(ここは、ねぎ社から徒歩15分圏内にあるマンション
「メゾン・ド・ヘブン」――――――)
あこ:ふう、ちょっと大掃除したらゴミがいっぱい出ちゃった。
なんとか往復して全部ゴミ捨て場に持っていかないと……
ガチャッ(隣のドアが開く)
カール:! おはようございます、マドモアゼル。今日は良い朝ですね。
あこ:お、おはよう…ございます……
(今日もなんかキラキラした服着て出てきた…この人…)
カール:おお、なんてことだ…随分と汗をかいておられる。顔も紅潮して熱がありそうですね。大丈夫ですか、マドモアゼル…!!
あこ:いえ、見ての通り掃除してゴミを運んでいてちょっと体力つかって汗かいただけですので。
あと私の名前は千歳というのでマドモアゼルっていう呼び方はできればやめてほしいです……
カール:そうでしたか……私としたことが、早とちりをしてしまい申し訳ありません。
貴女のような可憐な女性を敬称で呼ばないのはとても気が引けるのですが…ご要望とあればお名前で呼ばせていただきます。レディ・千歳。
あこ:レディはいらないです……
カール:オーララ……(片手で額を覆い「仕方ですねえ」という感じの笑みを浮かべる)
あこ:(静かにイラつく)
カール:それにしても、すごいゴミの量ですね。
あこ:今日はお休みなので、少し張り切って掃除をしたらゴミがたくさん出てしまって。
通行の邪魔ですよね。すぐにどかしますので。
カール:よろしければお手伝いいたしましょうか。貴女のその白く細い腕でその大量のゴミを運ぶのは大変でしょう。
あこ:いえ、結構です。自分でやりますので。(本音:相手が面倒くさいし)
カール:なんて謙虚な方だ。こういう重労働は私のような屈強な男にやらせるべきです。遠慮はいりません、さあ!
あこ:(うわぁんめんどくさい……誰か来ないかな……)
???:あぁぁ~んん? 通路のド真ん中塞いで何やってんだテメェら?? うぁあ?
あこ・カール:(誰!?)
???:んぁあ?なんだこの大量のゴミ!! 邪魔くせぇな!とっととゴミ捨て場持ってけやぁうらぁあ!!!
あこ:(うわ……酔っ払いさんだ……ここの住人さん……だよね……?)
カール:言われなくとも私がすぐに片づけます。昼間から一升瓶片手に酔いつぶれてる方に理不尽に怒鳴られなくとも、ね!
???:んだと……キラキラした身なりして生意気なクチ叩きやがって……テメェ……
あこ:(ああああ……酔っ払いさんがキレちゃう……)
???:よく言った!細っこいナリしてるくせにいっちょ前に言うじゃねーか!
そうだよなー!重い荷物は男が運んでやるべきだわー!ハッハッハッハ!!!
あこ:!?(何か喜んでる!?)
???:ついでに俺も手伝ったるわー! こんなん余裕だっつーぅの!!! ぅおらっしゃー!!!(ゴミ袋4つくらい抱える)
あこ:ああああ!なんだかすいませんっ!! 私が運ぶので、運ぶので!
カール:酔っ払いに見せかけて、実はとても頼りになる方だったのですね…!
私も負けずに運びます!!!(同じく大量のゴミ袋を抱える)
あこ:えぇぇ~~~!!??
・
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???:っぷはぁぁぁ~~~っ! ひと仕事したら酒が倍美味くなったぜぇ~~~!!!
カール:そんなに酔っぱらってるのに……結構まともな思考をされてるのだな……。
???:ひゃっはははははあ!休みなのに飲まねぇでやってられっかっつーぅの!
あこ:け、けど……私ここに暮らしてそこそこ経ってますけど……同じマンションに暮らしていらっしゃるの、知らなかったです…。
???:そりゃそーよ、俺きのう引っ越してきたばっかだもんよ~!ひゃはははは!! ウケるぜぇぇ~~!!!!
俺ここの管理人だから、ツラ覚えておいてくれねーと泣いちゃうぜぇ~?
あこ・カール:えぇ!?
カール:私もまだ引っ越してきたばかりですが……契約の時にお会いした管理者は別の方だったような……。
???:あぁそれ俺の兄貴!ここずっと兄貴のマンションだったんだけどよ~、なんかいきなし海外転勤になったとかゆってよぉ。
俺に押し付けてサッサとアメリカだかアフリカだか行っちまったんだよな~コレが!ひゃははははははははは!!!!
あこ:そ、そんな事情が…。ということはあ、あなたが新しい管理人さんなんですね…。お、お名前は?
???:あ?名前ェ?んー、ゆいぴっぴとでも呼んでくれぇ!ははははははははははは!!!!
ゆいぴっぴ!ゆいぴっぴ~~~だってよ~~~~マジウケんだけど!!!! ひゃはははははは!!!!!
あこ・カール:ははははは………
カール:では……ゆい、さんで良いのかな
ゆいぴっぴ:んだとテメェ!ゆいぴっぴっつってんだろがドアホ!!! 耳ついとんのかおんどれ!!!!
(カールの胸ぐら掴んでキレる)
カール:うわっなんという乱暴な!…し、失礼した、ゆいぴっぴ、殿……
ゆいぴっぴ:そ~そ~ゆいぴっぴ!ゆいぴっぴどの!殿!殿だってよ~!! ウケるわこの金髪ロン毛男!!!!
どの!殿!電柱でござる!!(電柱を指さす)ってな~!ひゃははははははは!!!!
あこ:ゆいぴっぴさんも、…メイフィールドさんも、ゴミを運んでくださりありがとうございました!
それじゃ私はまだやることが残っていますので帰らせていただきますっ!(脱兎)
カール:あぁっレディ………千歳さん!待っ………
ゆいぴっぴ:あーあー、女子はいろいろ忙しいんだな~!んじゃ金髪ロン毛男略して金男(カネオ)!ついでに一緒に飲もうぜ~!
(カールの首根っこつかんで引きずる)
カール:カネオ!? なんですかそのセンスのない名前!! ちょ、ちょっとゆい……ぴっぴさん、こ、困るんですが!?
ゆいぴっぴ:うるせー管理人命令だ!一緒に飲め!俺の酒が飲めねぇっつーのかぁ!?
カール:なんという職権乱用……!! 助けてマドモアゼル~~~!!!!
(週明け ―――――― )
あこ:(ふう…週末は大掃除して部屋も綺麗になったし、気持ちいい月曜のスタートを切れる気分。
……まあ、変な……管理人さんに絡まれてどうしようかと思ったけど。悪い人ではないみたいだし…。
あれ…?)
あこ:(わあ……綺麗、というか……かっこいい女性。こんな人同じマンションにいたっけ…?)
(目が合う)
あこ:あっ、おはようございます…!
???:おはようございます!これからお仕事ですか?お互い頑張りましょう!
あこ:は、はいっ!
(爽やかでかっこいい…!素敵な女性だなぁ…。スタイルもモデルみたいだし…
今度、お休みの日にでも見かけたら声かけてみちゃおうかな…)
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(マンションから離れた後)
???:……うっへぇ、土日飲みすぎたな……二日酔いの薬がかろうじて効いてるけど。
これから仕事に加えてマンションの管理とかクソめんどくせーけど、なんとかやらねぇとな。