浪路:(ず~~~ん……)
継人:なんだまた弟がなんかやらかしたか。
浪路:やらかしてねぇけど……なんで分かるんだよ弟関係だって
継人:「もうなんとかして」って顔してオレに近づいてくる時は100%それだろ
浪路:………八雲が、ヤバい本読んでた。
継人:ヤバい?なんか如何わしい本とか……いやあいつに限ってそりゃねぇな
浪路:なんで言い切れるんだよ
継人:(お前と一緒に住んでてそういうのに手出すわけねえだろ?という無言の圧)
浪路:(察した)
継人:で、ヤバい本ってなんだ
浪路:まぁ……普通に社交辞令として先月のバレンタインに適当なチョコあげたんだけどさー
継人:弟にも社交辞令って要るのかよ…
浪路:俺には何も言わないんだけどさ、なんか手作りお菓子の本が部屋に置かれててさー
継人:いいじゃん別に。作らせとけよ。
浪路:良くねぇよ!!! ド変態でド腹黒いあいつのことだぞ!? 何盛られるかわかったもんじゃねぇよ!!!! なんか株だのFXだの手出して最近やたら金持ってるから、もしかしたら久我さんあたりに金つぎ込んで惚れ薬とか……
継人:いや、ああいうタイプは薬ありきの愛情なんて欲しがらねぇだろ。
浪路:薬じゃなくても………なんかこう、血とか体液とかぶっこんで来そうな気もして
継人:それは………ありそうだな
浪路:だろ!? だろぉ!!?? 恐怖でしかねぇよ!!! しかも俺に隠れてコソコソやってるから実際何されてるか俺にはわっかんねーし!!!
継人:………あっ(察した)
浪路:そう、お前にあいつを監視して欲しい、ってか一緒にお菓子作りしてくれ!!!
継人:はぁ~~~~!? なんでオレがあいつとお菓子なんて
浪路:ほら、俺に日頃の感謝とかなんとかでお菓子あげたいから一緒に作ろ♥みたいなさー
継人:キモッ。なんでそんなこと
浪路:頼むよ~~~~継人~~~~!!!! お前あいつにやたら気に入られてるしお前と一緒ならあいつも文句言わないって!!!!
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(ホワイトデー前日)
八雲:ふふっ、仙波くんが俺と一緒に姉さんに手作りお菓子をあげたいだなんて。そんなこと言うなんて思ってなかったよ。
別に義理ホワイトデーを認めないくらい俺は器の小さい男じゃないからね。
継人:はぁ
八雲:姉さんにあげるのに、そんな混ぜて練って焼くだけのカップケーキの素だけでいいの?もっとこう、凝ったやつとかやってみればいいのに。
継人:奴(浪路)にあげるモンにそんな面倒くせぇもんやるかよ。適当でいいんだよ適当で
八雲:でも、キャンディを作るって言ったらさすがに止めたかもね。知ってる?ホワイトデーに贈るキャンディーの意味は「あなたが好きです」なんだってさ。
継人:あっそう…
八雲:よし、固まった。う~ん、美味しそう。見た目も綺麗だし。姉さんの好きな柑橘系のキャンディ……(うっとり)
継人:(材料混ぜるところから見てるけど、別に変なモノ入れてはいねぇ……よな?)
八雲:ん~~~ちゅっ♥ 俺の愛情込めて、できあがり!
継人:人にあげるモンに口付けてんじゃね――――――よ!!!!!
八雲:え~~、これくらいいいじゃない。せっかくの愛情たっぷりの手作りなんだから。
継人:よくねえよ!! 衛生観念上とてもよろしくねえよ!!!!!
八雲:衛生観念って、仙波くんこそ料理するのにエプロンも三角巾もつけないなんて、姉さんにあげる大事なお菓子に毛髪でも入ったらどうするの……
継人:大事なお菓子に口付ける奴に言われたくねぇし
八雲:…………毛髪、か。むしろ入れちゃダメかな?
継人:ダメに決まってるだろ限界ド変態が。
(確かにこれは見張ってないと本気で何入れるか分かったもんじゃねぇな…)
八雲:え~ダメかな~。弟の毛髪なら別に毒でもなんでもないのに。
継人:弟だろうが親だろうが子だろうが毛入り飴なんて誰が食いたいと思うんだよ!!!
お前だって、毛の入った菓子とか気持ち悪いと思うだろ!?
八雲:まあね。でもそれが姉さんの毛髪ならむしろご褒美かな……ふふ。
継人:だめだこいつはやくなんとかしないと