(社員寮「わけぎ」前)
継人:(はぁ……相変わらず、ここに来ると寒気ばっかして居心地悪ぃ……梧には悪いけど、今度マンガ借りる時はこっちに持ってきてもらうか……)
――――――………
継人:(……ん、何か……殺気?)
” ザッ!!!! ”(無言で何者かが襲い掛かってくる)
継人:!!!!
紅葉:っち、避けられたか。勘いいね。薄暗いし、気配も消したつもりだったけど
継人:? 誰だお前。
紅葉:あっ、ヒドいなー。覚えてくれてないのかー。
継人:………あぁ、なんか思い出したぞ。いつだかチンピラぶちのめして金スろうとしてたガキか。
紅葉:ガキとか失礼な。こう見えても19だよ、アンタのほうがガキじゃねーの?
継人:19? マジか、同い年かよ…
紅葉:へぇ、そうだったんだ。まあ年とかどーでもいいや。あんた、社員寮から出てきたってことはこの会社の関係者?
それともここの住人の知り合いかなんか?
継人:関係者っていうか、この会社のただのバイトだよ。お前こそ、この会社の奴なのか?
紅葉:バイトねぇ。僕は正社員だよ。……なんだ、こんな近くにいたんだね、僕たち。今まで気づかなかったの、笑っちゃうね
継人:お前がどこの部署だか知らねーが、お互い全社員の顔把握してるわけじゃねえだろ。会ってない社員もいて当然だ
紅葉:……(無言で次から次へと、継人に殴りかかる)
継人:くっ!……ふっ!(全て避ける)
紅葉:……あはは!やっぱ君強そうだねー!面白!
継人:(拳を全て避けながら)人ん家の庭で殴り合いする趣味はねぇんだが!? なんでこんなケンカ売ってくんだよお前!?
紅葉:(拳を何発も繰り出しながら)イイ子のふりしてぬるい生活ばっか続いてるからさー!歯ごたえありそーな奴がいたからちょっと闘ってみたかっただけー!
継人:ちっ……こないだ同様、悪趣味な奴だな!!
紅葉:これでもヤクザの息子なんでね!! ロクデナシは生まれつきってね!!
継人:ヤクザの息子……ね、別に何の落ち度もない奴に手出す趣味はねーんだが、ケンカ売られてる時点でそうとも言ってられねーか
紅葉:こんなチビに防戦一方とか恥ずかしくないの!? イケメンのおにーさん!悔しかったら拳のひとつでも返s
” ドゴッ!!! ”
紅葉:……かハッ……!?(脚で顔面を思いっきり蹴られた)
継人:……悪ィな。最近潔癖症気味で無駄な血は流したくないもんで、手より先に脚が出がちでな
紅葉:…………(しーん) ← 地面に叩きつけられた後、動かない
継人:あ……やべ、ちょっとクリーンヒットしすぎたか……?
紅葉:……げほっ、けほっ………っペッ!(口から何かが飛び出す)
………あ~~~もう!歯折れたじゃん!最悪!!!
継人:え、マジで。そりゃ悪かったな
紅葉:別にいいよ、昔のケンカで折った時につけた差し歯が折れただけだし。ってか自分で蹴っといてスグ謝るとかウケるんですけどww
僕が売ったケンカだし歯の治療代は請求しないであげる。
継人:そうかよ……で、どうすんだ。まだやるのか?
紅葉:いいやぁ。別にあんたに恨みがあるわけじゃないしね。それにいつでも会えそうな距離にいることはわかったし。
継人:会うたびにケンカ吹っ掛けてくるんじゃないだろうな
紅葉:あっはは、それも面白そうだけど、そんな頭の悪いことはしないわー。
普通にアンタと仲良くしたくなってきたかな~。
……僕は、宮川紅葉。さっきも言ったけど19歳。購買部にいるよ。アンタは?
継人:………………仙波継人。19歳。……開発研究室のバイトだ。
紅葉:ふーん。覚えたよ、仙波。ケンカ強いね。イイ友達になれそうじゃん!
継人:どこがだよ……
紅葉:気が向いたらまた遊んでよ♪ じゃーね!(社員寮に帰っていく)
継人:……なんなんだ、あいつ……


