会社行けないわな…)
しかたなくあきらめて、こっそり風呂を出ようとする。
見つからずに無事脱衣所入り口に到着。
だがなんと!
脱衣所の入り口の戸が開かない!!
どうする!?
このままでは芹子に殺されてしまう!!

その時!!
「み~つ~る~」
芹子に見つかった!!
このままでは殺される!!
「ち、ちがうんだ。これは何かのまちが…….」
「問答無用!!」
ビシバシッッッ!!
芹子のビンタが炸裂した!
「ぎゃぁ~~~~~~~!!!」
満は湯に落ちた….っていうか落とされた。
「・・・・っぷはあぁぁっ!!!」
満がやっと浮き上がる。それを芹子が持ち上げて・・・・・湯に落とした。
「ぐあぁぁぁぁ・・・!」
ドッポオォォォォォン!!
(・・がぼごぼげぼほ・・・!!)
「・・・・っぷはあぁぁっ!!!」
再び満が浮き上がる。それを芹子が再び持ち上げて・・・・・再び湯に落とす。
ドッポオォォォォォン!!
(・・ぐばげべぬぼほ・・・!!)
「・・・・っぷはあぁぁっ!!!」
またも満が浮き上がる。それを芹子がまたも持ち上げて・・・・・やっぱり湯に落とす。
ドッポオォォォォォン!!
(・・げればぬうひゃっほげぼぺぃっ・・・!!)
「・・・・っぷはあぁぁっ!!!は!?」
満が見ると芹子の目は座っていた。
何をやっているのかモーローとしていて自覚が無いのだ。
「芹子やめっ・・・・うぁぁっ!!」
ドッポオォォォォォン!!
(・・おっぽれうがべろれりょなべりんっ・・・しっ死ぬ!!死んでしまうっ!!)
結局このアトラクションは酔っ払い芹子が上がるまで125回繰り返され、
その後入って来た酔っ払い眞妃により、
さらに218回続けられたのだった。
その後、酔いがさめた芹子と眞妃は、
「あら、どうしたの?遠山さん」
「な、なにやってるのよ、満……」
と言った。
「ぼばべばばばっばっぶばぼ!(おまえらがやったんだろ!)
と、水中で満はさけんだ。
酔いがさめた後も、芹子と眞妃は
「おっもしろーい!!」
と、25回ぐらいだろうか、殺人的アトラクションを続けた。

ちなみに、芹子と眞妃は、温泉入浴の究極の邪道、
水着着用にて入浴していたので、
満は二人の裸を全く拝めなかった。
哀れ…遠山満。

殺人的アトラクション終了から2時間後。
悟史と英司の二人は、どうにも眠れないらしく、
浴場にやって来た。
そこには…
女二人の殺人アトラクションにて
へろへろにされた満が倒れていた。全裸で。
そんなことがあったとはつゆ知らず、悟史はのんきに
「まんちゃん…なにやってんの?んなとこで寝てたら風邪ひくよ~」
そう言い残し、二人は温泉を満喫し、
去っていった。

…誰か、助けてあげなさいよ…(神の声)

そういえば何げに登場していなかった
ハインリヒ=明=相原は…
「んもう~何だか隣の部屋が騒がしいわねえ~
夜更かしは美容の大敵なのよンっ

ハインリヒは眞妃達の隣の部屋で、満と同室であった。
ピンクのパジャマにナイトキャップ。
テーブルには化粧水と乳液、そしてパック。
とても男とは思えない、恐ろしげな光景だった。
彼は、鼻歌を歌いながらパックをしていた。
「うふふん♪これでお肌ス・ベ・ス・ベ♪」
何だかとてもご機嫌の様子である。
だがその時!

ズズゥゥーーー………ンン……

窓の外で、何か、重いものが倒れる音がした。
音の感じだと、並大抵の大きさの物ではない。
「あら、何かしら~もうっ」
彼は窓の外をのぞいてみる。

「んなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
驚愕するハインリヒの顔面からソノコ印の白面パックが剥がれ落ちた。
彼(?)が驚くのも無理は無い。窓の外では千葉名物、
身長57メートルの『千葉の女神』が横倒しになっていたのだ。
「たたたたたた大変よぉぉぉぉ~~~~~~~~っ!!!」
ハインリヒは急いでファンデーションだけ塗りたくると、廊下へ飛び出した。
曲り角で出会った眞妃が反射的にアックスボンバーの体勢に入るのを押しとどめて言う。
「まっまっ眞妃ちゃん!窓見て窓っ!!」
「ん~・・?窓?」
眞妃が窓の外を見た瞬間。
「きゃぁぁぁぁぁぁっ・・・・・」
どこかで女性の悲鳴が上がった。
「な、なに!?」
眞妃とハインリヒは急いで声のした方に走った。

着くと女性が倒れていた。
「だ、大丈夫!?」
眞妃は女性に駆け寄った。
すると……..
「あっれ~?どうしたんですかぁ?」
みはるである。
みはるもさすがに驚いた。
「みはる!救急車呼んで!早くっ!!!!」
眞妃は、みはるにたのんだ。
「う、うん!!」

ところで、なぜ眞妃は遅く来たみはるより、一緒に来たハインリヒにたのまなかったのか。
「も~、眞妃ちゃんったらどこにいったのぉ?ま、いいわ。
 部屋にもどってソノコ印の白面パックの続きでもしましょっ!」
ということで、先に帰ったのでいなかったのだ。
(そりゃぁたのめんわ。)

倒れていた女性は、救急車で運ばれていった。
その後の情報では、命に別状はないようだ。
ただ、頭部に鈍器で殴られたような跡があったらしい。
「こわいねえ~今夜はいろんなことがあるね」
次々と起こる怪奇事件に、みはるは
全く緊張感の無い口調で言う。
「あれ、あんたそういえば大島くんの部屋に
行ってたんじゃないの?大島くんは?」
「え?知らないよー?酔っぱらってて
気がついたら廊下で寝ちゃってたんだもん、あたし」
「おーい、みんな何してんだ?」
そこに、遠山・吉村・沢井・ハリーの4人が
女社員3人のところへ来た。

そこで吉村と沢井の二人は、さきほどの
眞妃のミカン丸飲み事件を
思いだし、思わず笑ってしまう。
眞妃のスペシャルスクリューパンチが
二人を撃沈。

「おまえら、橘知らねーか?」
「知らないよー、あたし達も今その事話してたの」
「どこいったんだ?あいつ」

「大変だぁぁぁっ!!」
廊下を走って来るのはほかならぬ橘だった。
「どうしたんだ?橘。」
満が聞くと、橘は息を切らしながら答えた。
「外っ!外にっ・・・!!」

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