(無防備に目を閉じて立ちすくむ奈津恵の前に、白く輝く光の塊が現れる)
氷雨:瀬上部長っ……真祖が現れたらすぐ逃げてくださいっ…!
レイン:馬鹿め、こんな暗く狭い洞窟で、人間ごときの足で飢餓状態の吸血鬼の足から逃げ切れると思うな。素直にアレクの復活のための生贄となるがいい。
……まあ、物分かりの良い女だったようだな。逃げる様子は全くないが。
(光の塊が徐々にハッキリとした形を成していく)
奈津恵:(来るわね……)
(目も眩む光を放った後、姿を現す白鳥夜半。その身なりはもちろん……)
夜半:…………
氷雨:キャ――――――!!! 全裸じゃないですか真祖ぉ!!!!
司:そりゃ、まーそうなるわな……
奈津恵:(特に動じない)
レイン:さあ行けアレク、その女の血を吸いつくせ!
夜半:…………(無心に奈津恵の肩を掴み、首筋に勢いよく牙を突き立てる)
奈津恵:………ッ!!(しばらくは、血を飲ませておかないと……)
…ごく…ごく……ごくっ…
司:だ、大丈夫なのか瀬上部長……スゲー勢いで血飲まれてるっぽいけど
氷雨:なんで……瀬上部長ならハリセンもあるし、ある程度の抵抗はできそうなのに…
…ごくっ……ごく……ごくっ…
奈津恵:(「この獲物は無抵抗でいくらでも血を飲むことができる」と思わせ……ないと……
……くっ、少し頭がくらくらして……き……)
夜半:……はぁっ……(息継ぎもせず血を飲んでいたため、一瞬牙を抜いて息を吐く)
奈津恵:………今よっ、大空!!!!!
(奈津恵の足元に置いてあったトランクが、ガシャンガシャンガシャン!と音を立てて手足頭を生やす)
大空:よっしゃ待ってた!行くぜぇぇぇぇぇええ!!!!!
超特大輸血注射4リットル!!!!!!!
(満腹になりかけて動きの鈍った夜半の逃げる間もなく、超特大輸血注射の太っとい針が背中に突き刺さる)
夜半:ぐはっ……!!!!
大空:ほぉぉぉら白鳥ぶちょ~~~社員の皆さんのため込んでくれた献血だよォォォォ!!!!
(超特大輸血注射をごりごり注入)
夜半:………………………………痛い。
痛い痛い痛いってば、もう、もういいから青木くん、やめて
氷雨:……いつもの、真祖の声!古屋さん今です!
真祖に水着穿かせてくださーいっ!
司:えっまずそれなの!? てかおれただの私物は触れな……
氷雨:あとで会社に水着代を経費で落としてもらうのでそれは会社のものです!!!
司:おっけー☆
大空:結構ゆるゆるだな条件が!!
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(氷雨の持ってきていた海パンとラッシュガードを羽織り、海に来た当初の姿に戻った夜半)
夜半:……本当にごめんなさい(深々と土下座)
大空:最強の吸血鬼の土下座とかなかなか見られるもんじゃねーな!
氷雨:うっうっ……真祖ぉぉ……本当に良かったです……もう二度と会えないかとぉぉ……
司:お礼はレイレイに……と、その前に、瀬上部長ヤバイんじゃ…顔真っ青にして倒れたままだけど
夜半:うん。仕方ないね。
司:仕方ないっておいおいおい
夜半:こうなったら、仕方ないね……
(自らの指先を牙で噛み切り、流れ出る血を奈津恵の口に含ませる)
レイン:…………フッ
司:なに笑ってんだよレイレイ?
レイン:忘れたか、司。人間に吸血鬼の血を飲ませるということは
司:あ……契約か!
レイン:そう、契約すれば身体能力も、生命力も飛躍的に強化される。
契約によってあの女は、出血多量程度では死ねない身体になるであろうよ。
奈津恵:………ううん………(徐々に顔色に赤みが差してくる)
夜半:奈津恵ちゃん。
奈津恵:……正気に……戻ったみたいね。
夜半:うん。おかげさまで。
…ごめん、結局「また」、契約させる羽目になっちゃった。
奈津恵:まあ…仕方ないでしょ。緊急事態だったんだから。
レイン:さて、アレクよ……
夜半:レイン……ありがとう。今回ばかりは助かった。
レイン:れ、礼なんて……べ、別に貴様のためにやったわけではないからな!
氷雨・司:(なんてわかりやすいツンデレ定型文)
レイン:そんなことよりも……教えろ。貴様ほどの手練が、一体どんな奴に殺られたのだ?
夜半:…………
司:黙っちゃった。
氷雨:何か、よほど恐ろしい目に遭ったのでしょうか……
………はっ!もしかして………!!
このあたりでは「あの洞窟に行ったら人魚にさらわれる」っていう言い伝えがあるらしいっスよ。
大空:そういえば湧木さんそんなこと言ってたね。
レイン:人魚……だと……長年生きてはいるが、遭遇したことがないぞ……。
そんな得体の知れないモノに、吸血鬼の真祖がやられたというのか…!!!
氷雨:得体が知れないからこそ、真祖……白鳥さんも対処しきれずやられてしまったのかも……
レイン:……そうか、わかったぞ。貴様ら、さっさとこの洞窟から出ていくのだ。
アレクも、奈津恵も。放心状態のようだが、もう立ち上がれる程度には回復しているだろう。
氷雨と、その箱みたいなロボット(大空)が協力して肩を貸してやれ。
氷雨:え、レイン様は…?
レイン:私はここに残る。また人魚の奴めが襲ってくるかもしれぬしな。
司:おお!? レイレイが夜半っちのカタキを討ってくれんのか!カッコイイことすんじゃ~ん!
レイン:勘違いするな。……このアレクを灰に変えるほどの強敵……私が討てば、
私の方がアレクより強いということに!!!! なる!!!!!!!!!
司:なんだよそーいうことかよ~つまんねーなー
レイン:なんだと?(睨む)
司:(≧▽≦)しっつれいしやしたーっ!
あとはレイレイが片づけてくれるみたいだからみんな宿に戻ろうぜーっ!