【前回のあらすじ】
ある日の早朝、出勤途中に交通事故に遭った白鳥夜半。
大怪我するものの、不死身ゆえに特に手当てせずともピンピンしていた。
だが事故の相手は偶然にも奥田早瀬の弟であったために、
責任を感じた早瀬は弟を呼び出し、謝罪させようとしていた。
夜半:え。なに、この話まだ続くの?
奈津恵:いきなり話の進行に文句言わないの。(ハリセンで背中をぐりぐりつつく)
夜半:痛い痛い痛い。傷に関係なく痛い。
奈津恵:服は血だらけだけど、もう傷なんて塞がってるんでしょ?
いいから掃除続けなさい。
夜半:だから、そのハリセンは……
早瀬:ただいま戻りました。
奈津恵:あら、お帰りなさい奥田君。
早瀬:今、弟を呼び出しました。もうすぐ来ると思いますので…って、
白鳥部長、なんで掃除なんてしてるんですかっ!! 怪我してるのになんて事を!!
夜半:怪我ならもう治っちゃったよ。まぁ見た目酷いけど…
後でシャワー室借りて洗い流せば元通りだよ。
早瀬:そ…そんな…治ったなんて……
奈津恵:…まぁ、そういう事だから。白鳥さんはこういう体質だってこと、君も慣れて…
早瀬:……駄目です。
奈津恵・夜半:は?
早瀬:治ったら駄目です!! それじゃあいつに示しがつきません!!
とりあえず怪我人に戻って下さい!!!
夜半:無茶言わないでおくれよ。
奈津恵:奥田君(汗)……けど、これから弟さんが来て、白鳥さんがケロッとしてたら、
結局は白鳥さんが悪魔だって言ってるようなものよね。
夜半:バケモノの次は悪魔って。せめて吸血鬼って言って欲しいな。
奈津恵:とりあえず、治療したフリくらいはしておいた方が良さそうね。
白鳥さん、とりあえずシャワー室行って血を洗い流して
着替えて来てくれないかしら。
夜半:うー、はいはい。
(シャワーを浴びて、制服に着替えてくる夜半)
奈津恵:とりあえず適当に包帯巻いて、絆創膏貼って…あと、はいこれ。
夜半:松葉杖?よくこんなもの置いてあったね。
奈津恵:ウチは久我さんの危険な研究でよく怪我人が出るから、常備してあるのよ。
夜半:怖い会社だ。
奈津恵:あとは応接スペースのソファーにだるそうに座ってくれてればいいわ。
夜半:寝てていい?
奈津恵:駄目です^^
夜半:…………
”ピンポーン ”
早瀬:来たか…(ドアを開けに行く)
山音:まいどぉ~!那須野エクスプレスの奥田でーす♪
早瀬:謝りに来たのにそんなににこやかに入って来る奴があるかっ!!
山音:もー、はっちゃんは相変わらずだなぁ~
運送業だって営業スマイルは必須なんだぜ?
奈津恵:(はっちゃん…(笑)
早瀬:とりあえず、まず白鳥部長に謝れ!! あんなに大怪我してるんだぞ!!
夜半:やぁ、さっきはどうも(松葉杖を持って振り振りする)
山音:あ、どうも~!元気そうっスね!
早瀬:…ど、どこがだ!包帯だらけじゃないか!!
あと白鳥部長はもっと怪我人らしくして下さい!!
奈津恵:(小声)そこで演技指導したらバレバレじゃないの、奥田君。。
山音:ん、ん~うぉっほん、いやほんと、おにーさん(=夜半)。
さっきはゴメンナサイ。
夜半:どういうわけか見た目こんなだけど全然平気だから気にしなくていいよ。
山音:だよねー。
早瀬:だよねーで済ますな馬鹿者!!!(ゴスッ ←殴る音)
相手が白鳥部長だったから良かったものの、他の人だったら死んでたぞ!!
奈津恵:(小声)だから、奥田君ってば。。
山音:う~、痛ってぇ。。まあ、そういうわけなので
せめてお洋服代くらいは出させてくれないかな。
じゃないと俺、はっちゃんに殴り殺されそう。
夜半:まぁ、じゃあありがたく服くらいは買ってもらおうかな~。
とりあえず君に携帯教えておくから
今日の夜か明日くらいに一緒に買い物行こうか。
奈津恵:(小声)松葉杖つくような怪我人が今日明日にショッピングなんてしないでしょ!!
山音:えっマジ?さんきゅ~♪じゃその帰りにどっかメシでも行きやしょうよ~。
ちょーウマいスウィーツのお店があるんっスよ!そこもオゴるから是非是非!
夜半:ほ~。いいねぇ。スイーツ。
奈津恵:(小声)松葉杖つくような怪我人がスイーツとか…!
早瀬:……~~~ええい山音!! お前はもうちょっと
一人の社会人・一成人としての責任というものをだな…!!
山音:(聞いちゃいねぇ)でもおにーさん、吸血鬼で不死身なんでしょ?
かぁっこイイよね~♪
吸血鬼のダチがいるとか、はっちゃんもスッゲーよなー!
奈津恵:ちょっと(汗)…白鳥さん、貴方どこまで話したの?
夜半:ん、俺が不死身の吸血鬼ってことと、
怪我もほんの10分やそこらもあれば治るってことくらい?
奈津恵:じゃあ今やってることは全て意味が無いじゃないの!!!
(スパ―――――ン!!!)
夜半:痛い。もうやだ。奈津恵ちゃん、今日叩きすぎだよ。
俺トラックじゃ死なないけどそのハリセンには殺されそうな気がする。
山音:へぇー!そのハリセン、不死身の吸血鬼やっちゃうくらいスゴイんかー!
奈津恵:貴方も吸血鬼って言われてそのまま信じるなんてある意味すごいというか
お兄さん並に単純というか…。
早瀬:単純って…瀬上部長。。
夜半:奈津恵ちゃんは発言にさりげなくえげつない言葉入れるの得意だよね。
山音:しっかし、はっちゃんの会社おもしれーな!…あっ、そーだ!
今度俺この近辺の担当になったからさー、
事故のお詫びにしばらくここの集荷無料にするぜ!
うん、我ながらいいアイデアだ!!
奈津恵:あら、それは助かるわね。いいのかしら?
山音:ぜぇんぜんオッケーっすよ!
なんなら送料ははっちゃんの給料から引いてくれてもいいしー
早瀬:な ん で 俺 が お 前 の 責 任 取 ら な き ゃ な ら ん の だ !!
(眉ピアスを引っ張る)
山音:いいいい痛い痛い痛い痛い!ジョーダンってばーもー、はっちゃんは短気だな~
早瀬:あと今更だがそのはっちゃんって言うのやめろって言ってるだろ!
俺はお前の兄貴なんだぞ!!
山音:え~兄貴ったって1コしか変わんないじゃーん。
誕生日も2日しか違わないしさー♪
早瀬:1個であろうと1年と2日違いであろうと兄は兄だ!!
山音:あ、そうそう。はっちゃんこの会社に可愛い女の子いない?
俺彼女にフラれちゃってさー!誰か紹介してくれよ~!
早瀬:お前ここに何しに来たのか
分かってるんだろうな―――!!
(以下、兄弟喧嘩(ただし一方通行)が延々と続く。)
夜半:奈津恵ちゃん、もう包帯取っていいよね?
奈津恵:そうね。そろそろ朝礼の準備でも始めましょうか。