(そのころ社員寮「わけぎ」では…)
在素:はぁ~~~~~…小学1年生相手じゃまともなフォーラムもできやしない…
私の提案した自由研究のテーマ、誰も理解してくれないし…疲れたわ。
(愚痴りながら自宅[社員寮401号室]のドアを開ける)
パノス:あっ、おっかえり~在素。おじゃましてまーす!
名門私立校は夏休みも登校日多くて大変そーだな!
在素:!?!?!?!
パノス:あははははは、その顔ウケるな!
在素:そ、そっ、そんな、あのね!そりゃありえない奴が鍵かけたはずの自宅に居座ってたら変な顔もしたくなるわよ!!!
パノス:ありえないとか失礼だなー、同じ社員寮の小学生同士じゃーん!
在素:というか、貴方最近見かけてなかったけど、留守してたんじゃなかったの!?
パノス:昨日まで林間学校だったんだけどさー、ちょうど父ちゃんの行く社員寮旅行と日程かぶっちゃってさ、オレ行けなかったわけ。
で、父ちゃんたちのが後から帰ってくるから、それまで在素と一緒に留守番しとけーって。湧木のにーちゃんに鍵もらった。
在素:あんのすっとぼけ管理人めぇ……!!! ってか、なんっで私が貴方と二人で留守番しなきゃいけないの!!?
パノス:えー、だって子どもひとりで留守番とか危ないじゃん。ひとりより二人のがまだマシじゃん?
在素:私は常に一人暮らしだからその発想はなかったわ!
パノス:まーまーまー、ケチケチすんなって!お前んち広いしオレいても別に邪魔じゃないだろ?
在素:邪魔よ!!!!!! 人んちで食っちゃ寝してないで、帰って大人しく夏休みの宿題でもしてなさいよ!
パノス:夏休みの宿題なんて初日で終わっちゃったしなー。
在素:ぐっ……じゃあ、1学期の復習でもしてなさ……
パノス:1学期の成績オール5だったし、べんきょーなんて授業聞いてりゃ別にいちいちやり直す必要なくね?
在素:(ぐぅっ……こいつ、あっぱらぱーに見せかけて実は超成績優秀児なんだった…)
じゃあ、ご家族がいない間にお家の掃除とか……
パノス:午前中に全部屋風呂トイレ玄関全部掃除しちゃったよ~。
あ、ついでにここン家も掃除しといたぜ。プライバシーに関わるとこは避けといたけどな~
在素:ぐむううっっ……
パノス:あ、メシはオレが作ってやるよ~。今夜はビーフストロガノフとラタトゥイユと、オニオングラタンスープな!
食材は父ちゃんが置いて行ったカード(チャージ式)で払ったからな!
在素:うぐぐぐぐぐぐ…………
パノス:他に質問は?
在素:………………ないわよ………………
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(そして夜。なんだかんだでこの状況に慣れてしまった在素)
在素:(夕食をつつきながら)ねぇ、貴方そこまで優秀ならなんで名門私立校とか行って、もっと勉学に励まないわけ?
パノス:お前なー、簡単に言うけどウチはそんな金ねーの!ってか勉強するなら別に公立だっていいじゃん。
在素:ま、まあ…公立校の教育を否定するわけじゃないけど… …なんだか勿体ないわね…。
パノス:ん?なんか言ったか?
在素:いえ、こちらの話。それにしても、貴方大概のことはできるのね。一人暮らししてるわけでもないのに、どこで身に着けたの?
パノス:ん-、ちっちゃい頃から、母ちゃんは働きづめだったし、生きていくために自然に覚えた感じかなぁ。
それに、父ちゃんに立派な息子だって認めてもらいたかったから、家事も運動も勉強もがんばったぜ!
在素:(そうか……お父さんから聞いたことあるけど、こいつも生まれた時には父親はいなかったんだった……
私も、父に認めさせる…というよりは、父を負かしたい一心で努力してきたけど、近いものがあるわね……)
パノス:……ま、でもそんなことも今となっちゃどーーーーでも良くなっちゃったけどな!
在素:!?
パノス:立派な息子とか、なんかそんなの置いといて、父ちゃんと一緒に暮らせてるならもうそれでいっかな~って。
あははははは、我ながらファザコンだな!
在素:……ふふっ
パノス:!
在素:そうよね。そうなのよね。私が超優良児だろうと大馬鹿娘だろうと、お父さんならなんでも受け入れてくれる気がする…
だから、思うままに自由に生きていける気がするのよね。
パノス:はー、お前ほんと、時々小学生らしくねー発言するよな~
在素:悪かったわね。私はそこらの小学生と違うんだから。
パノス:なんだっけ、めちゃくちゃ頭良くてIQ高くて大学とかも卒業してんだっけ?うっすら聞いたけど。
単純に、すっげー!って思うけど、考えてることの根っこはオレと変わんねー気がするわ。
在素:パ、パノス……さん……
パノス:よし、オレの方が3つ年上だけど、お前は特別にパノスって呼んでいーぞ!
在素:!? な、何を偉そうに……
パノス:あとな、やっとオレに笑ってくれたな?
笑った方が1億万倍かわいいからずっと笑ってろ!
在素:はぁ―――――― !!??(真っ赤)
パノス:さーて食い終わったから片づけるか~!在素お前も手伝えよな!!
在素:!! …あっ、あったり前でしょ!ご馳走されるだけされて、片付けも押し付けるほど傲慢な女じゃないんだから!
(注)もう一人の社員寮キッズ・湧木久美子はパノスと同じ学校で同じ林間学校に参加しましたが、帰宅後はおばあちゃん家に行ったので不在でした。