[小説]因縁 – Connection -(5)

小説/本文

数日後。

みゆきの父の葬儀が執り行われた。
彼女はこの日、涙も見せずに喪主を務めた。

葬儀には、父の会社関係の人間や、みゆきの学生時代のクラスメイトなどが多く訪れた。
驚いたのは、柴田家の血族や親戚関係の人間が一人も訪れなかった事だ。

葬儀を終え。
斎場の近くの公園を、喪服姿の美彦とみゆきは歩いていた。
「私の両親は、二人とも施設で育ったらしくてな。親戚縁者は一人も居ない」
美彦が不思議に思っていた事を、みゆきは読み取ったのか。
何の前触れも無く語り始めた。
「だから……私は一人きりになったわけだ」
「一人じゃない!! 柴田ちゃんには俺様がついているっ!!!!」
そう断言する美彦。いつもの大声で。
みゆきは、呆れた顔をして「冗談じゃない」と一蹴する……いつもなら。

この男とは、この先、自分がどこへ行こうともきっと出会う気がする。
誰にも告げずに世界の果てに行こうとも、たどり着いたらこの男が待っている気がする。
きっとそういう因縁なのだろう。
だが今回、その因縁によって救われた事もあった。

「そうだな」
「ん!?」
「お前がついていなかったら…あの時、私はきっと…」
「え?何?」

「私にはお前が必要なんだと思う」

それからの季節を、美彦とみゆきは共に過ごすようになった。

そして……翌々年の3月。

「嫁に行かないというのが……父との約束だから」
「なら俺様が婿に行けば良いのだろう!? ハーッハッハッハ!!」
「………お前は悩むとか迷うとかいう事を知らないのか?」

二人は籍を入れ、柏葉美彦の姓は『柴田』となった。

タイトルとURLをコピーしました