最期の恋

小説/本文

[小説]最期の恋(終)

雲一つなく、厳しい太陽の光が照らす、夏空の下。 会社の屋上公園のフェンスの前に、汗一つかかず涼しげにたたずんでいるのは… 「白鳥部長、ここにいらっしゃったんですね。……あつく、ないんですか?」 社員食堂が、珍客……赤ん坊の雪彦を前に賑わって...
小説/本文

[小説]最期の恋(5)

”グォアアアアアア…!! ” 転ばされた『雪男』は、視線を夜半に向け、怒りを露わにした。 まずはお前から食ってやると言わんばかりに、抱きかかえていた恵莉を手元から落とした。 「ぅお…っ!」 すかさず浪路が駆け寄り、抱えて木陰へと運び出す。 ...
小説/本文

[小説]最期の恋(4)

「おはよう」 三日間、突然の欠勤をしていた夜半が国際部に顔を出した。 「あら部長♪三日も休んでどうしたんです?お布団から出れなくなったんですか?」 休んでいた事を特に気にもせずに椎子が問う。 「いやちょっと出かけててね。これお土産」 そう言...
小説/本文

[小説]最期の恋(3)

それから、雪彦は丸一日、夜半の家で眠ったあと、 だいぶ回復して自力で自宅へ戻っていった。 雪彦が回復して、普通に話せるようになったところで 夜半は、彼が見つけたという「死なずに済む方法」とやらを訊いてみたのだが 途端に顔が真っ青になって、絶...
小説/本文

[小説]最期の恋(2)

それから3ヶ月の時が過ぎた。 雪彦と恵莉が付き合っている、という噂は瞬く間に広まり、 気が付くと二人は既に公認のカップルになっていた。 部署も違い、普段いるフロアも全く違う二人は、 昼休みは屋上公園で一緒にお弁当を食べ、 帰りはお互い残業が...
小説/本文

[小説]最期の恋(1)

それから一ヶ月後。 「……突然、呼び出したりしてしまって、すいません」 「突然でもないだろう。1週間くらい前から約束してたんだから」 午後7時。 日は沈んだものの、西の空には赤紫色した夕焼けが、薄気味悪く残っていた。 東の空には、そんな不気...
小説/本文

[小説]最期の恋(プロローグ)

「すいません……突然、呼び出したりして…」 3月28日、快晴の昼下がり。 会社の近くの公園の、満開の桜並木の下に。 見なれない組み合わせの男女が一組、たたずんでいた。 烏丸雪彦と……長谷川恵莉。 「いいえ…そんなに、きにしないでください。」...
小説/タイトル一覧

[小説]最期の恋

バレンタインデーに、烏丸雪彦に告白した長谷川恵莉。 ホワイトデーに返事はもらえたものの、その答えは残念なものであった。 しかし雪彦には、ある理由があって恵莉の思いを受け止めることができないでいた。 そんな雪彦はホワイトデーから一ヶ月ほど経っ...