[NEWS]夏のわけぎ親睦旅行・4 消えた吸血鬼

○刊ねぎ秘密結社ニュース

(渡された地図を見ながら指定されたルートを歩いていく、氷雨)

 

氷雨:ふう。いわくつきの洞窟は暗いけど、目が見えるなら何てことはなかったな……。
えーと、チェックポイントは……あ、あれか。

湧木
湧木

肝試しチェックポイントはここ!
証拠の鈴をひとつずつ持っていってね!

氷雨:これ……昼間行った浜辺のお土産屋さんで売ってた鈴。
今日の記念品になるかも。(鈴を懐にしまう)
じゃ、さっさと帰り……

………?

氷雨:ここ……崖下、降りれるようになってる…。
洞窟は大したことなかったし、少し物足りないから降りてみようかな…

(細い獣道のような道をそろそろと降りていく)

氷雨:わぁ……こんなところにも洞窟があるんだ……。
月の明かりが反射して、青く輝いていてとても綺麗。
それに、なんだか涼しいし……気持ちいい。
この自然のひんやりとした空気……故郷の村を思い出すな……。

(澄んだ空気を味わいながらゆっくりと中へ進む)

氷雨:あそこで行き止まり……かな?……何か、置いてある……布?
(無造作に置かれている布?を拾い上げる)
大きな……パーカー?何か、見覚えが……あ!

氷雨:昼間に、真祖が着ていた……ラッシュガードに似てる……?
いや、この……私にとってはコートみたいになる大きなサイズ……
真祖が着ていたものに……間違いない!
どうして、こんなところに?

 ピチョン!

氷雨:冷たっ!……何?上からしずくが……(見上げる)あ!

(洞窟の天井から生えた木の根っこに、黒っぽい布が引っかかっている)

氷雨:あの布……も、もしかして……?
えーと…どうやって取るか……んー、えいっ(氷で槍状の棒を生成して引っかけて取る)
……やっぱり!……理由はわからないけど、とりあえずみんなに知らせなきゃ…!

(民宿の庭)

 

氷雨:はぁ、はぁ

湧木:あれえー!? 氷雨ちゃん、どこいってたの!
一人だけ戻ってこないからどうしちゃったんかと!

氷雨:(そういえば、結構長い時間洞窟探索してたからな…)ごっ、ごめんなさい!
それよりも管理人さん!これ…!

湧木:ん?なにそれ。

氷雨:これ、あのチェックポイントの崖下の洞窟にあったんですけど

湧木:えっ、氷雨ちゃんあそこ行ったの!?
あそこ危ないから立入禁止なのに……暗くて入口わかりにくいし、誰も行かないと思って、あえて言わなかったけども。

氷雨:私には暗いのとか関係ないですし。立入禁止とか書いてなかったですよ?

湧木:あー…立入禁止の看板、古くなって風に飛ばされて、そのままだったからなぁ…
暗い道でも見えちゃう人のことまでは考えてなかったわ。。で、それがどうしたの?

氷雨:この服、しん…………白鳥さんが着てた服なんです!
ラッシュガードと………か、海水パンツ

湧木:立入禁止の洞窟に、白鳥ぶちょーの服と海パンん??

アラウネ:あら……夜半様、服も水着も脱いで泳ぎにでも行ったんですかね?

初南賛:上着はともかく…普通、水着は脱がないんじゃないですか…?

湧木:確かに。いい年(?)したおっさんがフルチンで海水浴とかあんまり考えたくないかなー

次郎:というかあのチェックポイントのそばにそんな洞窟があったなんて気づかなかったっスね!

湧木:あそこは普通に危険だし、暗いからわかりにくいし、かと言って「行くな」と言えば逆に行きたくなるかもと思って黙ってたんスが…
肝試しで通った洞窟の真下に、もう一つ洞窟があるんスよ。

氷雨:最初に通った洞窟より、そっちの方がきれいでひんやりして気持ちよくて、いいところでしたよ。

湧木:そうなんスけどね~。はるか昔は観光とかにも使ってたらしいんだけど、立て続けに事故が起こったりもして、あとは崩落の危険があるとかで、もう何十年も立入禁止状態だそーで。

幹雄:事故…ですか。やはり、水難事故とかですか?

湧木:そうじゃないかなぁ。昔の話だしよく知らないけど。ただこのあたりでは
「あの洞窟に行ったら人魚にさらわれる」っていう言い伝えがあるらしいっスよ。

リーザ:人魚…マーメイド!なんだかファンタスティックですね。

初南賛:いやさらわれるって言ってるじゃないですか(汗

湧木:このあたりの子供たちに、危険な場所に行かせないための迷信かもしれないスけどね~。
それに、あの白鳥ぶちょーがさらわれるなんてこと、そーそーないと思うけど。

幹雄:僕も、そう思います…仮に攫おうもんなら返り討ちに3倍返しくらいは食らわせそうですし。

初南賛:じゃあ……衣服全部捨てて、どこ行ったんですかね?

(全員):・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・

湧木:……よし!決めた!寝よう!!!

氷雨:ええええっ!? 捜そうとは思わないんですか!?

湧木:何かあったのかもしれないけど、白鳥ぶちょーならなんとかなるでしょ!

初南賛:そうですよね…仮に、警察に通報しようもんなら、別の意味で色々めんどくさい騒ぎになりそうですし…。

リーザ:そうですよ!白鳥部長なら、どんな危険にさらされようと指先一つで跳ね飛ばすはずです!

幹雄:そうです。白鳥部長は不死身の吸血鬼。それこそみじん切りにでもしなければ死なない…もっとも、
みじん切りにできる人物がこの世にいるかどうかわかりませんが。

アラウネ:そうですよね~ じゃあ、皆様おやすみなさい~

氷雨:えっ、ちょ、ちょっ……
皆さん心配しなさすぎじゃないですかー!?

 

 

 

(つづく)

 

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