[小説]因縁 – Connection -(終)

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その後、美彦は。
仙台支社勤務から本社勤務へと異動が決定し、東京へ戻ることになった。
それと共にみゆきは会社を辞め、二人揃って帰京した。

「それにしてもさ~、まっさかあんたが柏葉くんと結婚するとはね!」
東京へ越してきて2ヶ月。
中学時代からの友人、実加子が柴田家へと遊びに来ていた。
越した先が、たまたま彼女の住まいと近所だったのだ。
隣りで彼女の幼い子供が、みゆきが差し出したお菓子をかじっている。
「…そんなに意外か?」
「あったり前じゃない!
柏葉くんのこと、散々『邪魔だ』とか『迷惑だ』とか『虫唾が走る』とか言ってたクセに!
人間、頑張れば出来ない事なんて無いのね、って、柏葉くん見てたら思っちゃったわよ!」

「今もそう思うけどな」
相変わらずねぇ、と言った表情をすると。
実加子は立ち上がった。
「さて、そろそろ帰るわね。旦那が夜勤から帰ってくると思うし」
続いてみゆきも立ち上がる。
「…私も出掛ける。」
「どこ行くの?買い物?」

「いや、今日からパートの仕事を始めるんでな」

「さて…ここか」

バスと電車を乗り継いで30分。
みゆきは勤務先へとたどり着いた。
階段を登り、受付へと足を運ぶ。
「あ、いらっしゃいませ~!」
受付の女の子が元気に挨拶をする。
「今日からパートの掃除係として働く柴田だが…」

「みゆきちゃん!!??」

受付にそう名乗ると、耳慣れし過ぎてなんの感慨も湧かないあの声が。
当然、美彦である。
「どどどどど、どーしてここにいるの!!??」
「お前こそ、何…」

何でここにいる、と言いかけてみゆきは口をつぐむ。
夫の勤める会社の社名が
根岸精密から『ねぎ秘密結社』に変わった事を知らずに応募した自分も自分だが…
「…こういう因縁なんだな」
小声で呟いた。
「え、え?何か言った?」
突然仕事場に現われた妻に、うろたえるばかりの美彦。
そんな夫を見て、みゆきは。

「私がどこで働こうと構わんだろう。分かったらとっとと仕事場に戻れ。」

そういつもの口調で言い返すのだった。

END

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