(昼休み、食堂)
初南賛:真北さん。
杏寿:あ……西城寺くん、こんにちは。
初南賛:こんにちは。
杏寿:えっと、なんでしょう?
初南賛:この間、来月お友達と京都旅行行くって言ってたじゃないですか。それで、お勧めの観光スポットがあったら教えて欲しい、と…。
色々調べてみたのでこれ、見てみてください。(なにやら観光情報をまとめたメモを差し出す)
杏寿:あ、そ、そんな!ご存じでしたら教えて欲しい、という軽い気持ちで言っただけなのに、わざわざ調べてくださるなんて…。
お手数おかけしてすみません。
初南賛:いえ別に。暇でしたし…。僕も地元を離れて久しいので、地元に住んでいる友達に連絡とって、いま旬の観光地とか、お店とかの情報を軽くまとめてあります。
杏寿:ありがとうございます…!地元の方の情報って貴重ですよね。旅行に行ったら、西城寺くんにお土産買ってきますね。
初南賛:そんな、別にいいですよ。僕にとっては長年住んでいたところですし、特別珍しくもないし…。
杏寿:そうですけどね(苦笑)でも、私の気持ちですので、受け取ってください。
初南賛:そ…そうですか…?なんだか気を遣わせて申し訳ないです。ありがとうございます。でも、無理に買わなくてもいいですからね。
杏寿:ふふ、わかりました。あ、すみません。お昼待たせてしまっているので、この辺で。これ(観光情報)ありがとうございました!
初南賛:いえ、こちらこそ呼び止めてしまってすいません。では。
(杏寿が去ったあと)
初南賛:さて…お昼にするかな……
(ドスッ ←進行方向に立ちはだかっていた誰かにぶつかる)
初南賛:あ、すいません……うわっ!?
リーザ:西城寺君………相変わらず杏寿さんと仲が良いですね………
(まだ社員寮旅行の出来事を引きずっている)
初南賛:仲良い、って別に普通ですけど………ってか、なんでそんな泣いてるんですか!?
リーザ:あ……あぁ……これですか……そうですね……うれし涙、かなあ………
初南賛:うれし涙!? ちょ、ちょっと意味がわからないんですが!?
リーザ:杏寿さんの……君と話しているときの、杏寿さんのあの幸せそうな笑顔……
杏寿さんがあんなに幸せそうに微笑んでいるのを、僕は見たことがなかったです……
初南賛:べ、別に普通の他愛ない笑顔でしたよね!?
リーザ:何やら、旅行の計画も立てているようですし……本当に、幸せそうで……
き、君なら、必ず杏寿さんを幸せにしてくれると、思って…
初南賛:旅行は僕とじゃなくて真北さんのお友達と、ですけど!? そこのところわかってます!?
リーザ:そう、これは悲しいこと、悔しいことじゃない……むしろ、
愛する人が幸せになるのだから、嬉しいことのはず……だから、これはうれし涙……
初南賛:ちょっと、色々大丈夫ですかレオンハルトさん!??
(……ほんと、この会社ってめんどくさいオッサンしかいないな!?)
▼めんどくさいオッサン例
←NEW!!
――――リーザ様は見た目は若いが35歳なので初南賛から見れば十分にオッサンである――――
初南賛:とにかく!僕と真北さんがそういう仲になるとかありえない!!!ので!!!
そんなに好きなら積極的にアプローチするなりなんなりすればいいじゃないですか!
僕みたいな子ども相手にそんな下出にでて恥ずかしくないんですか!
真北さんにはっきりと拒絶されたわけでもないんでしょう!?
大人ならもっと堂々と自信を持って………
リーザ:……………
自信なんて……あるわけないじゃないですか……
初南賛:えぇ…!? そんなハイスペックなスタイルを持っていて自信ないんですか…?
リーザ:それはそうなんですけど
初南賛:(全肯定した…)
リーザ:見た目がどんなに良くっても、それは閣下が生まれ持ったもの。
僕は閣下の、後付けされた人格でしかないんです。人生経験皆無の、赤ん坊なんです。
初南賛:レオンハルトさん……
(そういえば、人事部にある記録に…元々の人格が閣下の方で、レオンハルトさんは後から作られた人格だって書いてあったな…)
リーザ:だから、こんな感情は……初めてなんですよ、大切な人を奪われるというつらい気持ちは……
初南賛:いや奪うとか、ないから!!!!
リーザ:つらいから……だから……杏寿さんの幸せを願うならこれはつらいことじゃなくて幸せなことなんだと思い込もうと……
初南賛:な~~~ん~~~で~~~そう、なるの!!!! もうっ、ややこしい!ややこしくなるけど……
閣下!閣下を出してください!!! 責任者!!!!(リーザの両肩を掴んで揺らす)
リーザ:うわ、うわああああ、やめてください~~~~僕のことで閣下にご迷惑を……
…………
(がくっ ←突然膝から崩れ落ちる)
初南賛:うわっ!?
閣下:情けない……情けなすぎる……ッ!!! 吾輩の別人格ながら……これほどまでにヘタレとは……ッ!!!!
初南賛:あっ閣下……。
閣下:今まで喜怒哀楽の「喜」と「楽」しかほぼなかったあやつの、情操教育になると思い放っておいたが…玩具を奪われて泣く赤子そのものではないか……
………おい、そこのくるくる頭!
初南賛:くるくる頭!? 僕のこと!?
閣下:貴様と、あの地味女は恋仲でもなんでもないのだな?
初南賛:地味女って真北さんのことですかね……話の流れからして……
ええ、だから言ってるじゃないですか。ただの友達……友達とも言えない、ただの同じ寮に住む社員同士ですよ。
それをレオンハルトさんが勝手に妄想を暴走させて勝手に泣いてるだけですよ。どうにかしてください。
閣下:……………
初南賛:(あ、しまった……さすがに閣下相手にキツく言い過ぎちゃったかな……)
閣下:本当に…我が別人格が、迷惑をかけた。…………すまない。
初南賛:!!
閣下:……くっ……全く、これは早急に対策せねば……(ブツブツと愚痴りながら去る)
初南賛:……閣下に、謝られた。。ある意味かなり貴重な体験をしちゃったな……