数日後。
みゆきの父の葬儀が執り行われた。
彼女はこの日、涙も見せずに喪主を務めた。
葬儀には、父の会社関係の人間や、みゆきの学生時代のクラスメイトなどが多く訪れた。
驚いたのは、柴田家の血族や親戚関係の人間が一人も訪れなかった事だ。
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葬儀を終え。
斎場の近くの公園を、喪服姿の美彦とみゆきは歩いていた。
「私の両親は、二人とも施設で育ったらしくてな。親戚縁者は一人も居ない」
美彦が不思議に思っていた事を、みゆきは読み取ったのか。
何の前触れも無く語り始めた。
「だから……私は一人きりになったわけだ」
「一人じゃない!! 柴田ちゃんには俺様がついているっ!!!!」
そう断言する美彦。いつもの大声で。
みゆきは、呆れた顔をして「冗談じゃない」と一蹴する……いつもなら。
この男とは、この先、自分がどこへ行こうともきっと出会う気がする。
誰にも告げずに世界の果てに行こうとも、たどり着いたらこの男が待っている気がする。
きっとそういう因縁なのだろう。
だが今回、その因縁によって救われた事もあった。
「そうだな」
「ん!?」
「お前がついていなかったら…あの時、私はきっと…」
「え?何?」
「私にはお前が必要なんだと思う」
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それからの季節を、美彦とみゆきは共に過ごすようになった。
そして……翌々年の3月。
「嫁に行かないというのが……父との約束だから」
「なら俺様が婿に行けば良いのだろう!? ハーッハッハッハ!!」
「………お前は悩むとか迷うとかいう事を知らないのか?」
二人は籍を入れ、柏葉美彦の姓は『柴田』となった。