[小説]正義が禁忌を犯す時(プロローグ)

小説/本文

ある日曜日の夜。

 ドカッ!!
「っだぁっ!!」
TVを見ながら横になり、うたた寝していた柴田美彦の頭部に、
妻・みゆきの蹴りが炸裂した。
「起きろ、飯が出来た。」
「な、何も蹴らなくても……」
頭をさすりつつ、食卓に着く美彦。
「休みだからって寝てばかりいるな、阿呆。」
「えぇっ!? 寝てばかりじゃないって!!
だって俺様今日、洗濯してゴミ出しして買出し行ってトイレ掃除して
玄関掃除して布団干して寝室の電気取り替えて和室の障子張り替えて
車のガソリン入れて洗車してビデオの録画までやったのに!!(泣)」

半泣きで反論する美彦。
どうやら休日の柴田美彦超部長は、妻にこき使われる下僕と化すらしい。
「分かったから早く食え。冷めるぞ。」
そうあっさりと流されると、美彦はいつもの事だと諦めて、
みゆきお手製の煮込みうどん目の前にすると、
今までの苦労を全て忘れて満面の笑顔を浮かべる。
「おおお!!煮込みうどん!!!
では、いただきまぁぁーーース!!!

「阿呆、声がでかすぎる。近所迷惑だ。」
二人は暫し、煮込みうどんに舌鼓を打った。

 ”今日、午後3時ごろ、東京都○△区二丁目の路上で、
女性が突然、男に包丁のような物で切りつけられるという事件がありました。
女性は病院に運ばれましたが、全治1ヶ月の重傷です。
警察は逃げた男の行方を追っています。
ここのところ都内では、同様の事件が相次いでおり…”

「ん、ここの近所だな。
全く…今の世の中、本当に物騒になったものだな…。」

うどんを啜りつつ、落胆の言葉を述べるみゆき。
「なんてけしからん犯人だ!!!!警察は何をしてるんだ!?
こんな人間とも思えぬ悪人は、俺様の気合で引っ張り出してやろう!!!
ハーッーハッハッハッハ!!!」

「…お前の気合だけで犯人が捕まるんだったら世話無いわ。」
「でも大丈夫、みゆきちゃんは俺様が守るっっ!!!」
「だから声がでかいって言ってるだろう…」

女性ばかりを狙う、連続通り魔事件。
この事件が、後にN.H.Kと深く関わることになろうとは、
二人はこの時は知る由も無かった。

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