[小説]遠い日の慟哭(終)

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それから…

真砂の通夜、葬式を終え。
すっかり小さな箱に収まってしまった真砂の前で、
東堂家の親戚一同が、集まっていた。
「…それにしても…『とんでもないこと』になったわね」
親戚の一人が呟く。
とんでもないこと。
浪路はその言葉に、真砂が襲われたときに父が発した言葉と、
同じ印象を受ける。
「…まさか、こういった因縁がまた起こるとはな…
我々も気を付けなければ」

もう一人の親戚が言う。
「浪路は、こんな事がないようにしなさい」
最後に父が浪路に言い聞かせる。
「こんな事!?」
淡々と話す親戚達の前で、浪路が怒鳴る。
「こんな事って、なんだよ!!娘が、身内が死んだんだぞ!?
テメェら、涙の一つも流さなねぇで、何ボケたこと言ってんだよ!!」

「仕方ないだろう」
「何!?」
「真砂は掟を破り、5人もの命を奪ってしまったのだ。
これくらいでは贖罪にもならんかもしれん」

「仕方ないわよ。掟だもの…」
次々と降る冷たい言葉に、浪路は涙をぽろぽろとこぼしたかと思うと。
突然、真砂の遺骨を持ち、部屋を飛び出した。
「待ちなさい!何をする気だ、浪路!!」

「………テメェらには、ついてけねぇよ!
俺も真砂も出てく。もう2度と俺らの前にツラぁ見せるな!!!」

……それから、7年間。

浪路は、今までコツコツ溜めた貯金と、
元々裕福だった家の財産の一部を持ち出し、
その金で、実家とは遠く離れた場所に、
小さいながらも真砂の墓を建てた。
そして、猛勉強をして奨学金を貰い、
全寮制の高校へと編入した。

一度も実家へは帰ることなく。
浪路は、たった一人で、都会の街へと馴染んでいった。

そして、現在。

「……うぅ、冷えてきたな。そろそろ帰るか…」
空には、星と月が光っている。
すっかり燃え尽きた線香。

全寮制の高校を卒業し、大学に進学。
そして、N.H.Kに就職。
あいかわらず、男としての人生を送っているが、
それなりに、充実した日々を送っているつもりだ。
だが時々。ふとに思うことがある。
掟にも何にも縛られない、普通の女として生まれていたら。
なりふり構わず、思い切り恋愛が出来たら。

「…んなこと考えても、しゃーねぇかぁ!」

気合いを入れるように、言葉を吐き捨てると。
浪路はいつもの不敵な笑みを浮かべ、墓地を後にした。

END

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