氷雨:真祖が死……死んで灰になっちゃったって……本当なんですか!? レイレイ様!!
レイン:私の名はイングリッド・レインウォーターだ。
誰にどう殺られたのかはわからんが…間違いなく、灰となり海に流され散らばっている。
姿はないが、海水からほんの僅かだが奴の気配がするのは、そのせいだろう。
司:でも、身体をバラバラにされようと灰になろうと、すぐ生き返るんだろ?
そんな慌てることでもねぇだろ~。
レイン:そうだな。……ただこういう場合は「すぐ」というわけにはいかぬだろうがな。
何せ肉体はおろか、灰の一粒すらも海に流されてバラバラもいいところ…
氷雨:再生には時間がかかる…ということですか…?一体どのくらい…。
レイン:奴はまだ未熟だった数百年前、人間どもに迫害され身体をバラバラにされ、燃やされて封印されたことがあると聞いた。
司:うげぇ……エグいな……
レイン:それでも当然、真祖ゆえに復活はした。だが再度活動ができるようになるまで20年を要したらしい。
氷雨・司:20年!?
レイン:その時はバラバラにされ燃やされたとはいえ、燃えた肉体は一所に集められていたというし、再生はしやすい状態ではあったと思われる。
それでも20年かかったというのだから、水に流され灰の粒もどこにあるかわからないようでは、何十年掛かるかわからんだろうな。
下手すれば貴様らが生きている間には再生は叶わぬかもしれん。
氷雨:……そ、そんな……
レイン:……まぁ、人間社会に馴染んで腐りきっていた奴が悪い。いい気味だ。
これに懲りて少しは吸血鬼の本性を思い出せば……
氷雨:レイレイ様!!!!! なんとかならないんですか!?
レイン:貴様、だから私はイングリッd……
氷雨:真祖に会えなくなっちゃうなんて嫌です!!!! お願いですレイレイ様!!!! なんとかして真祖をすぐに生き返らせる方法はないんですかっ!?
レイレイ様ぁぁ……お願いですぅ……こんなの、こんなのって……真祖とこんなお別れするの、嫌ですぅ~~……
(レインのローブにしがみついて泣き出してしまう)
レイン:こっこらっ、裾で涙を拭くではないっ……くっ……(小さくてか弱い女の子に泣かれるの苦手)
司:あ~あ、レイレイが泣ーかしたーぁ~
レイン:何故私のせいになる!? 私は事実を述べたまでだ!!
それに、復活を早める手がないわけではない!
氷雨・司:!!!!
レイン:奴の……アレクの、眷属をここに連れてこい。それで事はすべて解決する。
司:眷属って……レイレイにとってのおれみたいに、夜半っちと契約して定期的に血をくれる人間のことか?
氷雨:真祖は基本、食事用の血液は会社の社員さんたちの献血から支給される血液パックでしか摂っていないって言ってましたけど…
レイン:……以前、奴とやり合った際に共にいた……正契約は交わしてはなさそうだったが……完全に無関係というわけではないかもしれん。可能性はあるだろう。
司:えぇ~? なんだよ話が見えねえな〜。誰だよ? 頼んでこんな田舎の海まで来てくれそうなやつだといいんだけど。
(翌朝、午前5時。男性社員たちが寝泊まりする部屋)
氷雨:おっお邪魔します!!!!
湧木:うわっ、なっ何!? 氷雨ちゃん!? 男部屋に乱入とか度胸あるね!?
氷雨:(無視)えーとえーと……
(眠りが深いのか、気づかずに寝ている初南賛を見つける)
氷雨:西城寺さ――――――ん!!!!!(がばぁっ!!!と布団を剥ぐ)
初南賛:んああっ!? にゃ、にゃにをすr……
氷雨:大至急!!!!!! 連絡を取っていただきたい方がいるんです!!!! お願いしますっ!!!!
初南賛:え…なんで僕が!? (時計を見る)しかもこんな時間に。。。
氷雨:その方に電話さえかけてくれれば私が事情を説明して説得します!!!
とにかく!! 真祖が大変なんです!!! お願いしますっ!!
初南賛:……(勢いに圧されてもう何も言えず、無言でスマホを取り出す)
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(数時間後…)
初南賛:うう……起きてはいたけど、めちゃくちゃ不機嫌だった……怖かった……
朝霧さん、僕のスマホで必死になんか訴えてたけど、ホントに来るの…?
クリス:ファァァァ~…眠いデス。早朝から大騒ぎしてましたケド、何があったデスか?
氷雨:しん……白鳥部長の名誉のために細かいことは省きますけど、
昨日から行方不明の部長を呼び戻すには、どうしてもあのお方のご協力が必要なんです!
湧木:ふ、ふーん……まあ、ひとりふたり増えたところで部屋は余ってるし……。
僕らがやることは特別ないみたいだから、海に行きたい人は行って、宿でのんびりしたい人はそのままのんびりして、好きに過ごしていいッスからね~。
けど、こんなド田舎の過疎町までわざわざ足を運んでくれるんスかね~。
クリス:あっ、なにかコチラにタクシーが来たデスよ。
(出迎えた全員):瀬上部長!? ってか
なんかめっちゃ気合い入れてきてる――――― !?
奈津恵:どうも、皆さん。
あの寝ぼすけを呼び戻しに来てあげましたよ。